乙女と子猫は昼寝がお好き。
窓から差し込む、柔らかな陽射し。それは、麗らかな春の木漏れ日。
ポカポカ、ポカポカ。黄色の蒲公英の花が咲いている。
「ふわぁ……絶好のお昼寝日和ですね……」
「そうだニャァ……」
窓辺の机に頰を押し付けた乙女。そして、彼女の頭に乗っかった真っ白ふわふわの子猫。
1人と1匹は、ふぁぁと呑気に欠伸する。
ああ、平和って素晴らしい。しみじみと、1人と1匹は、日々が平和であることの有難さに改めて感謝した。
「はわぅ……眠いですね……」
「そうだニャァァ……」
とろーん、と蕩けたように目を瞑り、伸びている乙女と子猫。
「わふ……もう、お仕事しなくてもいいなぁって気分になりますね……」
「そ……」
乙女の言葉に相槌を打とうとした子猫の動きが、ピタリと止まる。
「それはダメだニャァッ!」
ぐしゃぐしゃぐしゃっ!
乙女の髪の毛を、子猫は思いっきり乱れさせた。おかげで、元から癖のある細い髪の毛が、絡まる、絡まる。
「きゃぱぁぁぁあっ?!」
髪の毛が絡まり引っ張られた痛みに悲鳴をあげた乙女は、机から上半身を起こした。
「髪の毛、引っ張らなくてもいいですよねっ!?」
「クルクルが働かなくなったら、お金無くなって、我のごはんが無くなるニャァ!」
「もぉぉ、食いしん坊ですね、ふらふーたんは!」
「大体ふらふーっていう名前も、だいぶ、ふざけてるニャァ!?」
「いーでしょうがね、ふらふーたんはFluffでオシャレでしょうがね!」
乙女の名前は、久留米胡桃。
名前が「くるめくるみ」であることと、天然パーマのくるくるとした髪から、周りからはクルクルという愛称で呼ばれている。
白いフワフワ毛並みの子猫は、ふらふー。
“綿毛”という意味の「Fluff」が名前の由来である。
「大体ですね、ふらふーたん。今日は日曜日なのですね」
「にちよーび、って何だニャァ?」
「お仕事お休みデーなのですね!」
えっへん、と胸を張る乙女を、子猫はシラーッとした目で見た。
「我、それなんて呼ぶか知ってるニャァ」
「さっすが、ふらふーたん! 博識ですね☆」
「ずるやすみ、っていうニャァ!」
「あー、そうそうズル休……って、ちっがいますね!!」
ニャケケケケ、と笑う子猫と、もぉぉふらふーたん酷いですねーっ、と怒る乙女。
これは、乙女と子猫が過ごす、春の話。
つまり、こんなお話。