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母は魔王なんだけど最弱らしい  作者: 白羽
少年期
5/6

 九歳の誕生日を迎えた。

 鍛え始めてから四年ほどか、行き詰まりを感じる度に視野を広げてきたお陰で、幅広い分野で高い水準の能力を得て来た。

 孤絶系で僕は彼女とまともに殺り合えるようになった。ほんの一部だが、孤絶系の魔法化にも成功している。ただ彼女相手にはそんなに効果ない。だって真空中に閉じ込めても普通に生きてるんだもん、絶対人じゃない、生物じゃない。せっかく真空空間を作る初級孤絶魔術を魔法化したのに、全くの無駄骨であった。この世界はバケモノであふれている。それ以外は中々良い成果はある。

 例えば、僕が重宝する魔法陣は『座標指定・曲面展開・供給発動・下方向作用・圧力作用』の効果を詰め込んだものだ。魔術や体術に対してはどうにでもなるから、防ぐのは刃だけで充分。ただ真正面から受けたらすぐに貫けれてしまったため、曲面に展開し、かつ肉体が切れるだけの圧力を感知したら受け流すために下方向へ力を加えるよう式を描いた。しかも範囲を狭め、発動時間を最小限に抑えることで、僕は十枚をローテーションして使い持続的な展開を可能としている。

 なに、最近は剣先を目で追えるようになったから、反応してからで十分展開は間に合う。この戦い方を習得してから、彼女は非常に僕との戦闘が難しくなったと言っていた。怪我も極端に減ったし『回復系』もあまり使っていない。だから最近は『身体強化』を再現できないかと四苦八苦しているところだ。

 回復魔法をさらに研究した結果、欠損した部位すらも治せる、治癒魔法が再現可能だということを発見した。回復魔法は魔力を活性化させて免疫能力の向上やエネルギーの消費を最小化させることが主体だった。これじゃあ肉体は治せない。しかし体内の魔力を高密度化したあと変異させることで、その影響を受けて細胞の突然変異と異常増殖を誘発し、ぐにゅぐにゅっと生やすことができるのだ。まぁ今までヒトで試したことはないが、マウス――のような生物での実験は成功している。ヒトでも可能だろう。

 何が言いたいかって、この世界に存在しない治癒魔法の創作に成功したということだ。要するに魔法の創作は可能なのだ。だから身体強化を試しているのだが、中々難しい。単に上昇させることはできたのだが、この前それで肉離れを起こして悶えた恐怖が忘れられない。筋肉を活性化させ、脳のストッパーを外せばできる、という仮説は立てているのだが……わからん。


 総合して言おう、また行き詰まっている。

 

 もう決まっている。残っていることと言えば、神秘系。最も情報量が少なく、最も難易度が高そうで放置していたものだ。しかしこの際仕方あるまい。新境地を開こうではないか。

 すっかりくたびれた革の装丁。僕の下にやって来たとき既にボロボロだったが、さらに拍車がかかった。前世はこうなればもう買い替えていたが、この世界ではこんなになってもまだ価値があるんだよなぁ。殺傷系に関するページはシミや損傷が酷いが、神秘系のページは後から加えたかのように紙が綺麗だ。需要が低いのだろうか。筆者がかわいそうだ、僕がしっかり読んであげるからね。

 神秘系というのは、長らく神や精霊といった類の存在が起こす御業だとか考えられていたものを再現した魔術で、転移や召喚と言ったものが主だ。と書かれている。もしかすると研究したら異世界召喚魔術とか作れるかもしれない。あぁ、後世の日本人に僕は希望を与えたい……無理だろうけど。

 図解をパッと見たが、これは今までと勝手が違う。魔法陣の概形も違うし、構築式句も全くの別物だ。魔術の中で付与や殺傷系を主言語とするならこっちは民族語だ。それも日本語のなまりとかそう言うレベルではなく、津軽語と沖縄語でしりとりするくらい壊滅的状況である。よく思い出せたな、わけわからんけど。

