25.
やっぱり、あんな場面見たら嫉妬する。分かっていたはずなのに、だから殿下に会わないようにしていたのに、好きって気持ちが一人歩きしてる気がする。殿下とマリアのツーショット見て、かなり動揺している。
マリアは私より格上の侯爵家の令嬢。おまけに隣国の皇后陛下の姪で、血筋も私より相応しい。
だから、皇后陛下に縁談持ち込まれたら、私なんか敵うわけない。それに、私を誘拐した犯人の仲間に隣国の皇族がいたとしたら、簡単には公にはできない。
もしかして、私、殿下の足手まといになってる?
殿下に、私を口説き落とすって言われて舞い上がってた。
こんなんじゃ、殿下の隣になんて、とてもじゃないけど立つことはできない。
ソファーに座り込み、茫然とする。
私を口説き落とすって言った人が、三日後には他の女性にわざわざ婚約破棄した事実を告げるなんて、相手に期待を持たせようとしてるとしか考えられない。
ションナサル皇后陛下は、マリアを正室にして欲しいみたいだし、そうなったら私が側室?
おばあ様の言葉が思い出される。『殿下が側室を娶るとして、耐えられるかい?』
私が側室になるなんて想像してなかったわ。
私が殿下のことをそれほど好きじゃなかったら、それでも良かったのかもしれない。でも……!
「エヴァ様、私がこんなことをいうのは僭越ですが、殿下を信じてくださいませんか?」
「殿下を……信じる……?」
「殿下は、きっと良い方法をお考えなのだと思います。ですので、どうか……信じてくださいませ」
スーザンがそっとハンカチーフを差し出してくれ、溢れそうになっていた涙を拭う。最近、泣いてばかりいるわね、私。
私たちの間に信頼関係はない。それで殿下を信じろっていうのは無理がある。
でも、スーザンはそれを信じろと言う。もしかしたら殿下には何か思惑があるのかもしれない。
それだったら信じてみるのもアリかもしれない。
私は無言で頷いた。
「あ、服、返さなきゃね」
今まで着ていたお仕着せを脱ぎ、普段着のドレスに着替える。お団子にしていた髪をほどき、スーザンが櫛を通してくれた。
「エヴァ、話があるんだけど……」
そこに殿下が訪れた。さっきの件がふと蘇りまともに顔を見れない。
「主犯がとうとう自白した。証拠も揃ったし明日の朝、父上の前で罪を明かし罰を言い渡す。そしてその時は、君にも一緒にいて欲しいんだ」
犯人が自白したと聞いて顔をあげると、アメジストの瞳と目が合う。
「明日、それが終われば家に帰れるよ。こんなところに閉じ込めちゃって、随分暇だったようだし……」
何だかイヤな予感がする。
「ねえ、スーザン?侍女の仲間に蜂蜜色の髪の子っていたっけ?」
スーザンは顔色を失っている。バレちゃったんだ!
「ごめんなさい、私が無理を言って……」
スーザンが怒られる前に謝らなきゃ。
「何を謝ってるのエヴァ?」
ああ、笑顔が怖い。
「ったく、しょうがないなあ。私が閉じ込めていたのも悪かったんだけど、まさかエヴァがお仕着せを着て外にいるなんて思わなかったしね。意外と似合ってて可愛かったよ?」
あわわわ、この件でスーザンがクビになったりしないよね?
「スーザン、どうせエヴァが無理を言ったんでしょう?」
あらら、お見通しなのね……。私は首を縦にふり、私が悪かったアピールをする。
「一体いつ気付かれたのですか?」
「ん?エヴァが中庭に来たときから」
「ほぼ最初からバレてたって……。スーザン、ごめんなさい」
「相変わらず隠れるの下手なんだから」
ん?相変わらず?どういうこと?
「一つ、昔話をしようか」




