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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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ギリギリお昼前には全ての調理が完了し、片付けていると小室母に呼ばれる。

客間に通されると既に10人近くが宴会を始めていた。

橘さんの父親はまだカルタ大会の後片付けをしていると言うのに。

「本日の料理長です。」と突然小室母が僕を紹介したので慌てて頭を下げた。

知った顔がいくつかある。

いつかの会議に出ていた人達やお祭りでお世話になった人達。

酔っているのか会場から拍手まで起きてしまった。

いやあの僕が作ったのは本当に数点でと言った声がかき消された。

その席で三原先生が「年末年始とお盆にだけ会うような」両親を紹介してくれた。

先生の母親から

「この子にいたずらされたりしていない?」

と結構真顔で心配された。

いやまあたまには。

そう答えると彼女はじっと僕を見て

「ホント纏ちゃんにソックリね。」

と、僕の頭を撫でる。

「こんな子だけど仲良くしてあげてね。」

「ちょっと母さん。」

僕は先生の手を取って、もうトモダチです。あ弟かな。と答えた。

2人はとても嬉しそうに笑ってくれた。

30分もすると橘父と、巫女さん達が戻り新年会に合流した。

新年の挨拶は簡単だった。

「今年もよろしくお願いします。」

で、「カンパーイ」なのだから驚いた。

私服に着替えてきた巫女さん達ではあったが皆参加者にお酒を注いだり話相手になったり。

(さすがにサーラにはそれをさせなかった)何だか可哀想だな。

「知ってる顔にお酒祖注いでる方が気楽だわ。」

と南室綴は笑った。

一回りすると早々に引き上げようと荷物を片付け準備する。

宮田姉妹が片付け始めていてくれたので助かった。

すると子供達が全員揃って橘父に呼ばれる。

客間ではなく居間だった。

彼は「アルバイト料とは言えないのでお年玉って事で。」と全員にそれぞれポチ袋を配った。

サーラはお年玉の意味が判らず今回の報酬だと思い

「ワタシは体験させて貰った側なので受け取れない」と断ったが

皆から「是非受け取って欲しい」と頼まれ、困り果てて僕を見たので

日本の正月の風習の一つだよ。遠慮なく受け取らないと失礼なんだ。と伝えた。

彼女は何とも困ったような表情を浮かべ、そして橘父をじっと見据え、深々と頭を下げた。

この3日間の全ての想いが詰まっているような深くて長いお辞儀だった。

「またいつでも遊びにおいで。」

と冗談とも本気とも思えるような言葉で彼女を見送った。

宴会も開始僅かなのに既に大盛り上がりでその中から小室絢の両親を連れ出すのに苦労した。

サーラは小室母の手を取り

「お母様。たくさんありがとうございました。」

「何もお構いできなくてゴメンなさいね。」

「そんな事ありません。皆で作ったオセチはとても楽しかった。」と頬にキスをする。

「お父様もありがとう。」と両手をしっかり握る。

「お父様の作ったお蕎麦とお餅はとても美味しかった。」

「いつかきっと私のウッタお蕎麦をご馳走します。」

その笑顔に皆やられるんだ。僕は知っている。彼女の笑顔は凶器だ武器だ。

「またいつでもいらっしゃい。」と小室母に見送られ、ようやく小室家に向かった。

皆でお年玉袋を開けるとちょっと驚くような額が入っていて橘結も驚いていた。

「まあアレだけ参拝客が来ればお賽銭もガッポリだろう。」

と宮田杏が笑って、皆が何か言う前に

「アタシ何もしてないのにお年玉貰ったから今日のカレーの材料費はモツよ。」

と先手を打って宣言してくれた。

「そういう事ならワタシも」

とサーラが言うのを制止し、

「ここはアタシに任せろ。」

と胸を叩く。それを見て南室綴が申し訳なさそうに

「でもワタシ達。」

「さっき新年会でほら、お酒振舞ってる時にガッポリと。」

「なにぃっじゃあ割り勘だっ。」


楓ちゃんと柚ちゃんの2人も含めた巫女さん達にはゆっくり休んでもらい

僕と宮田杏、そして宮田桃カレーを作りに取り掛かる。

「どうせならちょっと変わったカレー作って。」と言われていたので

今回は固形のルーは使わず、スパイスミックスとヨーグルトで作る。

人参玉葱は小さめに刻み鶏肉を中心にした。じゃがいもは入れない。

その鶏肉は橘家で料理をしている間にポリ袋に入れて塩コショウをし

さらにそこにヨーグルトを入れておいた。本当は一日くらい寝かせたいがまあ仕方無い。

宮田姉妹が野菜を準備している間にそれを炒めて一緒に煮込む。

スープも作ろう。里芋いくつか拝借してきたので薄切りにしてぬめりを落とし

コンソメスープの元を入れてと。

煮込んでいる間にサラダも作っておこう。二人に食器の準備をしてもらう。

多人数の料理はいつもと勝手が違うがそれなりに何とかなるものだ。。

キャベツとレタスと大根の簡単な物。ドレッシングは、と小室家の台所を物色。

オリーブオイル、お酢、塩コショウ。レモン汁。これでイタリアンだったかな?

出汁ポットまである。流石だ。少しいただいて和風のドレッシングも作る。

ドレッシングは個人に選ばせるので小さなボールにスプーンをつけて。

スープの仕上げには塩コショウを振らず、橘家で作った肴の竜田揚げを2つ3つ加え

さらにその上にお雑煮で使っていた三つ葉を少し浮かべて彩る。

カレーの仕上げにはココナッツミルクとガラムマサラを加えて。と。これで全て完成。

それぞれの味見をすると中々の出来でニンマリしていると

「だから何でキズナ兄ちゃんはそんな事できるんだよっ」

と桃ちゃんに再び呆れられた。



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