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49.

 昨夜……。

「ミゲル、気づいたか?」

 夜中に、隣の部屋から誰かが出ていく音。既にウィリーの豪快な鼾が聞こえていた。

「はい。ランシュア殿かと……」

「行けるか?」

「御意」

 ミゲルはそう言うと、窓を開け、暗闇に姿を消した。



 しばらくしてミゲルが帰って来ると、詳細を語ってくれた。

「ランシュア殿が会っていたのは、アガザエルト国の貴族の誰かかと……。物凄く親密そうでした。手を繋いだり、抱き締めあったりして、まるで久しぶりに恋人に会ったかのようでしたよ。何かを手渡し、『目に入れる』と話していたので、多分クリス様の使われているものと同じガラスかと……」

 ランシュアがこの国に入国したがった理由……。

 エヴァが作らせたカラコンを王弟の偽者に渡す。

 その色は……十中八九紫色。

 ルディスタンの王弟が生きていた、として攻め込ませる。アガザエルト国王の預かり知らぬところでことを運んでいるのだろう。

 王弟として正統な王位継承権を主張し、玉座につくか、それなりの見返りをもらって、その貴族とともに暮らすことでも考えているのだろう。

 あの時のランシュアの不敵な笑み……。そういうことだったんだな。

 教会での前で、エヴァがミゲルにこのコンタクトのことを話していた時、やけにこちらを気にする男がいたと思ったんだが……。行動が早いな。のんびりしている暇はなさそうだ。

 となると、この姿でいても、私が王太子だとバレているだろう。

「ミゲル、明朝作戦開始だ。後は頼んだぞ」

「仰せの通りに……」






 宿を出た私は、ミゲルと話し合った結果下した決断を告げた。

「ウィリー、ランシュア、済まないがここから別行動してくれないか?昨日聞いた話が本当なら我々がここにいてはまずい。私たちは一旦国へ帰ろうと思う。正規のルートを通っていては間に合わないから渓谷を通る。お前たちはしばらく行商のフリをして滞在し、頃合いを見計らって脱出してくれないか?」

 ウィリーとランシュアと別れ、昨日来た道を引き返す。

 そして……。



 私は、カラコンをブルーに入れ換えて、ランシュアたちの後を追った。

 アガザエルト王城が見えてきた貴族街のところで、ランシュアは懐から何かを取り出し、ウィリーの前に翳した。

 ほどなくして、ウィリーは全身の力が抜けたように地面に倒れ、夕べと同じような豪快な鼾をかきはじめた。

 そのウィリーを荷台に乗せその荷台を道の端に寄せた。

 こうしてみれば、旅の行商人が疲れてただ眠ってしまっただけのように見えて、回りからは怪しまれない。

 夕べもこれでウィリーを眠らせておいて、行動したのだろう。眠っているだけなら、時間がたてば眠りから目を覚ますはず。

 ウィリーをそのままにランシュアを追うと、やはりというかどこかの貴族の屋敷に着いた。

 堅牢な門構えが、上級貴族だと窺わせ、来るものを拒むような威圧感すら醸し出している。

 その屋敷の玄関先で何かを示し、ランシュアは中へと通された。

 ここから先は、侵入は難しそうだ。



 暫く待っていると、ランシュアが出てきた。その屋敷の主と思わしき男性と仲睦まじい様子だ。

 やはり、ランシュアはこの国の貴族と繋がりを持っている。

 私たちを欺いてまでこの国のために動くとなると、よほど弱みを握られているのか……?しかし、あの様子からすると……。

 ランシュアの後を追おうとしたところで、後ろから声をかけられた。

「何をしてるのかな?こんなところで……」

 !?見つかったか

 逃げる間もなく、例の薬を使われたようだ。

 膝から力が抜け、意識が朦朧としてきた。

「一応不審者ってことで……」

 力を振り絞り睨み付けると、優男がこちらを見てニヤッと嗤った。





「この男かい?貴族街の周辺にいた不審者と言うのは……」

 女性の声がする……。

 どこだ、ここ……。薄暗く、ひんやりと湿った空気が肌に纏わりつく。

 ご丁寧に手を後ろで縛られ、逃げられないように椅子にくくりつけられている。

「おや、お目覚めかい?ボウヤ」

 目の前には、真っ赤な口紅をつけ真っ赤なドレスを着た妖艶な女性が、舐め回すような視線をこちらに向けていた。側には先程の男もいた。

「ここは……?」

「ここは王城の地下牢だよ。ボウヤはどこの者だい?」

 手に持っていた扇で顎をクイッと上げられる。

「くっ……」

「おや?よく見るとボウヤ、綺麗な顔立ちしてるねぇ。私の好みだよ。どう?私の下僕になるならその拘束、解いてやってもいいんだよ?」

 そうか、カラコンを入れてるから、私がルディスタンの王太子だとは分からないんだな。

 しかし、キツイ香水の匂いがする女の言う通りにはなりたくないしな。女の言葉を無視していると、扇で頬をペチペチと叩かれた。

「何を黙ってるんだい?私はこのアガザエルト国の第一王妃、ミランダだよ。私の言うことを聞いていれば陛下には殺さないでくれって口利きもできるんだよ。馬鹿なボウヤだね。さっさと私の下僕におなりなさいな」

 第一王妃か……。確か、アガザエルト国王には第三まで王妃がいたな。この中で一番権力を持っているのがこの第一王妃……。

 そうか。それなら……。

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