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36.

「エヴァ様、殿下からデートのお誘いがきております」

 スーザンが言うと

「お嬢様、アレクシス様からデートのお誘いがきております」

 メリーが言う。

「お嬢様、アルフレッド様からデートのお誘いがきております」

 と発言するのはアンナ。

 一体私はどうすればいいの?

「いっそのこと、三人まとめてお付き合いなさったらいかがですか?最終的に殿下を選んでいただければよろしいかと」

「私はアレクシス様が……」

「アルフレッド様なら……」

 延々と続くループ。婚約破棄したとたんモテ期到来。誘拐事件から一年が過ぎ、ほぼ毎日のように先ほどの会話が繰り返される。私としては中傷されずに済んでいるからありがたいといえばありがたいのだけど。

「エヴァ様、殿下がおいでになりました」

 そこに殿下の到着が知らされた。

「エヴァ、会いたかったよ」

 そう言って、私の手をとり指先に口付ける。

「ガマダセル公爵家のご兄弟がお見えです」

 そこにアルフレッドとアレクシス様が現れた。

「殿下、抜け駆けは禁止だ」

「別に抜け駆けなどではありません。エヴァは私の妃になる予定ですので」

「婚約破棄しといてよく言うよ。エヴァ、今日は俺とデートしよう?」

 殿下に握られていた手を奪い取り、指先にキスをするのはアレクシス様。

 反対の手を取り、手を口元に寄せるのはアルフレッド。

「僕がいることも忘れないで?」

 このやり取りもほぼ毎日行われている。

 今日は、街で祭りがあるのだ。日々の平穏無事を神様に感謝し、その一年の健康と平和を祈願する祭りで、日本のお正月みたいに教会に参拝に行く。神社じゃなくて教会だから、もしかしたらクリスマスにイメージは近いかもしれない。

 その祭りに行こうと誘われているわけで……。

「申し訳ありません。私は未婚で、特定の男性と二人で行動をともにすることは避けたいと考えておりまして……」

 三人のうち、誰かを選べと言われたら真っ先に殿下を選ぶ。ただ、私たちは婚約破棄した間柄で、その二人が一緒にいるのは世間的にみてもおかしいわけで。

 だからといって、アルフレッドかアレクシス様かと言われたらどちらも選べない。アルフレッドの瞳は否と言わせぬ強さがあるのに対し、アレクシス様は全てを包み込んでくれるような包容力を感じる。

 それゆえに、今の状況では誰も選べない。

「それでしたら皆様で行ってらっしゃいませ。もしもこの意見に反論されるのであれば、今後一切エヴァ様との関わりをお断り致します」

 アンナの言葉に皆は、渋々賛成してくれたため、祭りに総出で行くことになった。




「で、なぜ私まで……?」

 アンナが浮かない顔をしている。皆で行けというのだから、当然アンナもついてくるのでしょう?と私が無理やりアンナを付き添わせたからだ。

 いつものお仕着せではなく、私のドレスを着せてオシャレをして。

 お姉さんって感じで、とっても素敵だわ。

「アンナ、折角ドレスを着たのだから、もっと笑っていて」

「おかしくないのに笑えません」

 ん~。いつもと違ってかなり新鮮だわ。

 問題は殿下だわ。まさか王太子様が街中に護衛もつけずにいるなんてバレたら、それこそ身の危険だわ。

「それにしても殿下、よろしいのですか?護衛もつけずにこんなところ歩いて……」

「見つからなければ問題ありません」

 いつかどこかで聞いたようなセリフだが、殿下の姿はかなり目立つので変装しないと大変なことになる。髪は鬘で誤魔化したけど、王家特有のその紫の瞳は隠せない。

 前世ではカラコンがあったけど、この世界にそんなものないものね。

 いや、待って。それに似たものがあるじゃない。あの人なら作ってくれそうだわ。

 でも、問題は殿下がつけてくれるかだよね。

 皆と行きつけのガラス工房に向かう。

 大所帯で押し掛けて、びっくりされていたけど殿下の姿を認めて快く中に入れてくれた。

 おじさんにコンタクトレンズについて説明すると、ビーズより大きめに作ったカボションカットのカラーガラスを薄く削り、表面を滑らかにしてコンタクトレンズもどきが出来上がった。

 皆が何をするのか興味津々で見ている中で、出来上がったそれをきれいな水で洗い、指先に乗せて目の中に入れると、皆がドン引きしてるのが分かる。ただ、アレクシス様だけは笑いを噛み殺していたけど。

「痛くないのですか?」

 片目だけアイスブルーになった私に、殿下が引き吊った顔で聞いてくる。

「若干違和感がありますが痛くはないですよ」

「それを私が着けるのですか?」

 まあ、殿下の変装用につくってもらったのですが……。

「最初はなかなか勇気が要りますね。エヴァの好きな色は何ですか?」

「そうですね、グリーンですわ」

 と何気なく答えた私に殿下はニヤリと笑った。

「エヴァの色ですね」

 と、先ほどの私を真似てカラコンもどきを手に取り、躊躇なく目の中へ入れた。

「へえ。視界は悪くないのですね」

 感心したように殿下が言う。両目にグリーンのカラコンを入れるとまるで別人のようだった。

「こうしてると、まるでエヴァのものになった気がしますね」

 と微笑まれ、心臓が早鐘を打つ。『エヴァの色』『エヴァのもの』と言われて殿下を一人占めしている気分になる。

「じゃあ俺も」

 とアレクシス様もコンタクトもどきを手に取ろうとしたけど、残っているのはピンクだけだった。

 まあ、アイスブルーが片方残っているけど……。

「じゃあこれで」

 サファイアブルーとアイスブルーのオッドアイができあがる。

「アイスブルーだけお揃い」

 と言われて、今、自分もオッドアイになっていると思い出す。

「何でそんなもの戸惑いなくできるの?」

 アルフレッドだけは未だにドン引きだった。

 残ったピンクのカラコンもどきを私がもらい、アンナにつけてもらおうって思ったのだけど、『私よりメリーの方が好きそうですよね』と言われ、メリーへのお土産にすることにした。


コンタクトレンズは高度医療機器です。眼科医の指示に従い、使用上の注意をよく読み正しく使いましょう( ゜∀゜)。

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