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30.

 事件が片付いたことで、ホッとしたのも束の間。

「父上、母上、この度私はエヴァとの婚約を解消しました」

 殿下が陛下に向き直り、婚約破棄の件を報告する。

「なんですって?クリス、あなた一体どういうつもりですか?」

 今まで黙っていた王妃様が問い詰める。

「父上が、自分の伴侶は自分で見つけろと仰いましてね。私は母上の決めた婚約者ではなく、私自信の力でエヴァを落とそうと考えております」

 殿下、ちょっと言い方がアレなんですけど?

「ちょっとアナタ、どういうことですの?」

 王妃様が今度は陛下に食って掛かる。

「聞いての通りだよ。結婚するなら私たちみたいに相思相愛でないとね。この国のトップが幸せでないと国民も幸せになれない。やはりな。お前ならいずれそうすると思っていたよ。しかし、随分と早い決断じゃないか」

 相思相愛と言われ、王妃様が顔を真っ赤にして言葉を失った。

「それは、婚約者のままだとエヴァは会ってくれませんから」

「婚約を解消したと知ったら、ガマダセル公爵の息子たちが黙ってないぞ」

「そんなの、受けて立ちますよ。それくらい障害があった方が愛が深まります」

 いや、何か私を抜きに進む話しについていけません……。

「ということだ。何、親の贔屓目抜きにしてもクリストファーは悪い奴ではない。エヴァ、覚悟しておいてくれ」

 陛下に殿下と同じ言葉を言われ、親子だな、とつくづく思った。



 私が滞在していた部屋へ戻り、家に帰る準備をする。メリーも私についてきて、謝ってくれた。

「謝罪の気持ちの分、しっかり働いてね」

「はい!ありがとうございます、エヴァお嬢様」

 簡単に許すと言えないけど、メリーはもう私を裏切ることはないだろう。基本、家族思いのいい子だから。

「そういえば、キャロルはどうしているの?」

 私につけられていたもう一人の侍女。私が殿下に出したはずの手紙を持っていた彼女。この事件に全く関わりがなかったのだろうか?

「キャロルは、お嬢様が行方不明になった朝、母親が危篤だとかで実家に戻りました。それからなんの連絡もありません」

 そういえば、そんな話していたわね。でも、なぜ連絡一つ寄越さないのかしら?

「それはこういうことだよ」

 いつの間にか殿下が現れていた。

 ビックリしたわ。心臓に悪いわ。

「キャロル、出ておいで」

 殿下が声をかけると、現れたのは殿下の護衛としてついていた男性で……。

「殿下、ここでその名前を呼ばないで下さい。面白がっているでしょう?」

 その声はキャロルの声で……。

 茶色い鬘を被ると、それはキャロルだった。

「キャロル……?あなたなの?」

「はい、クリストファー殿下の命で、あなた様の側におりました」

 私もメリーも目を白黒させている。

「エヴァ様をお守りする役目を仰せつかっておりながら、危険な目にあわせてしまい、申し訳ございませんでした。エヴァ様が行方不明になられたと知り、殿下の元に戻らねばなりませんでしたから、実家に帰るという名目で屋敷を離れました」

 そういうことだったの……。

「じゃあ、あなたが落とした手紙は……」

「はい、あれが正真正銘、エヴァ様が殿下に宛てられた手紙です。偽物の手紙が届いたと殿下から聞いて、メリーの部屋から見つけました」

「キャロル……(?)は最初からメリーが怪しいと思っていたの?」

「そうです。エヴァ様の侍女の身辺調査で、侯爵家のマリアと接点があるようだったので……」

「ときどき睨んでいたのは気のせいじゃなかったのね。あれ?でも何で私まで睨まれていたの?」

「殿下に相応しいお方か見極めるため、です。失礼だとは思いましたが、婚約者となられても殿下とお会いにならないエヴァ様の本心を探っておりました」

 うわぁ。私が転生者だとか知られてなくてホントに良かったわ。

 断罪避けるためなんて知られたら不敬だって切り捨てられていたかもね。

「あの時、キャロルがいなくなったことで責任を押し付けようとしたけど、まさかそんなことって……」

 メリーがまた青くなった。

「もう、メリーには罰を言い渡してあるし、これ以上、罪を追及するつもりはないよ」

 キャロル(?)がいうと少しだけホッとした表情になった。

「それにしてもアンナにはすぐに見破られました。エヴァ様に害をなすおつもりがないなら目を瞑りますって言われ、肝が冷えましたよ」

 アンナ……。さすがだわ。私もいつまでたってもアンナには敵わない気がする。

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