表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/81

20.

 猿轡を外され拘束が解かれる。

「クリストファー殿下……?何故ここに?」

「話は後だ、立てるか?」

 私を立ちあがらせようと手を引っ張られるが、腰が抜けて上手く立てない。

「何すんだ、この野郎!」

 殿下に飛ばされた男が、キラリと光るものを振りかざし殿下に襲い掛かってきた。

 殿下は剣を素早く引き抜き、男の手を払う。

 カランと音をたてて落ちたそれがナイフだったことに気付き、背筋が凍る思いがした。

 そのまま男をなぎ払うと男は床に倒れこみ、やがて動かなくなった。

「……殺したの……?」

「いや、殺しはしない。証人だからな」

 ずっと我慢していた箍がはずれたのか、今になって震えてきた。

 殿下はそっと抱き締めてくれた。

「助けに来るのが遅くなってすまない、怪我はないか?」

 若干乱暴な扱いをされ、服を破かれはしたが怪我はしていなさそう。

「はい、大丈夫です」

 殿下の温もりに包まれて、徐々に震えが治まってくる。不思議だわ。

「助けに来て下さってありがとうございます。殿下」

「当たり前のことをしただけだ」

 当たり前、ですか……。

 婚約者という立場にある者だから助けに来ただけだ、と言われた気がした。

 震えは治まったものの、立てそうにない。

 助かった安堵と、殿下への想いとごちゃ混ぜな感情が渦巻く。

「帰ろう」

 背中と膝の裏に腕が回り、ひょいっと横抱きにされる。

お姫様抱っことかいうヤツだ。

「殿下、降ろしてくださいませ」

「却下だ」

 いや、重たいでしょ?ってか恥ずかしいし。それ以前に、なんかいろいろとお聞きしたいことが山ほどあるのですが……。

 私をお姫様抱っこしたまま、スタスタと外に出る。

 え、ええ?ちょっ、いろいろとツラいんですけど?

「俺の首にしっかり掴まってろ」

 と言われ、素直に殿下の首に手を回す。近くなった顔の距離に思わずドキッとする。

 外には数名の兵士と、護衛と思わしき人がいた。

「中にいる男を捕らえろ」

 兵士たちが建物の中に入る。

 その凛とした声が格好よくて……。

 殿下は、私を抱えたまま器用に馬に乗った。

 馬上は予想以上に高かったが、殿下がしっかりと支えてくれていたおかげで怖くなかった。

 馬が駆け足で道を行くのに、殿下の体幹は少しもブレない。鍛え上げられた身体にギュッとしがみつく。

「揺れるが我慢してくれ」

 一言いうと、殿下は真っ直ぐ前を向き、馬を走らせた。

 やっぱり、義務だけで私を助けてくれたんだわ。

 婚約を解消するって言っていたけど、まだ正式には婚約者だものね。

 殿下が現れたとき、嬉しくて、少なからず私の身を案じてくださったのでは?と思っていたが、それは都合のいい勘違いだったと分かってしまった。


「殿下、見せつけないで下さい」

「黙れ」

 馬を走らせながら護衛と良くこんな会話が出きるわね、とどこか違う感想を抱いてしまった。

 そうよ。殿下にとって私はただ婚約者という肩書きを持つ者。そこに恋愛感情は存在しない。

 それがどうしようもなく、胸を抉られる。


 暫くしてたどり着いたのは、王宮だった。

「え?うちに帰るんじゃなかったんですか?」

 殿下を仰ぎ見ると目が合ってしまった。

「そのまま帰ったらご両親が驚かれる。それに少し協力して欲しいことがあるから」

「協力、ですか?」

「ああ、詳しいことはもう少ししてから話す。とにかく今はその格好をどうにかしないとね」

 ふわりと微笑まれる。

 ふ、不意打ちだわ。恋愛感情がないと知りつつもときめいてしまう。

 馬から降りても、殿下は私を降ろしてはくれなかった。

「殿下、あの、そろそろ自分で歩けると思うのですが……」

 小声で訴えるも

「却下だと言ったはずだ」

 と言われ大人しく殿下に運ばれる羽目となり、そのままどこかの部屋に運び込まれた。

 そこでようやく

 ソファーに降ろされた。


「エヴァ、ごめんね。社交デビューまで会いたくないって言ってたのに、約束破って……」

 頭を撫でられ、部屋に控えていた侍女に、後は頼むと言ってスッと離れていき、

「じゃあ、また後で」

 殿下はそのまま、部屋を出ていった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