31.
矛盾が生じたため、少し修正しています。一度読まれた方はスルーされても問題ないような内容にしております。
「エヴァ、もう帰っちゃうの?」
唐突に殿下に話しかけられる。
「はい、事件も解決致しましたし、そろそろ……」
お暇しようと思っています、と告げようとした時、
「充電させて?」
と殿下に手を差し出された。握手でもするのかと手を出すと、手首を掴まれ、そのまま殿下の胸に引き寄せられた。そしてそのまま抱き締められる。
「寂しいな。またいつでもここに来ていいからね?」
そしてそのまま、頬にキスをされる。
「あの、殿下……。婚約者ではなくなったので、そういったことはお控えくださいませ……」
顔が赤くなりつつも、必死に殿下を窘める。
「エヴァが可愛くてつい」
悪びれもせず答える殿下にちょっとだけ困る。
婚約破棄したとたん、殿下のスキンシップが増している気がする。そもそも、それまでが会っていなかったからそう感じるだけかもしれないけど。免疫無さすぎて、殿下の行動一つ一つにドギマキする。何とか話題を変えないと、心臓が持たないわ。
「そういえば、何故私の筆跡をご存知だったのですか?」
殿下に初めて書いたはずの手紙が偽物だと見破られた理由。それはさっきから気になっていたことだ。
「エヴァ、あの天使の絵はエヴァがガラスで作ったものだったよね?」
ああ、あの時の……。マリアが贈ったって言っていた物ね。
私は首肯した。
「ガラスが光に透けて、絵の下にエヴァのサインが書いてあることに気づいたんだ」
あれ?私、下絵にサインなんかしたっけ?覚えてないわ。
「その絵にサインをした覚えはありませんが……そもそも、それを私が作った情報は秘密にしてあったはずですが……?」
「なんだ、バレちゃったか。実は教会から相談があっててね、その天使の絵を譲らないと今後一切寄付をしないってある貴族に言われて困っていると。それで、寄付一覧表を見せてもらって、その時に見たサインが手紙のサインと随分と特徴が違っていたからね。すぐに分かったよ」
そうなんだ……。でも、手紙に一体どんな内容が書かれていたのか気になるけど。
「その手紙には、エヴァがアルフレッドを想っているから、私との婚約を解消したいと書いてあったよ。もちろん、そんなこと許されることではないから、それはできないことを返事したのだけどね」
そんな、私が書いたものと随分内容が違うみたいだわ。
「私に届いた手紙には『分かった』と一言だけでしたわ」
「それもマリアの工作だよ」
キャロルが証拠を持っている、と殿下が答える。
「アルフレッドと出掛けたことがあっただろう?マリアがエヴァとアルフレッドがデートをしていると言ったときは嫉妬で狂いそうだったよ」
「おばあ様の家に行ったときの話だわ」
「馬車の中で口説かれていたかどうかは知らないけど、その時はアンナとアレクシスも一緒にいたんだろう?」
うっ……。二人に口説かれていたとはとても言い出せません。
「アルフレッドとは遠い親戚でもありますし、幼なじみでもありましたから。それにアレクシス様も一緒でしたので……」
ちょっと言い訳じみる。
「知ってる。私も偶然視察に訪れていてね。近くの湖で私の色の髪飾りを着けた君を見つけたときは、嬉し過ぎてこんな風に君を抱き締めたいって思ったよ」
と言って、私を抱き締める腕に力が籠る。
私の色……って言った殿下。あの日珍しくキャロルが私の髪飾りに口出ししてきたと思ったら、もしかして、偶然鉢合わせするかも知れなかったから?
「愛してるよ、エヴァ」
そういって殿下はまた私の頬に唇をつけた。
「で、殿下……」
「クリスって呼んでと言ったでしょ?」
菫色の瞳に見つめられ、ドキドキする。
「クリス……様……」
「なあに?エヴァ」
殿下が呼べって言ったから呼んだのに……。
「し、知りません」
と答えるのが精一杯だった。
「可愛いなぁ、エヴァ。今は婚約解消してるけど、その間、他の男に絆されちゃダメだからね?」
と念を押し、額に口づけられ『充電完了』とようやく殿下は私を離してくれた。




