乙女と子猫のツクシンボ。
「ふらふーたん!ツクシンボ採りに行きませんかね?」
「それは、お散歩かニャァ?」
ごろろーん、と布団の上に寝転がった乙女と子猫。そのまま大きく頷いて、よいしょ、と乙女は体を起こす。
「麗らかな春の日ですからね! きっと、ツクシンボもう生えているのですね」
頬を染めて、楽しそうに語る乙女。
そんな彼女を、半目でちらりと見やってから、子猫は目を閉じた。
「ツクシンボって何だニャァ?」
「つくし、のことですね。ふらふーたんは、つくし知ってますかね?」
「知らないニャァ」
「じゃあ採りに行きましょうね! きっと楽しいですね」
ぱっと外を歩くための服に着替えた乙女。ジーパンにTシャツ、コートというシンプルな格好だが、乙女が着るとすらりとして綺麗に見えるのが不思議だ。
「ほらほら、ふらふーたん! 早く行かないと、ぜ〜んぶ採られちゃうかもですね!」
「そんなに急がなくても、大丈夫だと思うニャァ……」
「そーやって、ずるずる先延ばしにしていたら、残っているツクシンボも枯れちゃうですね!」
早く早く! と急かす乙女に、やれやれと子猫は体を起こした。
「そんなにツクシンボが好きなのかニャァ?」
「だって、早春の楽しみといえばツクシンボ採りですからね。もう少ししたら、たけのこも美味しくなりますね」
「ほんとーに、クルクルは食べることが好きだニャァ」
1人と1匹は外に飛び出す。震えたくなる寒さの中に、仄かな優しさが紛れ込んでいる。
「桜は、もう咲きましたかね?」
「さぁ、我には興味の無いことだニャァ」
スキップするように歩く乙女と、少し寒そうに駆ける子猫。
河原に行くと、雑草と紛れて、つくしが生えていた。ぴんとまっすぐ天に向かって生えているつくしは、なんだか神聖に見えてくる。
「ツクシンボ、いっぱいありますね!」
「ちょっとトゲトゲしてるニャァ」
「そうですかね?」
ふんふん、と不審げに顔を近づけた子猫にクスクスと笑って、乙女はつくしを摘んだ。
「つくし、どうやって食べましょうかね。やっぱり煮るのが1番ですかね?」
「我はどうでもいいニャァ。それより、美味しい魚を食べたいニャァ」
「じゃあ、帰りに魚屋さんか、スーパーに寄りますかね。鰆とか、春の魚はもうありますかねー?」
こてん、と首を傾げて笑う乙女を見て、子猫は、むーんっと背伸びした。
「春は楽しいですね〜」
「我は冬が好きニャァ」
「ふらふーたんは、冬のコタツが好きなだけですよね? わたしは夏も好きですね」
「とか言って、クルクルは秋も好きニャァ」
帰路をゆるりと歩む1人と1匹。少し寄り道して、魚屋を目指す。
「まぁ結局、わたしは全部、好きですね。春夏秋冬、いつの季節もご飯が美味しければ素晴らしいですね」
「クルクルは食いしんぼニャァ」
「ふらふーたんも、実は結構食べるほうですよね? 人のこと言えませんねー!」
あとがき。
どうもこんにちは、緋和皐月です。
前回の投稿から、ご感想をいただきました。ご感想第1号でございます! (=´∀`)人(´∀`=)ワーイ
ふわふわ綿毛のような、ふらふーたん。頭に乗る癒しの子猫、どうやら早速モテ始めているようですね。
ふらふー「我、いつでも頭の上に乗るニャァ!(ドヤァ」
クルクル「でも、ふらふーたん、だんだん重たくなってきてるので、あんまり乗せたくないですね」
ふらふー「…………(ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃっ!)」
クルクル「きゃっぱぁぁぁぁ!?」
いやはや。初回公開からご感想いただけるなんて、なんて有難い……しみじみと噛み締めておりやす。
ふらふー「ご感想、ありがとだニャァ!」
クルクル「ふらふーたんの魅力、どんどんお伝えしていきますね!」
皆様、今回もご覧くださり、ありがとうございます。
本作は、11時投稿を目指します。
のんびり起きてご飯食べて「あ、更新されてらぁ」と軽ぅ〜い感じで、GW期間中お楽しみいただければ幸いです。
天真爛漫な乙女と子猫、次は何して春を楽しむ? どうぞ次回もお楽しみに!
緋和皐月