表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
17/42

104

「何だ。何に気付いたと言うんだ。」

彼は動揺している。と思う。落ち着きなく膝を震わせ僕の目を見ようとしない。

時間稼ぎをしようとしたが車は走り出した。

君がどうしてあの日に現れたのか。

いやまあそれはいいんだ。

君は橘結を手に入れて、その先どうしようとか計画はあったの?

「計画。あるさ。あるとも。」

どんな?

「崇高で高貴な計画だ。我が一族の繁栄が約束された素晴らしい未来。」

邪魔な存在を彼女の力でただの人の子にしてしまおうって事?

でも橘結が橘結で無くなってしまえば、その力も使えなくなる。

そんな事に気付かなかったなんて言わせない。

君程用意周到で準備万端で計画的に悪戯をする奴が

それを知らなかったなんて

ああそうか。

「何だ。」

僕はずっと、橘結を「張子の虎」として利用するのだと考えていた。

祀りの日に現れたのは

集まった「継ぐ者」達に、「橘結を手に入れた」と見せつけようとしたからだと。

そうしなかったのは

君が本当は橘結に「協力」してほしかったからなんだ。

邪魔な僕を蹴散らして、最悪殺してでもあの場で無理矢理橘結を拐っても良かった。

でもそうしてしまうと、橘結は決して君に協力しない。

僕が「この男は敵だ」と勘違いして邪魔をしてしまったのか。

僕が君の未来を壊してしまったのか。

「はあ・・・」

「まったく本当に。君は本物の人の子か?魔女の身内なんじゃないのか?」

不可解な事がある。

春に再来日してすぐに橘結を狙わず、日本中を巡っていたのは何故?

車が止まる。

またここか。

ラブホテルの廃墟。サーラが最初に住んだ場所。

何時の間にこんなに崩れたんだ?これって行政処分で取り壊しだろう。

彼の血がそうさせているのだろうか。

広いエントランス。吹き抜けの大きな壁のような柱。

彼方此方崩れかけた屋敷の中には誰も居なかった。

ロビーには応接室のように立派な椅子とテーブルを挟んで大きなソファ。

僕はソファに座るよう促され、彼は椅子に座る。僕の後ろはその大きな柱。逃げ道はない。

「で?」

「何の話をしていたっけ?」

日本中を巡ったのは「橘結」の代わりを探していたんだろ?

「ふっ。」

「はーっはっはっ」

彼は殊更大袈裟に高笑いした。

「大正解。」

橘結には彼女を守る騎士がいる。面倒な魔女もいる。

無傷では済まされないだろう。だから標的を変えた。

でも無駄だった。だからこそ戻って来たんだ。

もう一度橘結を狙うために。

およそ1年。もしかしたらもっと前から来日していたかもしれない。

彼はずっと「橘結の代役」を探していた。

だがそう簡単に見付かる筈も無い。

何故この街に庇護を求めて「継ぐ者」達が集まるのかを知っていれば容易に理解できる。

「態々山一つ汚したのに現れたのは君たちだったからね。」

「随分と無駄な事をさせてくれたものだよ。」

あの時の違和感がようやく判った。

「穢れた」のではない。「汚された」のだ。

意図的に人為的に。

手の込ん悪戯。

仮に他に見付けたとしても

余所者(しかも海外からの吸血鬼)がフラリと現れて受け入れる筈がない。

この時、

センドゥが僕に興味を抱いたのもそれが理由なのかも。

あの雨の日、僕に会いに来たのはもしかして。

もっと別の方法だって

「正解のご褒美に面白い事を教えてやろう。」

「キミはどうやら自分tが何者なのか知らないようだ。」

何?

「ボクが人形を遣うからこそ気付いたんだろうな。」

だから何だ。

「キミの中にはもう1人いる。」

何を言っている?

「あの時、キミがボクの血を受け取らなかったのは」

「もう一人のキミがキミを守ったからだよ。」

「だからこそなんだろうね。キミは一つだけ勘違いをしている。」

勘違い?

「ボクがこの地に戻って来たのはあのお姫様に用事があるからじゃない。」

何を言っている?

その「一つの勘違い」は全ての前提だ。

それが覆されてしまえば僕は何の為にコイツに誘拐されたんだ?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