ⅩⅣ 伝説の再現(2)
ほんの短く輝いた瞬間、キャメロットという名の場所があったことを忘れてはならない。
アラン・ジェイ・ラーナー&フレデリック・ロウ『キャメロット』より
そうして幾つかの塊に分かれながらも、一団は同じ入江を目指して急な階段を駆け下りて行く……。
「――しつこいぞ、妖妃モルガン!」
ダラララッ…!
先を行くアーサー王の宝を追いかけるマリアンヌだが、時折、足止め役のガウェイン卿とラモラック卿が振り返っては短機関銃を放ってくる。
「くっ……そっちこそいい加減諦めなさい!」
ダララッ…!
その都度、マリアンヌは身を伏せねばならず、こちらも反撃はするものの、なかなか目標に追いつくことができない。
「あ、そんじゃ、俺もお宝が気になりますんでお先に……」
対して、成り行き上、そんなガウェイン卿らと行動をともにすることとなったアルフレッドは、なんとかこの危険な役回りから逃れて、お宝の近くへ行こうとするが。
「何言ってんだよ! ケイ卿、お前も俺達と一緒にディフェンス役だろ⁉」
ラモラック卿に腕を摑まれ、敵の前面へと引き戻される。
「あ、いやあ、そういうポジションは俺に向いてないような……」
「来るぞ、伏せろ!」
「えっ? ……うわああっ!」
ダララララッ…!
なんの因果か言い訳も虚しく、アルフレッドはまたもマリアンヌの乱射する小型短機関銃の弾丸の雨に晒されることとなった――。
――ギン! ギン! ギン! ギンっ…!
「チッ! ったく、邪魔くせえガキどもだぜ」
一方、マリアンヌのさらに後を入江へ向かう刃神も、聖杯の三騎士のために苛立ちを覚えていた。
刃神を追う彼らは、足止めのために背後から銃弾を浴びせてくる。それをヴロンラヴィンの盾で刃神は防ぐが、その立ち止まった隙を突いて三人の内の誰かが追い着き、今度は剣や槍で攻撃を仕掛けてくる。
…ギィィンっ!
「チッ! いい加減にしねえと、ほんとにぶった斬るぞっ!」
若い騎士達は何度振り払おうとも諦めることなく、相手をせざるを得ない刃神はその度に歩みを遅らせるのであった――。
さてその頃、先頭を行くランスロット卿とジェニファーはといえば、例の駐車場へ向かう遊歩道と入江に下りる階段の分岐点へ差しかかっていた。
「さ、こっちに行けばティンタジェルの町へ抜けられる」
ランスロット卿はジェニファーの手を引き、迷わず遊歩道の方へ向かおうとする。
「やっぱりだめよ! マックス捜査官が地元警察を連れて来るまで、わたしがヤツらを引き止めておかなくちゃ……そうだ! ヤツらの舟を流してしまえば……」
だが、ジェニファーは急に立ち止まると、彼の手を振り払って入江の方へと下りて行く。
「あ、おい! 待て、ジェニファー!」
予想外の彼女の行動に、ランスロット卿も慌てて彼女の後を追う。
「何を考えてるんだ! やつらは君を殺そうとしてるんだぞ!」
ボートの停まる浜辺へと走るジェニファーの腕を摑み、ランスロット卿は怒鳴る。
「わかってるわ! でも、わたしには刑事としての責任があるのよ!」
「君はまだそんなことを言ってるのか! そんなくだらない意地と命とどっちが大事だ? それに、警察は来ないとベディヴィエール卿が言ってただろう⁉」
「いいえ! マックス捜査官はきっと来てくれるわ!」
「マックス?……君は、その相棒の男を随分信頼しているんだな……」
「ええ。彼は信頼できる人よ。だからなんだって言うの⁉ あなたには関係ないでしょ!」
こんな状況ではあるが、二人は砂浜の真ん中で痴話喧嘩のような言い争いを始める。だが、そうして無駄な時間を食っている内にも、背後の岩場からは追い付いたモルドレッド卿とガヘリス卿が剣を振り上げ向かって来る。
「死ねえ! 裏切り者っ!」
「危ないっ!」
ギィィィーン…!
