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僕らが分かれた理由

作者: はなはな
掲載日:2019/03/21

 朝起きたら女になっていた。



 ――いやいやいやいやまじで。

 しかも俺の頭がおかしんじゃなければ、これは俺の体じゃない。双子の姉だ。


 俺と姉・光希みつきは、双子のきょうだいだ。

 勿論双子と言っても男と女で、普通の姉弟以上には似ていない。

 体の異変に気付いてすぐ見た鏡に映っていたのは、その似ていない光希の顔だった。

 と言うか、ここはそもそも俺の部屋じゃない。光希のじゃんか。


「なん……何なんだよこれ……」


 呆然として俺は呟いたが、はっとして隣の部屋へ行こうとドアを開けた。

 だが俺が飛び出す前に、目的の人物がそこに立っていた。

 奴はいきなり開いたドアに驚いていたが、中から現れた俺の姿にもっと驚いたようだ。


「私……」

「俺だ……」


 お互い、真正面に『自分自身』を見つけてしまい、それ以上の言葉が出なかった。


※※※


 まずは現状確認だ。


「お前、光希でいいんだよな?」


 あれから何も言えずに二人、無言で光希の部屋に引っ込んだ。

 しっかりドアを閉めて、恐る恐る目の前の『みつき』に訊ねた。

 『俺』は小さく、だけど確かにうなづき、返す質問で俺に確認する。


「そっちも、一希かずき、なのね?」

「ああ」


 何とか俺も首肯した。

 しかし、女言葉を話す『俺』も、自分の口から聞こえてくる女声も全然そぐわなくてどうにも据わりが悪い。

 声だけが問題じゃないんだけどな。

 どうやら俺たち双子は、お互いの体が入れ替わったらしい。あるかそんなこと。だが現実だ。


「何なんだよ、ほんとに……」

「朝起きたらこんなことになってて……私も何が何だか……」


 光希も俺と同じ状況だったようだ。

 異変に気付いて、やはり俺を確認に来たんだろう。

 そして案の定、自分の部屋には『光希じぶん』がいたというわけだ。


 頭を抱えて現実逃避していたいがそうもいかない。

 今は朝の6時半、もうすぐ母さんが朝食を呼びに来るだろうし、もっと言えば登校時間が迫っている。二人いっぺんに風邪とか無理すぎるので、俺たちはこの異常事態のまま学校に行かなきゃいけないのだ。


