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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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サーラとエリクの帰国は終業式の翌日。

終業式当日は各クラスの女子達から送別会に招待された。

僕は2人に誘われたがさすがに断った。

エリクとルーとは一緒に別れの挨拶は済ませた。

永遠の友情を確かめ合った。

サーラとは明日話せばいい。何を話すか決めてある。

あれから僕達はずっと一緒にいた。だから今更話す事なんてない。

あの夏もそうだった。あの二日間で僕達は全て語り尽くした。

春休みの初日。その日の朝早く、皆が僕の家に集まった。

あの夏の日のように、2人はリムジンに乗って来た。

エリクは僕ともう一度固い握手を交わす。

「いつか、いつかきっと。必ず。」

それは約束だ。叶わない願いではなく、果たすべき約束。

サーラは先ず皆に別れの挨拶をする。

「貴女達とトモダチになれて本当に良かった。」

「皆が居たから私の6か月はとても素晴らしい日々だった。」

「杏。椿。貴女達は私の親友よ。勿論貴女達さえよければだけど。」

「うわーん。我慢してたのに泣かせるなよー。ボク達親友だよー。」

「おう。心の友よ。国も種族も違うが何処にいても親友だっ。」

「今からお金を貯めておきなさい。式には招待するから。」

「にゃんだとっ」

「キズナは連れて行かせないぞっ」

サーラはいたずらっぽく笑うだけだった。

「綴、絢。お姫様をお願いね。」

「言われるまでも無いわよ。」

「任せろ。」

「それからキズナの事も。私が呼ぶまで頼むわよ。」

「ダメよ。」

「行かせないっつーの。」

「まあそれならそれで私が迎えに来るけど。」

「ユイ。」

「たくさんたくさんありがとう。貴女の恩に心から感謝するわ。」

「お父様にも感謝を伝えておいて。あなたのお蔭て兄共々快適でしたって。」

「うん。伝える。」

「お姫様は泣き虫なのね。」

彼女は橘さんの頬の涙を拭いながら抱き寄せた。

そして何か耳打ちしていた。それは誰にも聞こえなかった。

抱擁が終わると、手を取ってお互いに

「また会いましょう。」と言った。

そしてサーラは僕の手を取った。

あの時のように、皆から少し離れた場所まで歩いた。

「私のトモダチ。私の親友。私の恋人。」

「エリクから聞いたわ。キズナは最初から知っていたって。」

うん。どうしてだろう。何となく、判っていた。

「本当に、アナタは何者なのかしらね。」

君はサンタの国に住むお姫様。最初からずっと。

「私がお姫様ならアナタはやっぱり天使なのかしらね。」

「エリクが言ったのよ。キズナは自分をゴーストだと言ったけど、ボクには天使に見えたって。」

ああ、あの時の。恥ずかしい事言いそうになって恥ずかしくなって赤くなったのかアイツ。

「人では無いボクに神の子と人の子との繋がりをくれたって。」

「あなたが兄と出会いトモダチになってくれたから全てが始まった。」

「そして私も。」

彼女は僕の両手を取って言った。

「いつか、いつかきっと私に会いに来なさい。」

「傷心旅行でも新婚旅行でもいいわ。相手が誰であれ私が話を聞いてあげる。」

そうだね。その時は君とエリクは王様と王妃様なのかな。

「私が帰ったらその秘密を打ち明けてね。」

自分で言えばいいのに。

「ダメよ。私はキズナを迎えに来るって言ったから。」

「しばらく黙ってて少しくらい危機感持たせてもイイわよ。」

隠していたのバレたら怒られるだけだよ。

「そうね。あの子達を裏切ったりしたら後が大変ね。」

「あの子達も決してキズナを裏切らないでしょう。」

「でも私は、私はアナタをずっと」

大好きだよサーラ。

やっと言えた。

大好きなサーラ。君は笑っていて。僕は君の笑顔が大好きだから。

いつか言った筈だよ。僕は不思議と君の気持ちが判るんだ。だから大丈夫。

サーラ、ずっと伝えたかった。。

君は僕に笑い方を教えてくれた。

君と行った海で、僕はまた笑えるようになったんだ。

だから君こそ、僕には天使なんだ。

辛かったり、苦しかったりしたら彼に縋るといい。

でも僕にはずっと笑っていて欲しい。

勝手な事言っているけど。そうしてくれると嬉しい。

あ、だからってエリクに笑顔を見せるなって意味じゃないよ?

「わかってるわよ。もう。」

「せっかく素敵な事言っていたのに自分で台無しにするなんて。」

「大好きよ。キズナ。嘘じゃないわ。ずっとずっと大好き。これからもずっと。」

彼女は僕を抱き締めて、僕も彼女を抱き締めた。

そして彼女は僕の頬にキスをして、僕も頑張って彼女の頬にキスをする。

「またネ。キズナ。」

うん。またね。

皆の元へゆっくり手を繋いで戻る。でも皆は何も言わなかった。

2人は車に乗り、窓を開ける事なく、そのまま走り去った。

暗くて黒い窓に、その後ろ姿は見えなかったが

僕達はずっと手を振っていた。




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