咄嗟にジェニファーを押し退け、モルドレッド卿の剣をアロンダイトで受け止めてランスロット卿は言う。
「よせ! モルドレッド卿。君らは大切な円卓の騎士団の仲間だ。君らとは戦いたくない」
「黙れ! 裏切っておいて何が仲間だ! 貴様など、もう仲間でも円卓の騎士でもない!」
「そうですわ! この裏切り者の不貞の騎士!」
ガィィィン…!
ランスロット卿は説得を試みようとするも、二人はまるで聞く耳を持たない。同じく斬りかかるガヘリス卿の剣を、已む無く彼は肩の盾で受け止めた――。
そうこうする内に、後続の宝の箱を持つベディヴィエール卿ら、足止め役のガウェイン卿達、マリアンヌ、刃神、さらにそれを追うガラハッド卿達三人も、多少の時間差を置きながら続々と入江へ下りて来る。
「急げ! 宝をボートに積んで、すぐに出航の準備だ!」
「は、はい!」
ランスロット卿とモルドレッド卿、ガヘリス卿の二人が闘っているのを横目に見つつ、ベディヴィエール卿は一緒に来たユーウェイン卿ら三人の騎士に三艘のボートの綱を解くよう指示を飛ばす――。
――ダラララッ…!
「撃てーっ! モルガンを舟へ近付けるなっ!」
その後方の岩場では、岩陰に隠れながらマリアンヌとガウェイン卿達の銃撃戦がなおも続いている。
「もう、か弱い淑女一人に三人がかりで卑怯だと思わないの⁉」
数で勝る相手に、撃って、岩影に隠れ、また撃ってと、マリアンヌは不毛な射撃を繰り返すのみで、なかなかそれ以上、前へ進むことができない。
「まったく、ムシュー・ターナーも一体どこ行っちゃったのよ! ほんと、役にたたない詐欺師ね!」
ダララッ…!
しかし、文句を言いながら彼女がベレッタM93Rを三点バーストさせている騎士達の中に、兜で顔のわからないアルフレッドも実はいたりなんかする。
「ほんと、マリアンヌ嬢ちゃん容赦ないなあ……なんか、俺、本気で殺されちゃいそう……」
威勢良く跳弾が飛び跳ねる岩の背後で、アルフレッドは身体を小さく丸めてそうボヤいていた――。
――ギン! ……ギン! ギン…!
また、彼女達の銃撃戦の間を縫って先に砂浜へと出た刃神と三騎士達も、いまだ懲りずに剣戟を続けている。
「ベイリン卿、おとなしくダヴィデの剣を私に返し、アーサー王に仕える円卓の騎士として改心するのです!」
「そうです! 観念してください!」
「そうっす! 仲間に刃を向けるのはもうやめるっす!」
「ったく、ウザってえなあ……こうちょこまかとしたやつら相手だと、ヴロンラヴィンじゃ少々小回りに欠くな」
何度振り払っても執拗に波状攻撃をしかけてくる三人の若者に、刃神は苦々しそうに顔をしかめて呟く。
「あんまし刃毀れさせたかねえが、ここはやっぱ、こっちを使うってもんか……おい! そのふざけた寝言や盾の紋章からして、てめーは自称ガラハッド卿だな? そんなに拝みてえって言うんなら、お望み通りダヴィデの剣を披露してやらあ……ただし、使うのはてめーじゃなく、この俺様だけどなっ!」
そして、ガラハッド卿の白地に赤い十字架を描いた盾を睨んで言うと、ヴロンラヴィンを地面に突き刺し、その代り、背中に背負ったダヴィデの剣を抜きにくい蛇皮の鞘から一気呵成に引き抜いた。
「おお! それはまさしく我がダヴィデの剣……返していただきます!」
蒼い月明かりに輝く剣身に刻まれた朱のヘブライ文字を恭しく眺め、ガラハッド卿は俄かに活気づく。
「ヘン! だったら力づくで取ってみな!」
そう叫ぶや、刃神はこれまでの防戦一辺倒から攻勢に打って出る。
…ギン! ギン! ギン! ガィィィーン! ガィィーン! ギャリィィーン…!