「何で、とかどうやって、とか、色々あんけどさ。とりあえず、学校どうする?」

「学校……休む、とか?」

「二人で急に具合悪くするか? 昨日までぴんぴんしてたのに」

「じゃあ、このまま行くの?」

「っ……そりゃあ………」


 正面から言われて、「行かなきゃ」って思ってた俺も言葉に詰まる。

 両親に話したところで信じてもらえるとは思えない。子供たちのタチの悪いイタズラかと思われるのがオチだろう。

 俺が詰まった隙に、光希が重ねて聞いてきた。


「私たち、双子って言っても全然違うし、お互いの周りのことなんてよく知らないよ。それに……その、着替えとか、トイレとか……」

「あ」


 確かに仲のいい人間なんかは、入れ替わった俺たちをおかしいと思うかもしれない。

 それに着替えにトイレ――うっ、ガキの頃はともかく、今の光希の裸とか、さすがに……。

 ちょっと具体的に想像してしまい、俺も光希に劣らず顔が紅潮する。

 それを見た光希は赤い顔のまま俺を睨み、「何考えてんのよ」と軽く叩いてきた。


「って! 話振ってきたのそっちなのに……」

「余計なこと考えるからよ」

「でも実際、こうなってんだからその辺含めて肚決めるしかないじゃん。学校は行かなくてもトイレは行くぜ?」

「そ、そうだけど」


 光希は怯むが、こんな異常いつまでも続くわけがない。たぶん。いやきっとそう。

 だって俺は、高校生になって人生初彼女ができたばっかりなのだ。

 まだろくにデートもしてない。あんなこととかこんなこととか、これからが楽しい時なのだ。そんな時に女になりました、ええ、そうなんですかじゃ済まないのだ。

 まだ登校に消極的な光希を立たせ、着替えるよう促す。


「そんじゃ俺も制服、借りるよ」

「待って! 私が用意するから!」


 制服だけなんだから別にいいだろ、とか思ったが、光希は制服を用意してくれた。

 さて、着替えなければならない。


「あーーーー………………着替えていいかな?」

「~~~~~~やっぱりダメ! 目、瞑って! 私が着替えさせるから!」


 なぜかポカポカ殴られ、目を瞑らされた。

 俺の力で加減を間違えてるのか、地味に痛かった。




 最初は渋っていた光希だったが、やってみると予想と裏腹に俺そのものになりきっていた。

 双子なので俺たちは別のクラスで部活も違うし、光希も言った通り、普段の学校生活なんてお互いほとんど知らないはずだ。

 なのに光希は完璧な俺を演じていた。

 友達もクラスメイトも、両親さえ不審に思ってる様子はない。


 え、俺?

 光希の学校でのことなんて全ッ然分かんねから、おとなしくほとんど喋らず黙った地味キャラしてますよ?

 まあ光希に聞いた限り、何人かいる友達の聞き役してればいいってことだから、これでいいみたいだけど。実際俺もまだ変な目で見られてはいない。


 ところでここで重要な問題がある。

 ――そう、俺たちはまだ入れ替わったまま、一週間が過ぎようとしていた。


 全然戻んないじゃん! どうしてくれんだよ!

 いい加減、風呂も女の着替えもトイレも慣れちゃったよ!

 友姫ちゃん(俺の出来たて彼女)会いたいよ!


 と言うわけで、悶々としながらも俺は未だ光希として生活していた。

 そんな俺とは反対に、光希は何故か明るかった。

 元々別に陰キャとかではなかったが、何だろう……最近少し沈んでる感じだったのが、吹っ切れたように元気になっていた。

 俺の友達と楽しげに笑い合ってる様子は……うん、微妙に羨ましかった。その場所、俺だったのにな。

 まだ俺は、光希の友達と心から笑い合うなんて出来そうにない。


 その時も、特に興味もない女子同士の恋バナで盛り上がっていたようだったが、俺は顔だけは笑顔で話半分に聞き流していた。

 しかしそこで、突然一人の友人から話を振られて俺は頭を殴られるような衝撃を受けたのだった。


「ところでさ、光希の弟の一希君? 最近友姫ちゃんと別れたらしいじゃん。付き合いたてなのに急だったから、友姫ちゃんも訳分からないって泣いててさ、光希なんか聞いてない?」

「え!?」


 友姫ちゃんと別れた? 何それ!?


 俺の驚きに構わず、他の子達も話題に乗ってきた。


「あ、それあたしも聞いた! 一方的に一希君が振ったって話でしょ? イメージ狂ったなあ」

「ねえ。光希の前で言うことじゃないかもだけど。私も意外だったなあ。結構ラブラブな感じだったしー」


 一人のいい加減な聞きかじりではなく、確かなことらしい。

 え、てか嘘。何?

 俺、人生初彼女を、できて数週間で、自分でない姉によって終わらされたわけ? どういうこと?

 混乱する俺を、友人らは勝手に『双子の姉も預かり知らぬこと』と判断して、しばらく友姫ちゃんに同情したり多少一希おれを責めたりしてたようだが、俺には余り聞こえていなかった。


 何で?

 何でだ?

 光希、どういうことなんだよ……


※※※


 光希は特に部活に入っていない。

 いつもなら同じく帰宅部の友人らと遊んだりしてるが、俺はその日全ての誘いを断り家でじっと光希の帰りを待っていた。

 入れ替わった俺に代わり、光希はサッカー部に毎日出ていた。

 まあ万年弱小のゆるゆるサッカー部だけどな。それでもきちんと出席して、俺の居場所を守ってくれてた光希には、素直に感謝していた。昨日までは。

 だが今日の俺は、待つ時間に焦れてそのことさえ煩わしく感じていた。


「ただいまー」


 待ちに待った光希の帰宅だ。

 俺はたまらず玄関まで走っていった。


「光希!」

「……ただいま、光希(・・)。大きな声で言うなよ。母さんに聞こえるだろ」


 呆れたような光希の物言いに、俺は腹が立った。

 何だよ。最初は入れ替わりにおどおどして、人前に出るのも躊躇ってたくせに。

 それが学校に行ったら俺の居場所を俺からかっさらって、勝手に彼女と別れるなんて暴挙を仕出かして、『母さんに聞こえるだろ』?

