補完 1-4
2人は屋根から路地に降りる。
そして互いに向けられた殺意。
2人は無防備のまま近寄り、互いの間合いに入った瞬間、互いが右ストレート。2人はギリギリで躱す。
次の反応はエリク。彼は左足を小さくステップ、右ハイキック。
ルーはしゃがみ躱すと同時にエリクの左足を払おうとする。
エリクは右ハイの勢いをそのまま利用し跳び、半回転しながらソバットで低くなったルーの頭を刈る。
ルーはそのままの姿勢で横に跳ねて避ける。
2人は離れた間合いで体制を戻し、牙を剥く。
空気が揺れる。その家も、周囲の家の窓までヒビ割れる。
少女は恐怖に飲み込まれ、意識を失った。
「さて、仕上げをしようか。」
2人は少女を気絶させた殺意を纏ったまま、ドアを蹴り開けた。
慌て現れた少女の父親に
「お前の娘を浚いに来た。」
「深く暗い世界。今日も明日も無い世界。」
「陽を恐れ飢えと乾きは永遠に満たされる事無く闇に彷徨う。」
「彼女の悪夢こそ我が血肉。」
「我々はお前の悪夢だ。」
彼は目を覚ます。2人はいない。
夢だったのかと疑いたくなるような現実。
彼は娘の元へ走る。彼女が部屋の窓際で倒れている。
2人は、その窓の外から殺意を込めて彼を睨む。
それでも彼は2人の前に立ちはだかり言った。
「この子を、娘を連れて行かせたりしない。」と。
膝は震え、声は裏返り、涙も零れていた。
だが父親は、決して少女の前から動かなかった。
その日の夕方、少女は父親と一緒に弟と母親を迎えに行った。
彼女は母親に叱られ、抱きしめられた。
そして夜。少女は家を出る。
「心配してくれたトモダチがいるの。だから謝っておきたい。」
「大丈夫。すぐにちゃんと帰ってくるから。」
少女は2人に連絡を取る。
近くの公園に居るから会って欲しい。御礼を言いたい。連れて行ってとは言わないから。
少女がその公園に走り着くと、既に2人は最初に会った時と同じ笑顔で待っていた。
少女は彼ら2人のケンカがお芝居だと判ってくれた。
殴り合いまでするつもりは無かったんだけど、つい。と2人は笑った。
「このヴァンパイア怖いねー。ユーのパパをキョウカツしてたよ。」
「この先2人の愛を疑ったらボクに連絡をくれ。その時は何度だって目を覚まさせる。」
「大丈夫。もう疑ったりしないから。」
「それに、貴方達だっていつか家族の元に帰るのでしょ?」
「そうだね。そうだ。ボク達が帰ってしまったら、ボク達のトモダチに会いに行くといい」
「彼は人の子だけど、きっとキミのトモダチになれる。」
「人の子?」
「そうよ人の子よ。とてもワンダーな人の子ね。そしてそのフレンズもとてもとてもワンダフルよ。」
「キャットウーマンでしょ、スノークイーンでしょ、スパイダーガールでしょ。」
「それに神の子、えーっとミコ?とか言ったかな。」
「それからこのバンパイヤと狼男でガンス。」
「どうしてただの人の子が私達のような者と?」
「ミーも我ながら(ホ)ワイね。」
「ボク達も気付いたらトモダチになっていたんだよ。」
殆ど脅迫のような事を言っておいて何を。
「素敵な人なんでしょうね。」
「ステキ、ではアリマセンねー。」
「そうだね。ステキではないかな。」
「え?」
「イイ奴?」
「そう。イイ奴。」
「ウーン。言葉にするのは難しいナ。」
「キミもそうだったように、人はボク達の本性を知ると恐れる。」
「それから拒絶するか、服従するかを決める。」
「だが彼はそうしなかった。彼はいつでもどんな時でも彼で居てくれた。」
「本性って事は、貴方達のあの姿も見ているの?」
「見ているも何も、ボクと彼の最初の出会いはまさにアレだよ。相手こそ違うけどね。」
「それじゃとても強いのね?」
「いや。弱っチイでスよ。」
「うん。女子にも勝てない。」
「でもベア倒した。」
「ぜんっぜん判らないんだけど。」
「ミーもノットアンダスタンドよ。だからワンダーなのよ。」
「ボクにも判らないよ。それに断っておくけど、会いに行っても彼はキミの役には立たないよ。」
「は?役にも立たない素敵でもないっていったい何なのよその人。」
その後の彼女の事は知らない。
2人もそれから連絡を受けていないと言った。
「いいわ。よく判らないけど、この先私にトモダチが出来なかったら会いに行く。」
「それじゃ学校には行く気になったんだね?」
「ええ、2人の事を見たら、私が受けたイジメなんてオママゴトよ。」
「両親には別の心配を掛けるけど、やられたらやり返すわ。」
「オウよく言ったよベイビーちゃん。キックアスよ。」
「オイオイ。」
きっと戦っている。それは彼女の戦いだ。僕のではない。
それでも疲れたら僕のところへ来ても構わないと思っている。
その時はオムライスでも拵えてご馳走しよう。
だから来ないで欲しい。いつまでも、ずっと、僕に会いに来ないで欲しい。
それは彼女にきっと素敵なトモダチが出来た証なのだから。