 転移魔法陣があるということは、この世界の移動や輸送は転移が主流なのだろうか。だとしたら魔力はどうやってまかなっているのだろか。魔力を溜めて置ける魔石とかあるのかな。森の外に出ればわかるだろうか。でも……あぁ、あと五年は一緒に暮らしたいな。親離れは親孝行してからがいい。

 脱線した。


―――ふむふむなるほど、恐ろしく面倒臭い。

 まず転移だが、テレポートのように物体を『A地点からB地点まで送る』わけではないようだ。原理的には、一対の魔法陣で『空間をくっつける』ものである。初級魔法陣でじゃがりもを実験体に50回ほど試行した結果、この結論に至った。これでも底が見えない僕の魔力ってどれくらいあるんだろうか。

 しかも、転移には多少ながらもタイムラグ――つまりは、どちらの魔法陣上にも存在しない時間がある。この間に魔力供給を切ればどうなるか。簡単だ、なくなる。何処へ消えるかは分からないが、対の魔法陣上に現れないのだからそうとしか言いようがない。

 さらに加えて、対の魔法陣には、魔法陣の位置関係を記さないといけないのだ。それがズレると正常に機能してくれないため調節が重要となる。戦闘でこれをまともに(・・・・)使おうとするなら隠蔽と誘導必須となるが、そんな簡単にできる事じゃない。

 だから僕は、自分の才能が恐ろしいと思う。僕はもしかしたら天才かもしれない。

 まず一つとして、体の要所を蔽うように魔法陣を描き、もう一対を手に描く。例えば僕の心臓を突き刺そうとする。刺さる直前に魔法陣を起動させれば僕の心臓に剣は届かない訳だ。そして手に描いた魔法陣を定位置、そうだな、腕を前に伸ばし切った位置あたりに設定しておいたとすれば、手から刃が飛び出すわけだ。多少のタイムラグは生まれるが、短距離で処理が少ないほどラグは小さい。結構有効になるだろう。これならば位置の調節も容易だ。

 第二に、あえて正常に機能させない。転移魔法陣は片方だけでも何倍もの魔力を消費すれば無理矢理起動させることができるのだ。勿論まともに転移できる訳なんてない。そう、それが狙いなのである。理論上、どんな名剣でも、鋼の肉体でも、簡単にパッツンできるのだ。半分侵入した状態で魔力供給を切ってやれば。少なくともじゃがりもではそれができた。だから転移魔法はもしかしたら、最強の反撃魔法なのかもしれない。

 まぁそれ以外にも武器庫とかできると思ったが、どこぞの英雄みたな規模は望めそうにないため諦めた。夢は持っても現実はみているのである。

 初級転移魔術だけで十分戦力になるという結論に至ったが、それでも彼女に効果的かどうかは分からない。召喚のほうもしっかりと研究しておくべきだろう。これは同時並行だな。

 ひとまずは案を具現化してみますかね。




 半年後。

「まぁ、やっぱり負けますわなぁ……」

 今日も今日とて、僕の刃は届かなかった。届いたらそりゃそれで困るけど、手加減している訳ではない。というかもう届かないってわかっているから全力で殺しにかかっている。 

 転移と召喚の研究は予想以上に困難を極めた。なにせ手がかりとなる情報がただでさえ少ない。それに、研究の方法だって我流だ、正しい結果が得られているかなんてわからない。それでも進んでいない訳では無かった。そう、転移魔法陣を使った武器破壊も、魔法防御も結局何一つ通用しなかったが、進んではいるのだ。

 例えばそう、転移魔法陣を瞬時に描く技術を編み出した。一秒かからない。刻む、と言った方がいいか。特殊な形をしているからこそできた方法だ。靴のカウンター部分に凹凸をつけ、打ち付けるだけでいい。方向を細かく指定したかったら一秒かかってしまうが、それが無くても飛べるように作ってあるのがこの魔法陣の強みだ。そしてキャパシティを気にする必要がない、