 ふざけんな!


「お前、友姫ちゃんと別れたらしいな」

「……。ああ、そのこと」


 一瞬の間を置いて、すぐに光希はうなづいた。

 悪びれた様子が一切ないその態度に、俺は理性が切れて光希に詰め寄った。


「何が『ああ、そのこと』だよ! いくら俺の代わりをしてるって言っても、そんな勝手なことしていいわけないだろ!? 何でそんなことしたんだよ!?」

「――それ、本気で言ってる?」


 興奮する俺とは対極のように、光希はむしろ冷たい声で答えた。


「冷静に考えろよ。友達は仕方ないし、どうとでもなるけどさ。彼女はマズイだろ。俺に付き合えって? おかしいだろ。俺は好きでも何でもないんだから」

「ッ……でも、それは……」

「それは何? 何とか誤魔化して付き合って、それでこのまま戻らなかったら? ずっと彼女を騙し続けるの?」

「!!」


 こっちが怒ってるはずなのに、何故か責められるような言葉に俺はショックを受けた。


「お前は……このまま、戻らないって、思ってるのか……?」

「――」


 思わず漏れた俺の問いに、光希は答えなかった。

 俺から顔を逸らし、そのまま自室へ向かう。


「待てよ!」


 俺の制止も聞かずに光希は部屋に籠った。ドアを開けようとしても、鍵が掛けられていた。

 ドンドン扉を叩くが、ドアが開くことはなかった。

 『あんたたちケンカしてるのー? うるさいわよー』という母さんの声がして、俺は諦めて光希の部屋に入って行った。




 何がどうしてこうなっちまったんだろう。

 夕飯を告げる母さんに、食欲がないと言って俺も部屋に引き籠もった。勿論、光希の部屋だ。

 ベッドに寝転がって、改めて俺は考える。

 こんなことになるまで、俺たちはごく普通の高校生だった。

 きょうだい仲も、別に悪くなかった。

 それが突然のきょうだい入れ替わりなんて珍事が起こって。そして光希の豹変。

 嫌がってた事前の態度とは打って変わっての、俺そのものの言動。

 むしろ『俺』になってからの光希の方が、生き生きしていなかったか。

 さっきだって、大声出さなければ台所の母さんまで聞こえる心配はないのに、あくまで『俺』になりきったままだった。


 ――もしかして、光希はこの状態を望んでいるんじゃないか。


 いや、もっと言えば、この異変は、光希あいつが願ったことなんじゃないのか。


 グルグル思考の渦にはまった挙げ句、俺はそんな突飛な考えにまで至ってしまった。

 しかも最近の光希を思い起こすと不思議と違和感がないのが、恐い。


(男になりたかった? あいつってそういう奴だったか?)


 いくら中高生になって一緒に過ごすことが減ったと言っても、そこは家族で、しかも俺たちは双子なんだ。俺には光希がその手の人間とは思えなかった。


(それにもし、仮にそうだとしても、あいつが俺の――弟の人生奪うような、そんな酷いこと願うような、そんな奴じゃ、絶対にない)


 でもその確信はあるのに、『俺』になって快活に笑う光希の姿が頭から離れない。

 そして夕姫ちゃんとの勝手な別れは、光希が俺の人生を、自分の意志で上書き始めたような気がして。


 恐いの半分、疑問が半分、まだまだ回り続ける頭を突っ伏し、いつしか俺は眠っていた、




 夜中にふっと人の気配で目が覚めた。

 何時なのかは分からないが、家全体が静まり返っている様子から、もう父さんたちもとっくに寝ている時間だろう。


 ひた、ひた、と忍んでこちらに近づく人間は、光希だと直感した。

 こんな時間に何の用だろう。自分の部屋に、取り急ぎ何かいるものでも取りに来たのか。

 それとも、帰ってきた時のことでも話しに?


