涙の墓
中学生の時に初めて書いたものです。
全く怖くはありませんが一応ジャンルをホラーにしておきました。
昨日、お兄ちゃんが病気で死にました。いつもお母さんと僕とでお見舞いに来ては、いろいろな手伝いをして看病していました。
今日は、お兄ちゃんのお葬式でした。お兄ちゃんはいつも笑って
「大丈夫。」
と言っていました。そのお兄ちゃんが死んで、お母さんたちは昔のことを思い出して泣いていました。けれど、一番身近にいたお兄ちゃんの死が僕は全く悲しくありませんでした。
そして、お葬式が終わりました。家に帰っても、気まずく重い空気が流れるばかりでした。その中で僕は、いつも通り暮らしていました。僕にとって変わったことは、お兄ちゃんという存在が無くなり、お兄ちゃんに関することをしなくなっただけでした。
動き慣れない服を洗濯機に入れ、いつもの動きやすい服に着替えました。
―――ふう、疲れた。
僕はそう思って洗濯機の前から立ち去ろうとしました。すると、洗濯機が勝手に動き出し、水がどんどん溜まってゆき、最後にはあふれ出しました。ずっと泣いている僕の家族は、誰一人として気づきませんでした。洗濯機は、僕の家族が泣いているのを表すかのように、水がどんどんあふれてきます。しかも、さっきまで何の目立った行動をしていなかった家族が、お兄ちゃんが死んで、お葬式をしたばかりだったというのに、
「出かけてくる。」
と言い出し、僕は水のあふれる洗濯機をどうすることもできず、ただうろたえるだけでした。水にのまれた僕の家の中で、僕は何もできず死んでしまいました。数十分して帰って来た僕の家族は、僕の死体を見て、泣き止み、涙もかれた顔で、
「泣いているようだね。」
とひとことだけ言いました。
僕の死体はお兄ちゃんと一緒のお墓に埋められました。洗濯機は、まだ家で壊れることもなく使われています。
P.S.
これは、たぶん僕のお兄ちゃんの呪いです。僕が悲しまなかったら。もしかしたら道連れにしたかっただけかもしれません。