「うぐっ…!」
高速で刃神の振るうダヴィデの剣は一息で三人の剣を弾くと、返す刃で次々に騎士達のボディ・アーマーや盾に傷を刻みつける。
「は、速い……さっきとは比べ物にならないぞ?」
「フン。こっちが普段の速さだ。今まではヴロンラヴィンが重過ぎたんでな!」
驚く三騎士にそう嘯き、さらに刃神は剣の連打で鎧ごと彼らをボコボコに打ちのめす。
「くうっ……だが、この十字に誓って、正義のために私は負けないっ!」
「ハッハッ! その威勢の良さだけは褒めてやるぜ!」
それでも若者特有の負けん気で立ち向かって来るガラハッド卿に、刃神は嬉々とした顔で、渾身の力を込めてダヴィデの剣を叩き付けた。
ギィィィィーン…!
ところが、ここで予期せぬことが起こる……なんと、ガラハッド卿の十字の盾に振り下ろされたダヴィデの剣は、剣身の途中から真っ二つに折れてしまったのである。
「なっ…!」
あまりのことに見開かれた刃神の目には、折れた剣の前半分が衝撃で弾き飛び、くるくると宙を舞う光景がスローモーションのように映る。しかも、さらに不運なことには、回転で勢いをつけたままその折れた剣先は落下し、そこにあった刃神の右太腿に鋭く突き刺さったのだった。
それは、あたかもガラハッド卿の祖父・漁人の王が、王の弟を殺した剣の破片で〝悲痛の一撃〟を負った伝説を再現するかのようであった。
通常、この傷はベイリン卿が〝ロンギヌスの槍〟でつけたものとされているが、一説にはそのような剣の破片とも、また別の伝説ではまさに〝ダヴィデの剣〟によるものだとも云われているのだ。
「ぐっ…!」
突然の激痛に、刃神の獣のように凶暴な顔が歪む。
「くそっ! …やっぱマズかったか……」
刃神も心配していたことではあったが、折れたその遠因は前に旧トゥルブ家邸博物館でランスロット卿のアロンダイトと刃を交えたことにある……あの時、頑丈なアロンダイトの刃で付けられた無数の刃毀れと内部の見えないダメージによって、ダヴィデの剣は見た目以上に脆くなっていたのである。
「しめたっ!」
「今がチャンスっす!」
得物をなくし、片膝を突いた刃神目がけて、これぞ好機とばかりにボールス卿とパーシヴァル卿が攻撃を仕掛けてくる。
「チッ…」
迫る二つの刃に刃神は飛び退けようとしたが、痛みで脚に力が入らず、咄嗟に太腿に突き刺さった剣先を抜くと、右手に残った剣の下半分ともども二人に向けて投げつけた。
「ぐっ…!」
「うわっ!」
それはボディ・アーマーを貫きはしなかったものの彼らの胸に突き立てられ、二人の若い騎士は後方に倒れ込む。
だが、刃神の目の前にはもう一人、図らずも自らの手で愛剣を破壊してしまい、その怒りのやり場を探し求めるガラハッド卿が立っている。
「おのれ、我がダヴィデの剣をよくも……こうなっては致し方ない。命を奪いたくはなかったが、ベイリン卿、お覚悟を!」
そう叫び、ガラハッド卿は刃神の頭上に剣を振り上げた――。
一方、ランスロット卿達の方へ戻ると、彼もモルドレッド卿とガヘリス卿の二人を相手に、やりづらい戦いを続けていた。
「――やめろと言ってるのがわからないのか!」
「くっ…!」
「きゃっ…!」
仲間を傷付けたくないランスロット卿は守りに徹していたが、あまりに聞き分けのない彼女らに、少し力を込めて二人を押し倒す。
そして、その隙をついて、目だけを背後のジェニファーへ向けて叫ぶ。
「ここは僕に任せて、君は早く安全な場所へ!逃げるのが嫌なら、せめてどこかに隠れているんだ!」
「え……ええ、わかったわ……」
そのギリギリで下したランスロット卿の妥協案に、ジェニファーもその方が職務を全うするのに得策と考えたのか、頷くと、近くにあった〝マーリンの洞窟〟の方へ向けて走り出した。
「あ! 女狐め、逃がしませんわよ!」
それを見て、ガヘリス卿は急いで立ち上がり、彼女の後を追おうとする。
「待てっ! 彼女には手を出すな!」
「貴様の相手はこのわたしだ!」
ギィィィーン…!
