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Kiss of Monster 03  作者: 奏路野仁
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クリスマスイブ。

僕は先ず宮田家に招待される。

宮田杏の妹2人、柚ちゃんと桃ちゃん。それに弟1人にそれぞれプレゼントを渡す。

それが目当てで招待されたのは承知している。

宮田杏は「断ってもいいぞ」と言ってくれたが

兄弟姉妹のいない僕は一度くらいこの賑やかな場を体験してみたいと頼んだ。

「でも今はちゃんと家族いるじゃん。」

祖父母は親戚と温泉旅行に行ってる。

その後その親戚のとこで新年迎えて、帰ってくるのは年明けなんだ。

「何でお前行かなかったんだよ。」

橘家のお手伝いしなさいって。

「んじゃまあイイか。」

楓ちゃんも誘おうとしたのだが

「とても久しぶりに家族で過ごすクリスマス」を優先させたそうだ。

柚ちゃんは小学生なのにそのあたりをしっかり心得ていて、

楓ちゃんにそれとなく一応確認はしたらしい。

今回僕がこの場に来る事も話してあって、楓ちゃんへのプレゼントも預かるように頼まれてもいた。

「イブに来たって事はそういう意味なの?」

と桃ちゃんがやたらしつこく問い詰めるが

この後皆のとこ行くんだよと説明して何とか大人しくさせても

「他の連中を出し抜くってただそれだけの為に姉ちゃんと付き合ってくれ。な?」

と懇願されたりもした。

姉の宮田杏はそんな桃ちゃんの暴走にいちいち反応するので実に賑やかだ。

「賑やかでゴメンなさいね。」

と宮田家の母は謝るのだが

いえ、楽しいです。

でもこれが毎日でしたらお母さんも大変ですね。と僕も笑って答えた。

「楽しいとね、大変だなんて思わないのよ。」

僕の理想していた家庭がここにある。理想の家族がここに居る。

第三者的な勝手な見方で、実際は楽しいだけでは済まない事もあるだろう。

でも願わくば、この家族がいつまでも笑顔でいられますよに。

次のクリスマスも、その次のクリスマスにも、ずっとこうして皆が集まって仲良く過ごしていられますように。


夕方。

「また明日なキズナ兄ちゃん。」と桃ちゃんに見送られ僕と宮田杏は小室家に向かった。

街の中を通ると一層クリスマス気分が高まった。

本当に、二年前までは僕が誰かとクリスマスを過ごすなんて考えもしなかったのに。

クリスマスなんて、カレンダーの印の一つでしかなかった。

少しニヤけていたかも知れない。

宮田杏はいつになく口数が少なかった。急いでいる割にはあまり速足でもなく

僕や妹達を相手に少し疲れたのだろうか。

「キズナは毛布とか毛糸とかのアレルギーってあるのか?」

いえ?

僕の返事を聞くと彼女は自分のマフラーを一巻き取って僕の首に掛けた。

両手で僕の首に巻き付けるような感じではなく、片手で僕の延髄部分に鞭打ちするような。

「巻いとけ。」

あ、うん。ありがとう。

寒いから。宮田杏は真っ赤だ。

手を繋いで、街行くカップルがそうしているように僕達はゆっくり歩いた。

商店街を抜けると、急に暗くなる。

名残惜しむように振り向くと、彼女も同時に振り向いた。

思わず近付いた顔に少し驚いた。

どうしてだろう。彼女はじっと僕を見つめている。何かを言いたそうに。

どうし

うわっ

携帯が鳴った。小室絢からメール。

僕はそのまま画面を宮田杏に見せる。

「遅いっっっ。イチャコラこいてたらケーキ無くなるぞ」

写メにはケーキを囲んだ南室綴と橘結が笑っている。

「ヤバイっ急ぐぞっ」

うん。

あ、待って。と、僕は携帯を自分達に向けた。

煌びやかな町灯りを背景に、宮田杏とマフラーを巻いている姿をそのまま写した。

「イチャコラなんかしてないんだからね。」っと。

これで送っていい?

宮田杏は黙ってコクリと頷いた。

おかしいな。いつもならもっとノリノリなのに。

と、彼女は僕の首に巻かれたマフラーをグイと引っ張り僕の唇を奪った。

「ん。」

「ふ。う。く、クリスマスプレゼントだっ」

は?

「いいかっ誰にも言うなよっ。」

「プレゼントだからこれ数に入れなくていいからなっ。」

うわっ

彼女は僕にマフラーを半分巻き付けている事を知りながら走り出す。


到着すると「もうケーキ無いわよ。」と言われる。

「2人で1つのマフラーとか有り得ないでしょ。」

「ええっキズナ君って杏ちゃんともそういう仲なの?」と小室母に驚かれる。

ああそうか。小室絢と恋人だった。

「フフン。絢にはやらん。」

と宮田杏それを知って煽るような事を。

今年は栄椿が家族で年末年始旅行に行く事になって

(コミケの参加を見送った事を相当嘆いていた)

クリスマスをどうしようかと話になった。

皆でファミレスでグダクダと過ごしてもいいが柏木梢も栄椿もいない。

小室絢が宮田杏に気を使って

「25日のクリスマス会の準備を手伝え」と条件を付け

24日から泊りで小室家で過ごす事に決まった。

それでどうして僕まで泊まる事になっているのか判らない。

毎年12月25日の午後、道場に通う子供達を招待し、

小室絢がケーキを作って振る舞っている。

橘結と南室綴はケーキ作りを手伝い、

皆で少しずつ試食をしながらのクリスマスイブ。

少々遅くなったので全員で橘結と南室綴をそれぞれ送と届ける。

「気をつけなさいキズナ。危険を感じたらすぐ逃げるのよ。」

気を付けます。

そして星を眺めながらの帰り道。

「そう言えばキズナは星に詳しいんだよな。」

有名な星をいくつか知っているってだけです。

えーっと・・・

南の空にオリオン座を見付ける。ベデルギウスがあって、左に下がって上にあるのがプロキオン。

そして下に降りてシリウス。これが冬の大三角。

あとさっきのオリオンに相対するようにアルデバランがある。

「おおっ全部聞いた事ある。」

冬は空が澄んでいるのでとてもキレイに星が見える。

「何かいいなこういうの。」

小室絢が星空を見上げて呟いた。

「うん。いいな。」

宮田杏も空を見る。

いいですね。


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