表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/81

5.

ブクマ、評価、ありがとうございます。とっても嬉しいです(*^^*)

「アンナ、今聞いた通りよ。ヒロインは王太子を攻略対象に選んだみたい」

 お父様が出ていったあと、傍に控えていたアンナへ声をかける。

「その侯爵家のご令嬢がマリア様なんですね」

「どうやらそのようね。でも、私、先日のお茶会で殿下のお姿はおろか、声すらも聞いていないの。どう思う?」

「どう思う?と聞かれましても。おめでとうございます、としか言い様がありません」

 本当に、ゲームのスチルだけでしか姿形を知らない殿下と婚約を結ばれ、私としては不満だらけだった。だけど、婚約者として選ばれたとあっては、お妃教育は意地でも完璧にやらないと気がすまない。

 エヴァも、刺繍以外の淑女教育では人並みならぬ努力をしていた。

 こういうところはエヴァと私の共通点とも言える。

 悪役令嬢って嫌な役だわ。

「ヒロインは以前より殿下との交流があったのかもしれないし、本当にお互いが想い合っているのなら私は邪魔者でしかないわ」

 ため息をつきながら話す。

「お嬢様、だとしても世の中は政略結婚など当たり前です。ましてや王族ともなると、個人の感情は二の次になることは仕方ありません」

 それはそうだけど……。断罪される可能性が限りなく高い未来において、平気でいられるかと問われれば答えは否である。王太子ルートでの断罪は、私のデビュタントの場で起こる。私がそれまでに殿下と仲良くしなければ、ヒロインと殿下の仲睦まじい様子を見ることもないし、悪役になることもないだろうし。だから殿下との面会を控えたいと申し出た。

「立場上、マリア様が私に直接攻撃を仕掛けてくるなんてことは……」

「ないとも限りませんよ。何せお嬢様にお茶をかけた張本人ですからね」

食い気味にアンナが答える。そうだった。あの令嬢、侯爵令嬢なのに伯爵令嬢である私よりマナーがなってなかったし、直接仕返しをするような子だったわね。

「そうね、十分気をつけるわ」

 今後、決して私が1人にならないように話し合いをした。ヒロインからの直接攻撃を避けるために。




「アンナ、最近の刺繍のモチーフは何が流行っているの?」

「そうですね、薔薇の花は年代時代問わずに人気がありますが、百合の花も人気ですよ。男性には家紋などを刺繍すると喜ばれます」

 私の刺繍の腕前がいきなり上がってもおかしいので、まずは簡単なモチーフを刺繍していた。次の刺繍のモチーフを何にしようかと考えつつ、手元を見ながら会話する。

「アンナは誰かに家紋を刺繍したことがあるの?」

「……!?ありません」

 アンナをチラリと見やると、ほんのり頬を染めていた。

 まあ、アンナが私より8歳年上で結婚適齢期であることを考えたなら、恋人の一人や二人いてもおかしくはないけど。それに、アンナは結構モテる。この事は本人には内緒なんだけどね。

 


「……コホン、そう言えば、先日お嬢様がお願いされていた品が届いていますが……」

 刺繍道具とともに頼んでいた品物がようやく届いた。



 レイ伯爵領はガラスが特産品で、とてもカラフルなガラスができる。そのガラスでビーズを作ってもらっていたのだ。そのビーズはキラキラと輝いており、形も綺麗に米粒ほどの四角い大きさに揃えられていた。

 大量のガラスビーズを作るのに工房の職人さんにはかなり無理をしてもらった。

 

 厚紙にイラストを描き、そこに糊をつけ、ビーズを並べていく。微妙に色を変えながら。先の細いピンセットはガラスビーズを掴むのに最適で作業を楽にしてくれる。

 少しずつ姿を現すそれは、かなり根気のいる作業だが、完成したときの達成感がなんとも言えない。



 アンナはとても不思議そうに見ていたが、完成したアートを見て嘆息していた。

 天使をガラスビーズで作ってみたのだ。キラキラと煌めくそれは光の加減で微妙な色合いとなり、とてもガラスビーズには見えないほどの出来栄えだった。


 出来上がったものを額に入れる。近くで見るとモザイクのように見えるが、少し離れてみるとちゃんと絵になる。これがこの絵の特徴でもある。





 刺繍とガラスビーズでできた天使の絵と、他にもう一つ、薔薇の花をガラスビーズで作成し、アンナとともに教会のバザーへと向かう。


「エヴァ・ドゥ・レイ様ですね、お待ちしておりました」

 教会につくと司祭様が出迎えてくれた。20代前半と思われる、若い司祭様だ。

「すみません、父が腰を痛めまして……。今日は私が代理です」

 少し長めの黄金色の髪を一つに纏め、金色の瞳で優しく微笑む姿は、一幅の絵画のようでうっとりとなってしまった。

「こちらこそ、初めてのバザーで分からないことばかりです。よろしくお願いします」

 スカートの裾をつまみ軽く腰を落とす。

「じゃあ、こちらにどうぞ」

 司祭様にバザーの一角へと案内された。

 どうやらここで商品を売るようだ。

この御話に出てくるガラスのアートですが、一般的にダイヤモンドアートと呼ばれています。実物はガラスビーズではなく樹脂でできたビーズです。私がハマった手芸の一つです。検索するとすぐ見つかりますので、ご興味のあられる方はぜひご覧ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