 そう思ったら、一気に目が冴えてしまった。

 下の父さんたちに気付かれないようにか、俺を驚かせないようにか、音を立てないようにゆっくり近づいてくる気配に、何だか俺はドキドキしてきた。

 やがてそいつはベッドまでたどり着いた。


「――一希」


 かすかに、聞き取れるかどうかギリギリの音量で囁かれた。やはり光希――今は『俺』の声だった。

 けれど話があって起こそうとした、という感じではない。

 どっちかって言うと起こす気はない、独り言みたいな囁きだった。

 一人で話し合いを期待してた俺は、あれ?と肩透かしを食らった気になった。


(じゃあ何の用――)


 光希の行動の意味が分からないまま寝たふりを続けていると、光希はおもむろにベッドに腰掛けて、そして。

 寝ている俺の髪を撫で上げ、そうっと頬に手を寄せた。


「!!」


 思わずパッチリ目を開けると、同じように目を見開いた光希の顔があった。

 反射的に光希は手を引き、わずかに体も俺から離れた。

 こうなってはもう俺も寝たふりは出来ないから、上半身だけ起こして光希に向き直った。


「一希……あなた、起きて……」

「えっと……」


 何の用で、とか、今のは、とか、何か聞かなきゃいけない。いけないのに、言葉としては何も出てこなかった。

 驚いて体を引く一瞬前に見た、あの光希の表情を見てしまったから。

 あれは、あの顔は。


 それを問うのは恐かった。答えを聞くのが。

 だって、俺は、光希は。


 俺が何も言えないでいるのをどう受け取ったのか、光希は何か諦めたような短いため息をふっとついた。

 そしてさっき驚いて引いた体を、逆に少し俺に近づくようにベッドの上に座り直した。

 少しうつむいてからこちらを見直した光希の瞳は、強く妖しい光が宿っていた。


「私、あなたに無断で夕姫ちゃんと別れたわ」

「あ、ああ……」

「帰ってきた時言ったことは本当。彼女とは付き合えない。彼女のことは、別に好きじゃない」


 当たり前だ、光希は女だ。同じ女の子の夕姫ちゃんを好きにはならない。だからそれでいい。それ以上、何もない。それでいい。

 さっきとは違って、俺は光希のそれ以上の言葉を望んでいなかった。

 けれど光希はそんな俺の願いを聞き入れなかった。


「でもそれだけじゃない。私は――私は、あの子とあなたに付き合ってほしくなかった。あの子でも、誰でも」

「光希、やめろ……」

「一希に、誰とも付き合ってほしくなかった。――私以外」

「っ」


 強く言い切り、光希は俺にさらに体を寄せてきた。近づいてきた分、俺は後ろに引いた。

 嫌だ、やめてくれ。

 何でそんなことを言うんだ。俺たち、生まれた時からずっと一緒にいたきょうだいじゃないか。

 無意識に体が震え、小刻みにフルフルと首を振っていた。いやいやをするように。

 怯える俺に頓着せず、遂に光希は俺の腕を掴んだ。


「一希が夕姫ちゃんと付き合い始めたって聞いた時、絶望したわ。とうとうこの日が、一希が私から離れて誰かと行ってしまう時が来たって」

「そんな、そんなの、」

「ええ、当たり前よね。でも私は死ぬほど嫌だった。だからきっと願ってしまったのね。一希を引き止めるには、一希にならなくちゃいけない、――一希になりたいって」

「光希、お前が、やっぱり……」

「まさか本当にこんなことになるなんて思わなかったけどね」


 くすりと、場違いに光希は笑った。


「神様が私の願いを聞き届けてくれた――今はそんなふうに思っているわ。だって一希の体になったら」


 一旦言葉を切って、掴んだ腕と一緒にぐいっと引き寄せられた。

 不意のことに頭が追いつかなかったが、慌ててまた逃げようとした。けど光希に抱きすくめられたまま動けなかった。

 女の体は、思った以上に不自由で、男の『俺』の力に抗えなかった。

 それを見透かしたように光希は言葉を続けた。