 ランダム転移という本来危険な魔法陣を、あえて本当は必要なプロセスをカットすることで効力を限定し、どんな姿勢で出現するかは分からないものの対の魔法陣へ跳ぶことができるようにしたのだ。副産物として魔法陣の縮小化に成功している。ただし、これは無理矢理発動させることができない。それに加えて対の魔法陣をしっかり管理しないと、どことどこが対応しているかがわからなくなる。なにせ無限に作ることが可能なうえに、その全てがリンクしてしまうのだから。使ったらしっかり消さなければならない。

 打ち付けた場所を核として、半径二メートルの無抵抗な物を丸ごと転移させる。右足で起点、左足で着点という一方通行の関係にあるのだが、双方向にすると魔法陣が現状から二倍近く大きくなってしまうため、無理だと判断して今に落ち着いている。これは結構役に立ったが、二十回くらいやったらもう対応された。

 召喚系も一応進んでいる。まぁ、イメージと大きく違ったのだが。

 前世でのイメージでは、魔法陣を描いて「我が求めに応じ顕現せよ!」みたいなことをやれば、どぱーんと世界のどこかにいる何かを使役することができる感じだ。しかしこの世界はでは召喚ができない。いや、ちょっと違うな。この世界では、召喚魔術は召喚ではない(・・・・・・)のだ。確かに、前世のイメージ通りにやろうと思えばできる。上級魔法陣が実際そうだった。しかしその魔法陣をよくみてみれば、転移魔法陣の要素が入っているというからくりで、言い方としては使役魔術というのがしっくりくる。

 実験が難航している理由は、召喚魔術の媒介となる物が存在しないことだ。そして対象も。

 使役の基本はタイマンだ。使役対象を前にして、どんな方法でもいいから抗力を失わせる。そして魔法陣で拘束し使役する。魔法陣は自分の血と相手の血を混ぜて描くらしい。一度発動すると、陣に込められた魔力が消滅するまで効力が続くそうだ。刻まれた方が下僕で、刻まれなった方が主となるようで、いくつか誓約を設けられるらしい。

 相手の体に魔法陣を刻むためによく使われるのがスライムの体液らしい。血液と混ぜて塗り込み、五分ほど放置すると血液ごと体に染み込むようだ。火傷痕のように身体に刻まれ、そう簡単には逃れられなくなる。スライム液を取り出したかったら、肉ごと抉るしかないようだ。それは嫌だよな。

 と、いうわけで本当に効くかはわからないけど、使役に対抗するための術を研究している。まぁ現状で、体内にスライム液が入らないようにする程度しかできていないのだけれど。まぁそれすら当のスライムに遭遇したことがないから有効かわからないのだが。ハイ、本当は一歩も進んでいない。


 そして魔法陣を研究していて気付いたのだが、新たな生命体を作れるかもしれない。いうなれば魔力生命体というやつだ。

 見た目は何だっていいい。ヘビだってフクロウだってヒトだって形作ることは容易だ。しかもわざわざ精密に作る必要なんてない。メイドが欲しいのならば内側(・・)が何であれ人型にしてある程度の知性を与えればいい。その知性と言うのが、みんな大好きAIちゃんにお任せすればいいわけだ。学習させることは難しくないはず。だって人型にしてしまえば、あとは人間を育てるのとほとんど変わりない。まぁ、一番の問題はそのAIをどうやって作るか、なのだが……そこでスライム君の登場だ。

 スライム溶液を使って魔法陣を刻むのが一般的。ならそのスライムにはどうやって魔法陣を刻んでやろうか、と考えた。数々の情報を統合すると、魔法陣は必要なさそうなのだ。スライム自体は一般的に意志の薄い個体のようで、そもそも抵抗力がない。動物で表すと脳と肝臓のような役割をもっている球核があるのだが、どうやらスライムはその核から魔力やら体を動かす命令やらを受けているらしい。つまり、その核の魔力パターンを解析できれば土台が得られるわけだ。

 核から命令を受ける、ということは核には『命令』のストックがある訳だ。パターン系ゲームでいうところの『こうげき・ぼうぎょ・にげる』みたいな選択肢ともいう。選択肢を保持できるということ、それは記憶していると考えて変わりないだろう。何が言いたいかってAIの基礎がもう出来上がっている訳だ。その核に情報を与え続け記憶させればヒトの知性に近づいていく。

