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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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エリクとルーは無事だった。

彼らはそれぞれ別の場所にいた。

数週間前からそうだったように、

数ヵ所で同時に「目撃情報」が彼らに届いた。一つずつ消すしかない。

そしてその全ては彼の人形だった。

僕の入院は結局3日間で済んだ。風邪程度で済んだのも、怪我の回復が早いのも

センドゥ・ロゼが僕に僅かな血を分け与えたから。

「たいした量では無いから君が吸血鬼になる事は無いよ。」

とエリクが教えてくれた。

その効力はすぐに失われるだろう。僕はただの人の子に戻る。

残念なような気もするが、僕ではその力を持て余すだろう。無い事が幸せな力だってある。

エリクは

「彼とは直接対決したかった。」

「まさかキミが、キミ1人で彼を倒すなんて。」

「それでトモダチになったと聞いたけど?」

いやまあ、脅迫されたような感じなんだけど。

そう言えば2人からもそんな感じだったなぁ。

「そうだったね。」

「そうでしたー。」

そしてまた笑った。

何より、ほんの一瞬であるにせよ、僕が彼らと同じ側にいる事が誇らしかった。


他の皆からは当然のように怒られた。

病室だったのだが彼女達の剣幕に容赦はない。

勝手に1人で神社に行った事も携帯を折った経緯もとても怒られた。

彼の真意を知った今となっては最悪の方法だと我ながら思う。

ただあの時はあれが最善の策だったと今でも信じている。

彼女達はそれが許せなかった。

センドゥ・ロゼがお願いなり脅迫なりしていれば間違いなく彼女達は現れた。

それだけは避けなければならない。

橘結にもサーラにも護衛がいる。

なら人質として僕を狙うのは判り切っていた。

僕は囮であってエサであったが

僕はそれを利用して彼と対決するつもりでいた。

僕は彼を殺すつもりでいた。

僕が彼を恐れなかったのは

彼以上の殺意を抱いてたからなのだろうと後になって思うようになった。

彼女達はそれを理解してくれた。理解してしまった。だから僕を怒った。

だからこそ「許せない」とまで言った。


三原先生は身体の心配はしてくれるがそれ以外の事には批判的だった。

それは

「どうして最初に私に連絡をしなかったのか。」

の一点に対してのみ。怒られているのに嬉しかった。

同時にまた彼女は自分を責めていた。

彼女は僕が「死んだ」と思い「私が殺した」とも考えたようだった。

何度も「キズナが傷付く前に助ける」と誓うように言ってくれたのに

今回もそうする事が出来なかった。そして最悪の事態が過った。

今まで見た事のない落ち込みようだった。

僕は、彼がそうさせないよう仕組んだのだからと彼女を慰めるように謝った。

まだいつものような笑顔は戻らない。

それでも彼女に確認しておかなければならない事があった。

退院してすぐ、僕はその機会を作った。

橘さんの母親の亡くなった日を覚えていますか?

正確じゃなくていいです。時期とか。季節でも。

「覚えてるけど、それが何だよ。」

死因もご存知ですか?

「特殊な血液の病気だよ。何千人に一人とか。」

「だからそれが何だよ。」

小室さんの母親が言っていたと思う(違う人かも)

僕の母親が亡くなった2年後の事だと言っていた。

僕が退院したのも事故から2年経っていた。

先生は僕の事故も覚えていますか?

「っ。何だよ。さっきから何なんだよっ。」

僕の母が亡くなって、辛いのは判ります。

初めてお会いした時も、先生は母を思い出いして泣いてくれた。

その時の僕の状態も覚えていますか?

「覚えてるよ。」

ボソリと呟いた。当たり前だ。思い出したくは無いのだろう。

僕は酷い事をしている。

「会わせてもらえなかった。」

「纏姉ちゃんの告別式に出て、その後結と一緒に紀子さんに付いて行ったんだ。」

「見ない方がいいわ」

「その時の紀子さんの顔もはっきり覚えてるよ。」

「キズナ君も死んじゃうの?」

「紀子さんは結を抱き締めて言ったよ。大丈夫。きっとまた会いに来るからって。」

「もう1人いる」

橘さんのお父さんに会わないと。

「会ってどうするんだよ。」

確認します。

「もう1人いる」

もう逃げない。

「確認て、何の。」

僕が、橘結の母親を殺したのかの確認。

三原紹実は突然僕を殴った。

グーパンチで頬を殴られた。

「いったっ。」

殴った彼女が痛がった

僕はすっ飛んであやうく意識を失いかけた

「うわっキズナっ。」

殴った本人が慌てて僕を抱き起す。

「ゴメン。大丈夫か?」

だいじょばない。痛い。

「お前がバカな事言うからだっバカっ。」

泣いているのか怒っているのか、彼女の顔はぐしゃくじゃだ。

美人なのに。本当に僕は酷い奴だ。


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