「こうして、力尽くであなたを捕まえられる」

「光希!」

「大声出さないで。母さんたちが起きるわ」

「ッ――」


 言われて思わず黙ってしまうが、それでも俺は抜け出そうともがいた。しかしそれは逆に俺のバランスを崩させ、ベッドに倒れ込んで光希に覆い被さられることになった。

 あらぬ体勢に俺は恐怖を覚えた。


 だが光希は、数秒、激しく俺を見つめてからふっと力無く笑った。


「でも、そうね。こんなことしても無駄よね。無理やり襲っても一希の心は手に入らない。一希の気持ちを無視して手に入るのが、私自身の体だけって馬鹿みたいじゃない?」

「……」


 俺から視線を外さないまま、光希は改めて告げた。


「一希。私は、あなたが好き。女として、ずっと、あなたを想ってた。中学に入って、段々一緒にいられなくなっても、ずっと一希を見てた。一希だけを見てた。――一希の真似、うまくできてたでしょう? 私、一希のこと、誰よりも見てきたもの」

「光希……」


 さっきまであれだけ拒否していた光希の告白を、俺はストンと受け入れていた。

 光希は十分悩んで、苦しんで、ついつい願って――無理にでも叶うものを、それでもやはり俺の気持ちを想って正面から告げてくれたのだ。

 それを俺は、『きょうだいなのに無理』という言葉で拒絶して良いわけがなかった。

 光希の想いに応えるには、俺自身の言葉でするべきだった。


「光希」

「……」

「俺は、お前の気持ちに応えられない」

「――きょうだいだから?」


 悲しげに、ある種縋るように問う光希に、俺ははっきりと否定する。


「違う。光希が俺のこと想ってくれるのは嬉しい。俺も光希のことは、家族として大事に想ってる。でも、異性として――好きな気持ちは、ない」

「っ――」

「ごめん」


 しばらく、光希は何か堪えるように両目を閉じ、唇を噛み締めた。

 やがて体を起こし、窓の外の月を見ながらぽつりと言った。


「ありがとう」


 光希はしばらくそのまま月を見ていた。

 俺からはその顔を窺い知れなかった。

 そして静かに部屋を出て行った。


※※※


 明けて翌朝、何事もなかったかのように俺たちは元に戻った。

 これまでのことは夢だったのかと思うくらいあっけなく、俺は俺の体に戻っていたのだ。

 ……まあ、学校に行ったら友姫ちゃんと別れた現実が夢じゃなかったってのしかかってきたけどな。

 しかも俺から一方的に酷い振り方したってオマケ付き。

 お陰で俺は話を聞いた女子から総スカン、全ての事情は話せないから、現在はありとあらゆる言い訳かましてひたすら友姫ちゃんに謝り倒す日々を重ねている。  


 光希とはしばらくの間、さすがに気まずかった。

 光希の方でも、意識的に顔を合わせないようにしていたんだと思う。

 でも何日か過ぎた朝、洗面所で鉢合わせた光希は、かすかに微笑みながら声を掛けてきた。


「……おはよう」

「あ、ああ、おはよう」


 それだけ言うと、光希はそそくさと去っていった。

 そこへ母さんがひょい、と顔を出して、


「何だ。あんたたち、ちょっとケンカしてたみたいだけど、仲直りしたの?」

「……まあ、そんなとこかな」


 あんなとんでもないことが何故起こったのか、どうやってなったのか、そんなことは分からない。

 でもそれが光希の願いで起こったんだったら、きっと元に戻ったのも光希が願ったんだろう。

 光希の本当の願いが叶ったのか分からない。俺にはあれ以上のことはできなかったけど、あれが正しい対処だったのかどうかも分からない。

 でも光希が戻ることを願ってくれて、今日、光希が笑ってくれたのが、俺は心の底から嬉しかった。


 

※光希視点の短編書いてました。

※可哀想だから友姫ちゃん視点の救済短編書きました。

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