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 騎士団をカエルに変えた男のいきなりの告白劇。

 大勢の前で告白された女は時間が止まっているかのようにピクリとも動かない。

 それを見ていた住人達はどうしていいかわからず、沈黙を貫いた。


 ゲコゲコ。


 カエルに変えられた騎士団の鳴き声が、空しくくあたりに響く。


 ……。


 ピカロの肩がプルプルと小刻みに震えはじめる。


「ねえダイザブロウ」


「なんでしょう?」 


 次の瞬間、ピカロの右拳がダイザブロウの顔面に炸裂する。


「あ、あんたねえ。もう少し場所とか色々考えなさいよ!」


「はて? 私の想いを伝えるのに場所など関係ありませんが?」


「わたしには関係あるのよ! なんでこんな大勢の前で、あんな恥ずかしいことを堂々と言えるのよ!」


「恥ずかしい? 私は何一つ恥ずかしいことなどございませんが」


「あんたになくてもこっちにはあるのよ!」


「ふむ、では何処ならよろしいのでしょうか?」


「ど、どこって、それは…その…」


 ダイザブロウの問いに、何かを想像したピカロの頬が赤く染まる。

 そしてその赤はピカロの顔全体に広がっていく。


「ピカロ?」


 心配したダイザブロウがピカロの顔を覗き込む。


(!?)


 ダイザブロウと目の合ったピカロの顔がさらに真っ赤になる。


「ピカロ?」


 そんな二人のやり取りに、住人たちから注がれる視線にも変化が現れる。

 恐ろしいものを見る恐怖から、ほほえましいものを見守る生暖かいものへと。


 ゲコゲコ。


「そ、そんなことよりカエルになった人たちは元に戻せるの?」


 ピカロの強引すぎて、全くうまくない話題変更に住人達の想いが一致する。

 この女、ヘタレだ。

 その思いは視線となってピカロに注がれる。


 しかし、当のピカロはそれに気づく余裕は全くなかった。、

 真っ赤に染まったその顔で、全くうまくない話題変更を強引に進めようとする。


「ほ、ほら、やっぱりいつまでもカエルのままとか、かわいそうじゃない?」


「ピカロは優しいのですね。あのような無礼な輩にも慈悲を与えようとするとは。わかりましたここはピカロの慈悲に免じて元の姿に戻してさしあげましょう」


 ダイザブロウが言うと同時にカエルたちに光が降り注ぐ。

 光を浴びたカエルたちが人の形に戻っていく。


 だがそれは新たな悲劇の始まりだった。


 カエルたちは自分たちの身に着けていたものの()で鳴いていた。

 そして元の姿に戻った時、身に着けていたものは騎士たちの()に転がっていた。


「きっさまぁぁああ!」


 怒気を含んだ叫びが辺りに響く。

 叫びの主は一糸まとわぬ姿の一人の女性だった。


(しまった!)


 カエル達は身に着けたものの傍にいた。

 そのままの状態で元の姿に戻る。

 それはすなわち騎士団全員が全裸になるということだった。


 両手で体を隠しながら怒りに震える女騎士。

 一糸纏わぬ数十名の男たち。


(何この地獄絵図……)


 恥辱に頬を染めながら、全裸の女騎士がピカロを指差し叫ぶ。


「この屈辱、許しはせんぞ、この反逆者め!」


「あの、手は動かさないほうが」


「うあぁぁぁあああ!」


 女騎士はなんとか肌を隠そうと努力する。

 だが、彼女達が着ていたのは鎧。

 鎧というものは重く頑丈で、とっさに肌を隠す為の衣類としては最悪の代物だった。


 その結果彼女達がとれた行動は兜で股間を隠す。

 ただそれだけだった。

 女騎士を筆頭に、兜で股間を隠す数十名の男達。


(く、笑っちゃだめ。笑っちゃだめよ!)


 騎士団から視線を反らし必死に笑いを堪えるピカロ。


「貴様、何がおかしい」


(何がおかしいって、可笑しいところしかないわよ!)


「こちらを見ろ、反逆者!」


(ええ! 無理無理無理!)


「こちらをむけと言っている」


「ぶはぁ! もー無理! あっはははははははははは」


「なっ、貴様」


「あはははははは、何でみんな兜で股間隠してるのよ」


 我慢の限界に達したピカロの笑いは止まらない。


「あははははは、そういう新しい装備なの? 騎士団斬新すぎるわよ、あはははははは」


 ピカロが笑い出したのをきっかけに、いままで我慢していた街の住人達も笑い始める。

 そしていったん決壊した笑いの波は瞬く間に周囲に広がり、やがて渦となって騎士団に襲い掛かる。


 笑いの的になった女騎士の顔が羞恥にゆがむ。


「お」


 その目にはうっすらと涙が浮かぶ。


「おぼえてろーーー!」


 女騎士が子どものような捨て台詞を残し退散する。


「た、隊長待ってください!」


 騎士団の団員たちもそれを追って退散する。

 全員尻を丸出しのまま。


「まさに尻をまくるですねえ。少し意味が違いますかね?」


 そんな光景を見て、ダイザブロウはポツリとつぶやくのだった。

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