 といっても、この方法だとAの命令をうけBという行動を起こすパターン人形しかできないけど。まぁ僕はそれで十分なのだ。戦闘人形よりも単純作業を行う生活メイドでじゅうぶん。多くは望まない。

 召喚は仮説建てで終わっている。だってスライムいないんだもん。あぁスライム湧かないかなぁ、もっと研究したいなぁ……森に出たいなぁ。

 わが家の周辺には結界が張ってあり、魔物は寄り付いてこないらしい。魔法陣がどこにも見当たらないのにどうやっているのかと訊いたら「元からそういう場所で、だから家を建てた」という謎解答を頂いた。何でも世界には、解明不能な不思議結界が張ってある場所がたっくさんあるらしい。だからこうやって個人が一ヶ所くらい占領していても何ら問題ないそうだ。

 しかし現状、僕にとっては不都合である。正直人相手の戦いだけではなく、魔物との戦闘経験も積みたいところだ。今度お願いしてみようかな……私を倒してからにしろとか言われそう。

 

 約半年後。

 僕は彼女を上乗りで封じ、首の薄皮に切れ込みを入れていた。四方上空に重力結界を張り、上にいる僕が圧倒的有利な状況。それに彼女は今無手だ、反撃を試みた瞬間に首を掻っ切れる。要するに、詰ませた。

「……レイの勝ち」

「いいや母さんの負けです。言い逃れは許しません」

「……だめ?」

「だめ」

 半年間僕は今まで以上に頑張ったのだ。結界の外にある未知を求める一心で彼女に立ち向かい、彼女が負けたら外に出て良いというちょっと捻くれた約束を結んだ。まぁその時点で最後に狡い言い逃れをされる予感はしていた。しかし僕を子供だと侮ったな、もうアラサーじゃい。性根から捻くれた僕にとって、こんなの簡単にお見通しである。

「いいよね、結界の外に出ても。言われなくも勝手に出るから、何も知らない僕が森の外に出て迷って二度と会えなくなっても知らないからね」

「それは困る。わかった、わかったから、許可するから。お願いだからいなくならないであげて……」

「いよっし」 

 これで何の憂いもなく外に出られる。

 実力は彼女と五分五分。一般平均レベルには達したと考えていいだろう。といってもまだ対人戦闘しか経験していないから、勝手が違うかもしれないけれど。

 約束は取り付けたし、研究もこれで大きく進めることができるだろう。ただ、問題がある。僕にはまともな武器・防具が唯の一つもないのだ。アクシデントがどこに隠れているかわからない外界だ、備えておきたい。

「そろそろ解いてくれない?」

「……じゃあ、一つお願い。武器と防具が欲しい」

「冗談?」

「まさか。まぁ、最低でも得物は欲しいかな。長いのと、短いの別で」

 それに、滅多に引きつらない彼女の頬が引きつった。そんなに無茶だっただろうか。それでも渋々か、頷き了承してくれたので解放する。

「負けた……私が、負けた……」

 あ、なんだかすごいダメージを受けている。子供に負けたら親の威厳も何もなくなる、とか考えているのだろうか。大丈夫ですよ母さん、威厳とか期待していないので。

 いつまでたっても寝転んでいる彼女は放っておいて片手間に土地整備を行う。後ろから悲鳴が聞こえたが気にしないでおこう。あんな間抜けな悲鳴、それこそ威厳なんてないな。

 今日の戦闘は短期決戦だったが、損害は過去最大級だ。土地の変形は土魔術のせいででっこんぼっこん。それはまだどうにでもなるが、追い詰められた彼女が斬撃を飛ばした(初見)せいで木々がズタズタにされている。これは戻せない。何なら所々斬り込まれた僕の服も魔法では戻せない。針と糸と布があればどうにかつぎはぎできるのだが、残念ながらうちにはない。

「いつも、してるの? 魔力は?」

「余裕だよこれくらい」

 音もなく忍び寄らないでくださいマジでヒヤッとしますから。慣れてはいるのだけれども、毎度怖いことには変わりない。

「そ、そぅ。じゃあ、森へは次行こう……じゃあね」

「うん」 

 何故だかよてよてと、うろたえている様子だったが、大丈夫だろうか。強がりじゃないといいが。  

 


