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うらうらと、乙女と子猫。  作者: 緋和皐月
うらうらと。
5/11

乙女と子猫の朝花見。

 


 ピヨピヨ……と、どこからか、邪気のカケラも無い鳥の声がした。清らかな朝の気配を感じて、1人と1匹は目がさめる。



「……ふらふーたん、おはよーございますね……ふぁ」

「……ねむいニャァ」



 ふあ、と乙女につられて、子猫もいっぱいに口を広げて欠伸する。


 乙女はカーテンを綺麗に端にまとめ、窓を開けた。朝の涼しい風が吹いてくる。

 風の冷たさに 小さく震えて窓を閉め、1人と1匹は布団に潜り直した。



「やっぱりお布団が1番ですねえ」

「そうだニャァ……」

「およ、ふらふーたん」



 布団にすっぽり体を包んだまま、乙女が窓の外を眺める。



「……咲いてますね」

「何が、ニャァ?」

「桜ですね! 見てくださいね、満開ですね!」



 ぶわっさーと布団から飛び起きて、乙女は再び窓を開ける。

 風に花弁を乗せて、枝を揺らす桜の木。丘の向こうまで、ずらりと並び、満開を迎えていた。



「ほぁー、早いものですね!」

「ムニャァ……そうだニャァ」

「こうしちゃおれません、お花見しなければ!」

「ムニャァ……そうだニャァ」



 まだ寝惚けている子猫の隣で、乙女がいそいそと動き出す。



「ニャァ……眠いニャァ」



 乙女のクルクルした頭にしがみつき、微睡む子猫。

 乙女は気にせず、スープを作ったり冷蔵庫からサラダを取り出したり、忙しく動き回る。



「ふらふーたん、ウェットフードとカリカリどっちがいいですかね?」

「うぇっとふーどニャァ!」



 子猫は目を開き、はっきり言いきった。



「ウェットフード好きですねー? まぁそれはそうと準備はできたのでいざ参りましょうね、花見の地に!」



 バゲットとサラダとスープ、そして猫缶を、レジャーシートと共にリュックに入れて、1人と1匹は外に出る。



「ふおお! 風が冷たいですね、日はあったかいのに!」

「クルクルの髪の毛は、あったかいニャァ」

「それは良かったですね。どうぞ、わたしの天パに感謝してくださいね」



 丘の頂上を目指して、えっちらおっちら、と乙女は歩く。



「およよ、こんなところにタンポポ咲いてますね。アスファルトの割れ目ですのにね?」

「すごいニャァ」

「生命力の強さを感じますね」



 るんるんたった、と乙女が駆け出す。子猫は落とされないように、必死にクルクルした頭にしがみ付いた。



「よっしゃー、丘のてっぺんまで、あと少しですね!」



 クルクル、と子猫が目を閉じたまま、呼びかける。



「我、クルクルに言いたいことあるニャァ……お腹すいたニャァ」

「朝食は丘の上で、ですからね。あともう少しの辛抱ですね!」



 丘の上まで全力疾走する乙女。子猫は空腹と眠気に襲われつつも、乙女の頭にしがみついて、落ちないように努力する。



「着き、ましたね……ふら、ふーたん、ご飯、食べましょうね……」



 膝に手を当ててゼェゼェと息を整える乙女の頭から、ぴょんと子猫が飛び降りる。



「ご、は、ん! ニャァ!」

「わかってますね……待ってくださいね……ふう」



 こじんまりとした1人用のレジャーシートを広げて敷き、ほっと乙女はひと息ついた。



「今日は、いつもより少しお高めの猫缶を持ってきましたよ、ふらふーたん」

「高級猫缶ニャァ!」

「なんせ、お花見ですからねぇ」



 パカッと猫缶を開けて、皿に注ぐ。すると目を輝かせて子猫が飛びついてくる。



「美味しい匂いするニャァ、食べたいニャァ、美味しいのニャァ」

「良いですよ、お上がりくださいね」



 尻尾をぴんと立てて、むしゃむしゃ食べ始める子猫。隣で乙女も、持ってきたタッパーを開けて、サラダを頬張り始める。



「んー、最近見つけたドレッシング、美味しいですねぇ……シソと蜂蜜と味噌の見事なるコラボレーションですね」

「たぶんクルクル、だいぶ味覚が偏ってるって、我は思うのニャァ」



 桜の花がひらひらと落ちる。

 子猫の背中、フワフワの白い毛に、桜の花が落ちてきた。桜の形をした斑点模様のようである。

 可愛らしいその様子にクスクスと笑って、乙女は子猫の頭を撫でる。



「ふらふーたん。来年も、この桜を見に来ましょうね」



 猫缶を食べるのを中断して、子猫は乙女の手のひらに顔をこすりつけた。



「この猫缶、また食べさせてくれるなら、いつでも来るニャァ」

「それなら来年も、うんと奮発しないといけませんねぇ。……そんなに美味しいんですか、その猫缶?」

「これは我の猫缶だから、あげないニャァ」




 和やかに春を楽しむ1人と1匹。彼らを祝福するように、春の日差しが降り注ぎ、桜の花が舞い落ちた。






あとがき。


どうも皆様、こんにちは。緋和皐月です。

5月になりましたね。新緑の候、いかがお過ごしでしょうか?


今現在、私の地方では、桜は完全に散っております。本作と現実は、季節感が完全にズレています。



ところで。

昨日もご感想をひとつ、いただきました! 第5号!

ありがとうございます! 嬉しくて躍動しております、今なら分身の術が使えそうです。


=͟͟͞͞(๑´=͟͟͞͞(๑´ ω =͟͟͞͞(๑´ ω `=͟͟͞͞(๑´ ω `๑)=͟͟͞͞(๑´ ω `



クルクル「穏やかで優しいって褒めてもらいましたね! 嬉しいですねー!」


ふらふー「猫らしい……猫らしいって何だニャァ? 猫だニャァ!」


クルクル「いやいや、ふらふーたん猫っぽくない時ありますよね?」


ふらふー「ニャァんということでニャァ……そりゃ我は、普通の猫なんて比べ物にならないくらい可愛いけどニャァ(ドヤァァァ」


クルクル「そりゃ、ふらふーたんは世界一ですけれどもね」


ふらふー「(ドヤァァァァ」




あところでですね。

ふらふーたんの台詞、『』だったのを少し前から「」にしているんですが、如何ですか?

どっちが良いのか、今試作中であります。


それと、前回まで、回数を重ねるごとに文字数を増やしていたのですが、今回は足りませんでした、すみません。まぁ折り返し地点ということで、勘弁してください(勘弁するも何も、恐らく、どなたも気づいていない事柄)



『うらうらと、乙女と子猫。』

本作は、平成をまたぎました。令和元年も、お読みいただけると幸いです。


それでは、次回も宜しくお願いします!

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