表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第1章 第2話 松川商事編

松川商事との商談は成立しました。一応、競合はいたという設定です。

競合については後々出てきます。

なお、松川商事はこれまでネクサスジャパンと10年以上取引を重ねているお得意先です。

設立当初からネクサスジャパンが取引しており、競合他社は入り込めていません。

「松川商事からの入金がない?」

村田が総務部請求管理Gからの連絡を受けたのは12月3日のことだ。

松川商事の銀座移転が10月1日に無事終了し、複合機やPCなどの

納品も全て終了した。総額1000万以上、利益率40%。地域営業部単位で見れば

大型商談といって差支えはない。しかも松川商事得意の一括支払い。

日本橋2課の課長である加藤は

「これで来年春の昇進、そして大手営業部への異動が見えてきたな」

と、10月初めの業績達成者慰労会でそう村田を褒めたたえた。

そしてその好調さをそのままに、村田の下期の営業成績は好調である。

松川商事とは、大型商談を終えた直後であり、総務部長である原からも

「移転後は忙しくなるから、しばらく訪問は控えてくれ」

と言われていることから、ここ1か月半は松川商事を訪問していなかった。


その矢先に総務経理Gからの連絡があったのだ。

正直、入金云々については請求管理Gの仕事であり、そんなことはそっちで

対応してくれよ、と村田は内心で考えていた。

「そうか。確か松川商事の支払いサイトは・・・」

「通常時は月末締めの翌月15日支払い。ただ今回は取引額の大きさから

 支払いを翌月末を希望する、という申請書をそちらから出しているな」

請求管理Gの林田が言った。林田は村田の同期である。入社当時は営業職で渋谷区、世田谷区を担当する城西営業部に配属された。営業成績は優秀であったが、本人たっての希望で、昨年から請求管理Gに異動となった。

「そうだったな。電話にも出ない?」

「いや、原部長が昨日電話に出た。『申し訳ない。至急確認する』と言っていた。

 そのあと『確認した。明日には支払える』と。」

「それなのに、今日になっても入金がない、と」

「そう。松川商事はこれまでに入金遅れを起こしたことがないから、気になってな」

林田が不安に思ったことは、不幸にも大抵的中する。

嫌な予感をおぼえた村田は林田に訊ねた。

「もしかして資金繰りが悪化している、とか?」

「そうかもしれん。が、確信できるような証拠もない。今、平成リースの

黒木君に松川商事について情報を集めてもらっているところだ」

平成リースは日本最大手のリース会社である。ネクサスジャパン担当の黒木は

村田、林田と同い年ということもあり、度々リース契約時には贔屓にしていた。

「去年の10月に第二製造工場を建てたんだよな。東南アジアへの輸出量をガンガン増やしている最中だから、一時的に資金不足になっているのかな」

とどこか他人事のように村田は言った。


ネクサスジャパンにおいて、請求管理は営業の仕事ではない。

ネクサスジャパンはネクサスの販売子会社であるが、年商3,000億円、従業員も

8,000人以上抱えている。よって業務も細分化されており、入金管理については

総務部請求管理Gが担当している。営業マンは販売とアフターフォロー業務に

専念できるように環境が整えられているのだ。名目上は。

「まぁ松川商事くらいの中小メーカーは資金繰りに苦労するからな。自社への投資を

 最優先したいのは分かる。しかし企業間取引は『信用』で成り立っている。

 よって支払期日に入金できないというのは信義則違反だぞ」

林田の言うことは尤もである。企業間取引、ましてやリースを使わない一括払いを

好む松川商事のような会社は、支払期日を守らないと一気に信用がなくなる。

取引先の銀行にバレれば資金借り入れにも支障が出るのだ。メーカーである松川商事にとって、銀行からの資金借り入れは無くてならない。

そして、そんなことは先方の原が百も承知のはずだ。

そこまで考えると村田の中で不安が大きくなってきた。

林田に「すぐに松川商事に連絡を入れてみる」と伝え、村田は電話を終えた。


あぁ、仕事が増えた・・・村田は溜息をつきながら受話機を戻した。

そしてすぐに松川商事総務部宛に電話を掛けた。

出ない。

電話は繋がるのだが、誰も出ない。

松川商事の総務部は部長の原を含めて4名。全員が社外に出ていることは考えにくい。

村田は銀座東5丁目交差点近くにある松川商事に向かうことにした。

八丁堀にある中央営業部から銀座まで自転車で10分もあれば着く。

急げ、急げ。

まさか、まさか・・・・


まぁ営業マンあるあるですね。先方からの支払いが遅れると請求管理担当者から連絡が入って

「先方に電話して確認してくれ」と言われるやつです。

お前が電話しろよ・・・とよく思っていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