 


 あの子は一体なんなのだろうか。

 十歳にも満たない子にあるまじき筋力、速度、攻撃の多彩さ。特に異常なのがその魔力量だ。魔石を用いている訳ではないのに常時魔術を行使し続けている。勇級か龍級レベルの威力を当たり前のように発揮しているのははっきり言って異常だ。

 それに最近では武術の面でも私を上回りつつある。得物が違うはずなのに私から動きをあたりまえのように盗むし、何なら応用して知らない型で戦ってくる。とても厄介。

 終いには今日、成すすべなく負けてしまった。奥儀まで使ったのに避けられた上に、魔術で再現されてしまった。あぁ、私はあの子にこれから何を教えろというのか。いや、元々何も教えていない。教えるのが苦手な私はただ戦って覚えさせるしかなかった。こてんぱんにして諦めさせるようお願いされたのに、あの子は決してくじけない。とても強情だ。

 それに今日は酷い冗談を聞いた。魔道具で全身を守っているのに、防具が欲しいなどと言い出したのだ。武器だってあの子なら木の枝でも足りるはずだ。はっきり言って、彼に見合う武器・防具を揃えるなど、聖遺物レベルになってしまう。そんなの私だっておいそれと用意できるものじゃない。

「あれ、今日はもう終わったの? あーもしかして、負けちゃった?」

「……フンっ」

 見透かしたような口ぶりが癇に障る。世界一弱いくせに、私のことを笑ってくる。昔からそうだ。何をやったって私に才能があったのに、何をしても勝てないくせに、こうやって楽観的に笑うのだ。

「そうむつけないの。そっかぁ、負けちゃったかぁ……約束は、守らなくちゃね」

「話して。あの子は、何」 

 うまく口にはできなかったけれど、あの子の異常性を全部話した。楽観的に笑うこの人は、もしかしたら何も知らない考え無しなのかもしれないと思った。

 だってまた、笑うのだ。

「あの子はレイ、私の可愛い子。危険? 異常? そうよ、でもそれが何か問題かしら? あの子は賢いわ、だれよりも賢い。あの子が何故紙とペンを大量に欲しがるかしってる? あの子は自力で研究しているのよ。あの年でもうそこいらの大人より優秀だわ。戦いに明け暮れるおバカさんたちに見倣ってほしいくらいよ。何も心配いらないわ。それに誰が教育していると思っているの? 私、貴女より人にモノを教えるのは得意なつもりよ。誰よりも弱い私は知っているもの、力の怖さを」

 何でもないように言う。自信たっぷり、根拠も説得力も何もかも欠けているのにそれが真実のように思えてしまう。あぁ、いつだってそうだ。運だけは良いから、たいていどうにでもしてしまう。

「あ、そうそう、四日後レイの誕生日なの。そのプレゼントとして武器と防具をあげるのはどう?」

「……揃えるのは、無理」

「聖遺物級装備なんていらないわよ。普通ので良いのよ、普通ので。だってあの子、多分自分のこと普通だと思っているもの」

「正気?」

「えぇ、正気で本気よ。あの子、賢いのに世間については何も知らないもの。貴女のこと、多分世界の一般水準くらいにしか見ていないと思うわよ。一般水準の【現人神】って一体なんの冗談かしらね」 

 その現人神と渡り合うあの子の存在は一体何の冗談なのか。訳が分からない。一度は『神域』への招待を受けた身、それを蹴ったから現人神と呼ばれるが、一応それだけの力は身に着けているはずなのだ。あぁ、あの子が常世に出てしまっては、一国が滅んでも可笑しくない。

「じゃあ、私そろそろ行くわ。処理済みの書類はいつもの場所に置いてあるわよ。今ちょっと食材が切れているから、買い出しに行かなきゃいけないの。それじゃあ、また今度ね」

「……またね、お姉ちゃん」

「ふふっ、いつ言われても心地いわね」

  




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