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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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補完 4-3 完結

三原先生が事あるごとに僕を撫でるのは、もしかしたら予防措置的な行為?

「違うよ?」

そこは嘘でも「そうだよ。」て言えば好感度上がったのに。

「だって違うもん。」

「お前をこうして撫でてるのはな、」

彼女はまたいつものように引き寄せて頭を撫でる。

「私の愛を、お前に注ぐためだよ。」

多分、いやきっとそれが本心なのだろう。

ただ男女の愛ではなく、それは家族愛に近い。

僕の母と彼女が姉妹であったように、僕と彼女も姉弟であろうと。

「お前んちペットいないんだっけ?」

何です突然。

「ペットってな、癒しの効果があるんだぞ。」

ああ聞いた事あります。アニマルセラピーとかアニマルアシステッドセラピーですよね。

実際、1人でいる頃ペットに興味を持った事もあったから。

「何で飼わなかったん?」

えーっと、小動物って寿命短いでしょ?ハムスターとか。

「まあな。」

それに犬とか猫って、僕が学校に行っている間ずっと1人になっちゃうでしょ。

「ああ、なるぼとなー。お前らしいや。」

そう言えば魔女には猫が傍にいるってのはただの都市伝説?

「都市伝説って。いや居たよ。もう死んじゃったけど。」

すみません。

「ううん。大往生だったからなー。お前ら皆知ってるよな。」

「覚えてるよー。黒猫のノト。」

「かわいかったよねー。」

「名前まで憶えてたんだ。」

「石川さんから貰ったからって言ってたじゃない。」

そんな決め方。

「ペットの事聞いたのもな、私がソレで随分助けられたからなんだよ。」

「まあでもお前の考え方だとペットはダメだな。むしろ負担になる。」

でしょうね。人の家の犬や猫を構うくらいでいいんですよ。

「言ってたら自分で欲しくなったな。また猫と暮らすかなー。」

大丈夫なんですか?

「大丈夫って何だ。失礼な事言おうとしてるなお前。」

ええ、まあ。

何か宮田さんあたり構ってるのが丁度良さそう。

「にゃにおうっ。」

「え。何で知ってんだお前。宮田から何か聞いたのか?」

はい?

「小さい頃の宮田殆ど私のペットだったんだぞ。」

そうなんですか?

「ペットじゃねぇっ。」

「小さい頃はそりゃまあ可愛かったんだから。すぐ手が付けられなくなって捨てたけど。」

ダメだろこの人。

「アレが本物の猫だったらきっと心が折れてたね。」

「夜中に遊ぼうぜって頭に噛み付いてきたりしたぞきっと。」

そんな猫いないでしょ。え?いるの?

「そう言えばお前ら誰も犬猫飼って無いよな。」

皆イロイロと忙しかったり家の事情があるから。

でも近所では犬を飼っている家は多い。田舎で一件家が多いからなのだろう。

地域猫なのか外猫も転校前より見掛ける機会は多い。

「あーーっもう。今度協会行って猫貰ってこよ。」

協会?

「魔女の組合だよ。黒猫斡旋してくれるから。」

やっぱり黒猫なんだ。

「暗闇でもその瞳で世界を照らしてくれる。て意味があるんだよ。魔女にはとても縁起がいいんだ。」

「でも世間じゃ結構縁起悪い扱いされてるよねー。」

横切られたらダメとか潜られたらダメとか。

「昔はそうでも無かったらしいわ。福猫って言われてたんでしょ?」

そうそう、黒い招き猫って魔除けの意味があるんだよね。

「魔女が飼っちゃダメだろ。」

「そんな事言って知らないな?黒猫は恋の病にも効くんだぞ。」

「恋の病て。」

「もう発想が女子中学生よね。」

またそんな事言ったら

「拗らせてんのはお前らだろうがよっ。」

ほら怒った。


橘結。

彼女は、僕に救われ続けていた。と言ってくれた。

目の前に居なくても、ずっとトモダチでいてくれていると信じてくれた。

目の前に居なかったからこそ、願い続けられていたのだろう。

だからこそ、彼女は僕を救ってくれる。無条件に何の見返りも無く僕を助けてくれる。

ただそれがいつまでも彼女の枷になってはいけない。自由を奪う鎖であってはならない。

僕からすれば、「幻滅した」と直接言われないだけで幸せなのだから。

いつまでも僕なんかに時間を割く義理も必要も無い。

多分、この日が境なのだと思う。

橘さんは意識的に僕を観察するようになった。

様子、と言うか顔色と言うかを伺うようにそうしていた。

ただじっと見詰められると、照れる。

翌日、皆とお昼を食べている際にあまりにじっと見詰めるので目を逸らしてしまった。

「キズナ君。大丈夫?」

だ、だ、大丈夫です。

あの、そのじっと見られて、ちょっとその、恥ずかしいだけなので。

「オラァ。」

いだっ。何だそのスタープラチナ。

「お前姫の慈悲をそんなイヤラシイ目で」

ち、違いますよ。見詰められたら恥ずかしいってだけですよ。

小室さんから同じ事されたって照れますよ。

「なっ。それ今関係ねぇだろっ。」

「そうね関係無いわよね。」

「そうだそうだ。それに姫ポンさっきからキズナをガン見し過ぎ。」

「そうよ。ソレ見てるコッチも恥ずかしいっての。」

「な、な、なによ。私キズナ君に何かあったらって思って。」

ありがとう。でも何かあったら自分から言いますから。

「それじゃダメよ。」

ダメって何ですか。

「そうね、ダメよね。だからこうしましょ。」

どうするって?

「みんなで見ましょう。」

「賛成っ」

「意義なーし。」

いやだからその、食事中は手元見ないと。

いやいやいやいやそんな、ヤメテ。何か怖い。

「ずっと見張っててやる。」

怖いってもうっ。

「ずっと、アナタだけを見ていたい。」

意味変わっちゃったよ。それもちょっと怖いよ。

言った南室さんが吹き出して、皆お腹を抱えて笑い出した。

「はぁはぁ、じゃあチラチラ見てあげる。」

皆がチラッ、チラッと僕を見る。

もうヤメテ。


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