ガヘリス卿を止めようとそちらを振り向くランスロット卿に、モルドレッド卿も立ち上がり様に剣を振り上げ、受け止めた彼はその場に留められてしまう。
その間にもガヘリス卿は剣を投げ捨て、肩から下げていた短機関銃を手に取ると、前方を走るジェニファーの背に狙いを定める。
「あたしはあなたのことを許さない……警察の犬だったってのも許せないけど、不倫なんかするふしだらな女だってことがもっと許せませんわ。だから……」
そして、凶悪な相をその幼い顔に浮かべて呟くと、無慈悲にも躊躇することなく、トリガーに指をかけた。
「死ね」
「ジェニファぁぁぁーっ!」
瞬間、無意識にランスロット卿の身体が動いた。彼は恐ろしく強い力でモルドレッド卿を押し飛ばすと、振り向き様に地を蹴って、アロンダイトを振り上げながらガヘリス卿目がけて飛びかかる……
ザシュ…!
「うっ…」
次に気付いた時には、アロンダイトの鋭利な刃がガヘリス卿を背後から袈裟がけに切り裂き、ボディ・アーマーに覆われていない彼女の首筋から吹き上げた真っ赤な鮮血が、暗いティンタジェルの夜空に吹く荒涼とした海風の中に舞っていた。
「……!」
自分が犯してしまったことに、ランスロット卿は顔を強張らせ、剣を振り下ろしたままの姿でその場に固まる。
また、彼の声に振り向いたジェニファーも、その目に映った非現実的な映像に、夢でもみているのかと疑うような表情で立ち止まる。
「ガヘリス卿…………ガヘリぃぃースっ!」
僅かな時間差の後、ようやく何が起こったのかを理解したモルドレッド卿は、彼女には珍しく感情的な大声で叫んだ。
「…⁉」
その突然の悲鳴に、入江にいた者達も皆、何か尋常ならざる気配を感じ取ってその場で動きを止める。
「……なんだ?」
「なに? どうしたの?」
それは、ガラハッド卿の刃の下にいた刃神や、岩影から二丁拳銃をぶっ放していたマリアンヌも同じである。
「なんだ?」
「…………え?」
舟の準備をしていたベディヴィエール卿ら四人の騎士達、大きな岩の後に隠れていたアルフレッドも、悲鳴の聞こえた方へと視線を向ける。
「何があった?」
また、マリアンヌと撃ち合っていたガウェイン卿とラモラック卿、剣を振り上げたままのガラハッド卿や受けた攻撃に蹲る二人の聖杯騎士も、向こうに立ち尽くすランスロット卿、ジェニファー、モルドレッド卿、そして、冷たい砂浜の上に転がった誰かを、不吉な予感を抱きながら見つめていた。
「ランスロット卿……まさか、お前……」
しばしの後、その立ち位置や横たわる騎士の身に着ける兜や盾の紋章、ランスロット卿が手に持つ血に染まったアロンダイトの刃から、皆は凡そのことを理解した。
「貴様あぁっ! 何やってんだああっ!」
何が起きたのかを知ったガウェイン卿は、憤怒に顔を真っ赤に染め、猛獣のような雄叫びを上げる。
だが、その時である。
「――おい! いたぞ! あそこだっ!」
「武器を持ってるぞ! 気をつけろ!」
そんな声とともに、幾筋もの白い懐中電灯の光線が激しく揺れながら、崖の上の遊歩道をこちらへ向かって近付いて来たのだった。
その数、ざっと十数人はいるように見える。
「チッ…サツどももおでましか」
「ちょっとばかし遊び過ぎたようね」
そちらに目を向け、刃神とマリアンヌはそう各々口にすると、先程の悲鳴で殺がれた気を再び引き締める。
「いやぁ、こりゃますます厄介なことになってきたな……」
岩の影から顔を出して、アルフレッドもなんだか他人事のように独り言を口にする。
「マックス捜査官……」
対してジェニファーは待ち望んでいた仲間の到着に、目の前で人を斬った恋人のことも一瞬忘れ、ホッと安堵の息を洩らした。
「フン……どうやらあのエリック卿、なかなかにできる男のようだな……よーし! 皆、速やかに退却だ!」
一方、予想外だったというようにそう小声で呟くと、ベディヴィエール卿も一足早く気を取り直し、突然の不幸な出来事にいまだ立ち尽くす円卓の騎士達に号令を発する。
「……あ、ああ、そうだな」
「……は、はい!」
その指令に、他の騎士達もようやく我に返って動き出す。
「ランスロットおぉぉーっ!」
ダラララララララッ…!
