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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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12月25日。

道場にクリスマスの飾り付け。何となく罰当たりのような。

クリスマスなんて軟弱なっ。とか言わないんですね。と聞くと

「子供が来てくれるなら何だって利用する。」

と現実的な回答をいただいた。

海に連れて行ったりクリスマスのイベントをしたり、春に花見もあったりする。

午後、子供達がプレゼントを持って現れる。

桃ちゃんも柚ちゃんと弟、そして楓ちゃんを引き連れてやって来た。

(楓ちゃんが道場通いを決意したのは「キズナを守りたいから」なのは泣ける話だ)

子供達は500円以内でそれぞれがプレゼントを用意して小さなツリーの下に置いて番号札を貼る。

くじを作ってそれを引かせプレゼントを受け取る。

橘結と南室綴が用意したプレゼントに加え、僕と宮田杏も用意したので大いに盛り上がった。

先ずは小室絢からケーキが配られ

子供達が何人かで歌ったりモノマネショーがあったり、漫才があったり

少々照れくさそうに皆の前で披露する子供達を微笑ましくも羨ましく思って眺めた。

「オマエも一寸打って来いよ。」

どっちだ。蕎麦か落語か。とにかく無理です。


12月26日。

祖母から言われたように、神社の大掃除の手伝い。

南室綴、小室絢は当然とて、宮田杏も桃ちゃんを連れて手伝わせていた。

12月27日。

誰かに会う予定を入れず朝から家の掃除。

午後になると弟妹の相手を手伝えと宮田家にお邪魔した。

「こんなに連日会いに来るって事はそういう仲って事でいいんだな?」

と相変わらずのように桃ちゃんに囃し立てられるが慣れた。

この日と翌日の橘家、小室家、南室家は、総出で新年の準備に明け暮れるらしい。

12月28日。

三原先生の家の大掃除を宮田杏と朝から手伝った。

その日の夜に両親が帰ってくるので片付けたかったそうだ。

1人暮らしの筈なのにどうして散らかるのか不思議だ。

午前中には終わったが、結局2人で夕方まで居座り、

冬休み殆ど毎日会っている事を揄われる。

言わなくてもいいのに「イブにキズナとチューしたぞ。」と自慢を始めて

他の2人にも奪われた事を暴露、

案の定「何で姉の私には出来ないんだよっ」と怒られる。

12月29日。

古くからの習わしに従って、僕はこの日朝から何もしない事にしていた。

明日は朝から小室家でお節作りの手伝いをする。

31日から新年の3日間は神社での作務を手伝う事になっている。

冬休みからしばらくバタバタとしていたので今日くらいはゆっくりしよう。

携帯が鳴ったのはお昼の用意をしていた時だった。

知らない番号だ。

はい。どちらさまでしょう。

「あ、キズナ?もうすぐ駅に着くから迎えに来てくれる?」

サーラ?駅って何。

迎えるとサーラは1人でやって来た。

どうしたの突然。

「日本のオショウガツ?を見に来たのよ。」

1人で?お付の人とかは?

「いないわよ。今回は1人よ。エリクもいないわ。」

ええっ?大丈夫なの?お姫さまでしょ。

「大丈夫よ。それよりしばらく泊めてもらうわよ。」

はい?

大きなトランクを転がし、イロイロ心配しながら家に向かった。

泊めるのは構わない。でも泊まる事に抵抗は無いのだろうか。

祖父母は出掛けててしばらく留守なんだけど。

「そうなの。じゃあキズナの料理食べられるのね?」

まあそうだけど。あれ?気にならないのか?

途中買い物をしながら、年末年始の予定を話した。

明日30日は小室さんの家に行ってお節料理作りの手伝いをする。

31日は午後から神社で年越しの準備。

1日と2日も神社でお手伝いして3日の午後に新年会。

「シンネンカイ?」

縁のある人が今年もよろしくって挨拶をしに集まるんだよ。

ニューイヤーパーティー。

「その時にお節料理食べられるの?」

えーっとお節は1日から食べられるよ。

お正月は忙しいから年末に作りおく。

で日本的なのはその料理一つ一つに意味が込められているから。

明日そのお節作りを手伝う事になっているからその時説明するよ。

「うん。お願い。」

夕食には以前楓ちゃんにそうしたようにオムライスを振る舞った。

今回は巻ではなく、オムレツを作ってチキンライスの上に乗せ

食べる前にナイフで開いて。と、トロトロのオムライスが出来上がる。

「何でアナタこんな事できるのよ。」と笑われた。

その夜はお互いのクリスマスでの過ごし方を語り合い文化の違いを改めて実感していた。

「日本もそうだけど海外で何がイヤってサウナが少ない事よ。」

「フィンランド人はサウナで産まれるって言葉があるくらいなのに。」

そんなとりとめも無い話をしていると、1人での長旅で疲れたのだろう

彼女はすぐに眠ってしまった。

僕はこっそり彼女の寝顔を撮ってから別々の布団で眠った。

翌朝先に目覚めたのはサーラだった。彼女は台所にいた。

結構な散らかしようだ。

「ちょ、ちよっと待ってて。今朝食の用意をしているから。」

普段料理なんてしない彼女が作れるのはサンドウィッチとワッフルくらいらしい。

ワッフルメイカーが見当たらないのでスクランブルエッグで1つ

ハムとチーズで1つ。それぞれサンドウィッチを作っている。

あの夏の日の朝食だ。

あの時も彼女はこうやって作ってくれたのだろうか。

僕も手伝うよ。

「いい。私がするから。キズナは座ってなさい。」

せめてスープくらい作らせてよ。

「そうね。それくらいならイイわ。」

端から見ているととても危なっかしくパンを切る。

人参と玉ねぎを茹で、インスタントのオニオンスープに加える。

まだ悪戦苦闘していたので大根を千切りにして水菜を切ってサラダを作る。

折角だからと和風のドレッシングにして居間に運んだ。

彼女もようやく完成させて全てを運び終わると僕の手際に感心していた。

「私普段料理なんてしないから。」

でもちゃんと出来たじゃない。

日本式のお祈り、両手を合わせて「イタダキマス」と言って朝食。

うん。美味しいよ。

「えへへ。」

ぐっ。ダメだろコレ。桃ちゃんの言い様では無いが彼女の笑顔は凶器だ。

胸が抉られる。



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