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47.

「今、何と?」

 翌朝、セラスティーアの発言に、私とミゲルは顔を見合わせた。

「ですから、視察に私も一緒に行きたいのですわ」

 キラキラした瞳で、見つめられても……。今回の視察は危険が伴う。遊び半分で行かれても困る。

「申し訳ないが、今回の視察は重要な任務を兼ねており、女、子どもがついていっていいものではない。遠慮してくれないか?」

 少し言い方がキツくなるが仕方ない。

「殿下、この先の道案内でもいいので、お願いできませんか?」

 ユリウス伯爵に頭を下げられるが、ダメなものはダメなんだ。

「伯爵、済まないがそれはできない。案内役ならランシュア殿にお願いしたい」

 チラッとミゲルを見るとげっそりしていたが、セラスティーアがついて行くよりマシである。が、それを聞いたランシュアはパッと顔を輝かせていた。

「じゃあ、お兄様と一緒に行く。それならいいでしょう?」

 ダメだこの娘、なんにも分かってない。

「今回の視察が無事終了したあとに、殿下がその子と会う時間を作ってやればいいんじゃないか?」

 と、横から口を出してきたのはアレクシスだった。

 チッ余計なこと言うなよ。

 案の定、セラスティーアは期待に満ちた眼差しを向けてきた。

 はあ。仕方ない。

「それでいいか?」

 鷹揚に言うとセラスティーアは頷いてくれた。




「それじゃあ、出発する」

 騎士団員の服を身につけ、見た目で王族と分からないように変装する。もちろん、エヴァがガラス工房で作らせたグリーンのカラコンと、茶色の鬘も着用する。

「やっぱり別人にしか見えませんね。クリス様」

「一触即発の危機だしな。それに人質になる時はこの格好の方が都合がいい」

 ミゲルやアレクシスはこの姿を見るのは二度目だが、ウィリーや他の団員は、初めて見るこの変装に目を白黒させていた。

「それと、今から殿下のことはクリスと呼ぶように。間違っても殿下や王子と呼ぶな」

 ミゲルの指示に皆が頷く。

 それを見てランシュアに先を促し、馬頭を目的地へ向け歩を進めた。

 ここから約三時間の道のりだ。

 先頭を行くランシュアを観察する。上背はアレクシスと同等かやや高いくらい。

 全体に細身ではあるが、それなりに筋肉がついており引き締まっている。結構な美丈夫だ。

 戦闘となれば、どうなるかは分からないが。



「この川を越えたらもうすぐ国境です」

 ランシュアが指を指す方向を見ると、川に掛かる橋が見えてきた。

 橋を渡りしばらく行くとそこに兵舎が見えてきた。

 兵舎にいた者から話を聞くと、アガザエルト国の兵士が急に増え始めたとのことだった。

 アガザエルトが、なんの目的で国境付近に増兵しているのか探らなければならない。

「何を考えているのかね、向こうの大将は」

 ウィリーの言葉に

「アガザエルト国王は好戦的だと聞いたことがある。今回も、ルディスタン国を支配しようと企んでいるのかもしれないな」

 アレクシスが返す。

 何にせよ、向こうに入らない限り情報は得られない。

 私とミゲル、ウィリーが入国し、街で情報収集を行うことにした。

「クリス様、私も連れていっては頂けませんか?」

 そこに手を挙げたのは、ランシュアだった。

「この先は危険を伴う。もしもの時は庇いきれない」

 私が制すると、ランシュアは不敵に笑った。

「私なら大丈夫です」

 どこからその自信が来るのか分からないが、自分の身は自分で守ることを条件に同行を許可した。

 何か兄妹揃って、事の重大さを分かってない気がするのだが……。

 ランシュアに関してはもういい大人だ。自分の発言には責任を持ってもらおう。

 私たちは、旅の行商人のフリをして入国することにした。

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