しかし、怒りに自分を見失っているガウェイン卿は、ベディヴィエール卿の声も聞こえていない様子で、短機関銃を放ちつつランスロット卿目がけて突進して行く。
「うっ…」
足下で跳び跳ねる湿った砂塵に、ランスロット卿はジェニファーを庇うように盾を構えて身体を屈める。
「とにかくここは逃げるんだ!」
「え、ええ……」
冷静さを欠いた射撃のために着弾はしなかったものの、ガウェイン卿のその鬼気迫る様子に、ランスロット卿はジェニファーの腕を摑み、すぐさま走るよう促す。警察が到着したことで自分の役目は果たしたと判断したのか、その提案に今度は彼女も素直に従った。
「逃げるなあっ! ランスロットぉぉっ!」
「おい、落ち着けガウェイン卿! 今はガヘリス卿を助けるのが先だ。さあ、彼女を抱えて一緒に来るんだ」
走り去る二人になおも襲いかかろうとするガウェイン卿を、ベディヴィエール卿は背後から羽交い絞めにするようにして説得を試みる。
「ガヘリス卿……」
その傍らでは、ぴくりとも動かないガヘリス卿を見下ろし、モルドレッド卿が放心状態で突っ立っている。
「モルドレッド卿、貴殿も来るのだ。こんな所で警察に捕まってもガヘリス卿は喜ばんぞ。さあ、早く」
「……あ、ああ…」
「ええい、クソっ! おい、ガヘリス卿、しっかりしろ! 大丈夫か!」
その言葉に若干、冷静さを取り戻したモルドレッド卿は、怒りの衝動を抑えながら毒づくガウェイン卿と一緒にガヘリス卿を抱き起こし、ベディヴィエール卿について撤退を始めた。
「あ、待ちなさいよ! あたしのお宝!」
ダラララッ…!
「モルガン・ル・フェイ、今夜のデートはここまでだ!」
この状況下でも宝を諦めないマリアンヌだが、ラモラック卿に加え、舟の準備をすませたトリスタン卿、パロミデス卿、ユーウェイン卿も駆け付け、仲間の退却を助けるために銃で牽制する。
「くっ……なんかお取り込み中のようだけど、そっちがその気ならこっちだって容赦しないわよ!」
…ダララッ……カチ、カチ…。
「え? やだ、もしかして、まさかの弾切れ?」
対してマリアンヌも小型短機関銃を彼らに放とうとするが、間の悪いことに二丁の拳銃は押し黙ってしまう。
しかも今夜は撃ちまくり過ぎたため、もう代わりのマガジンも彼女には残っていない。
「こんな時に何よもう!」
悔しそうにマリアンヌはしかめっ面を浮かべ、その場で地団駄を踏んだ。
「おい! ケイ卿、お前も早くしろ!」
また、そうして牽制しながら退く際に、義理堅くもパロミデス卿は、岩の影で丸くなっていたアルフレッドにも手を差し延べてくれる。
「えっ? あ、は、はい……」
僅かの躊躇の後、彼らとマリアンヌ達の方を交互に見比べながら、とりあえずアルフレッドも騎士達とボート側へ向かった――。
「ガラハッド卿、僕らも引き上げるぞ!」
「ダヴィデの剣も手に入ったっすからね。折れてるっすけど……」
聖杯の三騎士達の方でも、ベディヴィエール卿の号令を聞いて、ボールス卿とパーシヴァル卿が剣を振り上げた格好のままのガラハッド卿に声をかける。
見ると二人の手には、先程、自分に突き刺さったダヴィデの剣のなれの果てが握られている。
「今宵はここまでか……ベイリン卿、勝負はお預けです」
折れてはいるが愛剣が手に入って納得したのか、ガラハッド卿も刃神にそう告げると、他の二人とともにボートへ向け走り出した。
「あ、コラ、ちょっと待て! 俺のダヴィデの剣を…くっ!」
後を追おうとした刃神だったが、その瞬間、彼の太腿に激痛が走り、立ち上がることすらできない。
「チッ! ……マズったぜ……」
去り行く三人の若者を、刃神は苦虫を噛み潰したような顔で睨んだ――。
To Be Continued…
A suivre…




