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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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1月3日。14時近かった。

遅めの昼食。皆空腹だ。何よりだ。

3人で作ったカレーは大好評だった。

桃ちゃんがずっとそのレシピを説明してくれていた。

「だって姫様んとこでヨーグルトに鶏肉入れて何も使わないからアレって思ってたらコッチでかよって。」

「このスープの中の竜田揚げって奴だって小室家で何か一手間加えて作ってやがって。」

「挙句レシピとか見ないでスープとかドレッシング作るんだぞこの兄ちゃん。」

「判ったから黙って食えよお前。」

「食ってるよっ腹立つ事に美味いんだよこのカレー。」

どうして怒っている。

「ホント美味しいわね。私の専属コックとして働く気無い?」

「専属っ!?」

「連れて帰る気かお前。」

「まあ専属なんだから当然そうなるわよね。」

「ダメだっキズナ兄ちゃんは皆のモンだ。こんな便利な奴独り占めすんな。」

便利って。

「父ちゃんに蕎麦打ち教わってたな。お前作れない物あるの?」

ありますよ。知らない料理は無理です。流石に一度食べただけで作れるとかの能力はありませんよ。

「キンビラ作ったりお芋煮たりするくらいだから和食が得意?」

得意って言うのもあまりありません。それに全部レシピ見ながらですから忘れているのもあります。

「忘れるくらい作ってるのかよっ。」

「中華とかも作ったりするの?」

そうですね。チャーハンとかエビチリとか。麻婆は茄子も豆腐も。青椒肉絲なんて肉野菜炒めだし。

餃子とシュウマイは皮から作った事ありますよ。

「アホだろ。」

「アホだ。」

「アホー。」

何でだっ

「私この前オムライス作ってもらったわ。」

「オムライス作るくらいだから洋食だっていけるんでしょ?」

パエリアとかトルティーノ作りましたねー。あ、ジャガイモで思い出した。

サーラはボンファムとか知ってる?

「ソール・ボン・ファムなら知ってるわよ。伝統的なフレンチよね。」

うん。舌平目を蒸し煮にするんだけどそれをジャガイモで作った。

ベーコンと玉ねぎとマッシュルームと一緒に煮込むだけなんだけど美味しかったよ。

「鮭のムニエル作ってくれた。」

敷島楓は覚えていた。

そうだ。一番最初に誰かに料理を振舞ったのは楓ちゃんだった。

あの時のオムライス喜んでくれたのが凄く嬉しかった。

「そうなの?楓ちゃんもキズナの始めて奪ったのね。」

南室綴は小学生に何を言っている。

自分の作った物を食べてもらって喜んで貰えるのは嬉しい。

今までずっと1人で作って一人で食べていた。

一昨年の春。初めて皆で行ったファミレス。

何よりあれが強烈な印象として残っていた。皆で食べる食事がこんなに楽しいなんて。

食事の後も、皆は「何が美味しかったか」をずっと話していた。

楓ちゃんがあの日言っていたように、入院前に作ってくれたオムライスが美味しくて大好きなように

その場面や思い出がその料理とリンクしている。

サーラはアチコチの国で多くの料理を食してきたがやはり母の作る

にんじんのキャロールPorkkanalaatikkoだと言った。

「この前も食べてきたわ。普段料理しない母がクリスマスだけは必ず作るのよ。」

ととても嬉しそうに話してくれた。

母の料理なんて覚えていないな。それは多分南室さんも同様だろう。もしかしたら橘さんも。

だからこそ、僕だけでなくきっとこの二人もサーラの話が楽しかったに違いない。

僕にも誰かの思い出の料理を振舞うようなことがあるのだろうか。

1月3日。夜。

橘結、南室綴、小室絢の3人は宴会の片付けに橘家に戻る。

僕達は楓ちゃんを家に送り届け宮田家に向かう。

別れ際サーラは小室鮎に抱き付いて

「あなたのお蔭でとても楽しいオショウガツだったわ。ありがとう絢。」

「お、おう。」

「お父様とお母様にもよろしくね。」

サーラのトランクを転がしながら一緒に宮田家に向かう。

「キズナのトモダチのファミリーは皆本当に素敵ね。」

これから行く宮田さんの家もとても楽しいと思うよ。

「そうね。あなた達姉妹を見ていればそう思うわ。」

「おう。覚悟しとけ。」


楓ちゃんを送り届け、宮田家に到着。両親は既にサーラを迎え入れる準備を済ませていた。

「こんなたくさんいるのにイイの?」

「1人2人増えたって構わないわよ。」と宮田母が手を引いた。

これはむしろサーラが気疲れするな。

実際後に話を聞いた際に

「疲れたわよ。でもそれ以上に楽しかった。」

妹と弟ができたみたいで嬉しかったと本気で喜んでいた。

僕もその日宮田家に「泊まれ」と言われたのだが

翌日祖父母が帰ってくるのでとお断りし、玄関先で宮田両親にサーラを頼み

久しぶりに1人で夜を過ごした。


1月4日。

祖父母がお昼前に帰る。

温泉地のお土産を山ほど買って来たのは後で皆に配るようにとの事だった。

年末年始イロイロとお世話になったのだろうからと。

年末年始のお互いの話を聞いてその日1日過ごした。

まるで時間が止まったのではないだろうかと思うくらいゆっくりした1日だった。

サーラはもう一日宮田家に泊まる。翌5日には兄が執事たちと戻るらしい。

3日4日は宮田家

30日2日は小室家

31日1日は橘家

結果的にそれぞれの家で2泊3日を過ごす事になった。

とても忙しかっただろう日本のお正月がどんなものなのか

(少々特異ではあるが)判ってくれただろうか。


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