Ⅸ 冒険ごっこ(3)
ほんの短く輝いた瞬間、キャメロットという名の場所があったことを忘れてはならない。
アラン・ジェイ・ラーナー&フレデリック・ロウ『キャメロット』より
その頃、ウィンチェスターの市街地にある彼らのアジト〝ティ・グウィディル〟では……。
「ハッハッハっ! いや~おもしろいほど今回はうまくいったぜ!」
「ああ。新聞でも〝現代版幽霊の狩猟?〟って、俺達の記事をデカデカと取り上げてる」
その〝ガラスの塔〟の名に相応しく、壁面のほとんどをガラスと鉄骨の骨組みで造った流麗な二階建て建造物の一室で、〝新生円卓の騎士団〟の十二人は自分達の果たした冒険を自画自賛していた。
「みんな、たまげちまっただろうな。本物の幽霊の狩猟が出たかと思ってよ」
今、バカ笑いを上げたラモラック卿ことチャールズ・グリフィスが、同朋の持つ新聞を覗き込みながら満足げに言う。
「そりゃそうだろう。なんせ、真っ暗闇ん中から、突然、中世の騎士が馬乗って駆けて来るんだからな。記事によると、民俗学者や心霊研究家なんかも調査に乗り出してるらしいぜ?」
その言葉に、先程、街で買って来たその新聞を持つトリスタン卿ことポール・ウォーレスが、やはり愉しげな声で答える。
「そうですかぁ。ならもう大成功ですね。これで僕らも〝伝説〟の仲間入りって訳だ。あ、でも、そうすると、ニューマーケットから馬を盗んだのも幽霊の仕業とかいう風に研究家は考えてるのかな?」
「幽霊でもなんでもいいっすよ。今回、いつものボディ・アーマーじゃなくて、本物の騎士の鎧が着れただけで俺はもう満足っす」
「そんなことよりも、これで我ら円卓の騎士団の存在が一躍世に知らしめられたことの方が大事。むしろ、すべてを幽霊説で片付けられて、我々の存在に注目が集まらなくなってしまうのは迷惑です」
二人の会話に、黒いジャケット、格子模様のセーター、牧師のような黒服を着た三人の若者達も、弾薬の詰まった箱や旗のポールを運びながら、それぞれの感想を口にした。
「ま、世間様の評価はどうあれ、作戦は大成功に違えねえよ。やっぱ、ニューマーケットで馬盗んでからサマセットまでの輸送方法が良かったよな。検問でも全然気付かねえでやんの」
「ああ。普通、馬なら家畜用のトラックかなんかで運ぶと考えるところだろうが、まさか、麻酔で眠らせた馬を数頭に分けて、霊柩車や小型のコンテナ車に乗せていたとは神様でも気が付くめえってやつだ。こんな手を思いつくとはさすがランスロット卿! 昔取った杵柄ってとこかあ?」
若年層の意見を聞いて、ラモラック卿とトリスタン卿は新聞から顔を上げると、前方で銃を磨いているランスロット卿――ジョナサン・ディオールの方を見つめる。
「いや、私はただ警察の心理の裏をかいただけのことだ。別に褒められるようなことじゃない」
「こら! ラモラック卿とトリスタン卿! 話すのはいいが、ちゃんと手も動かせ!」
すると、謙遜するランスロット卿の傍らで、ガウェイン卿――アイザック・ウィリアムズが厳めしい顔で二人を嗜めた。
「へいへい。相変わらずガウェイン卿は厳しいなあ」
「やっぱ軍人上がりだけのことはあるねえ」
「うるさい。お前らが緩み過ぎなんだ。ユーウェイン卿とパロミデス卿を見習え。さっきから黙々と仕事をしているぞ」
怒られて、しぶしぶ文句を言いながら剣の手入れを再開する二人に、ガウェイン卿は後にいるユーウェイン卿と呼ばれるジャック・スティーブンスとパロミデス卿を称するアヴドゥル・バットゥータの方を視線で指し示す。
「いやあ、別に黙々という訳でも……」
「ただ普通にしてるだけで……」
見ると、二人は苦笑いを浮かべ上がら、ボロ布で銀色に光る兜をピカピカに磨いている。
「それにモルドレッド卿とガヘリス卿だって、うら若き少女達ながらしっかり働いているではないか」
次にガウェイン卿が目を向けた先では、モルドレッド卿であるミッシェル・ラドクリフとガヘリス卿なるナンシー・ワトソンがボディー・アーマーの修理をしていた。
「フン。私はただ言われた仕事をやっているだけだ」
「ガウェインお兄さま、年齢や性別は関係ないですわ」
ガウェイン卿の言葉に、モルドレッド卿は不機嫌そうに呟き、それに追従するかのようにガヘリス卿もツンとした態度で彼に文句をつける。
「うう…ベディヴィエール卿、あなたからもなんとか言ってください」
皆の反応があんまりだったので、ガウェイン卿は顔をしかめながら、自称ベディヴィエール卿ことベドウィル・トゥルブに助けを求めた。
「ハッハッハ…まあ、二人のはしゃぐ気持ちもわからんではないからな……今回の冒険での皆の働きも大変すばらしいものだった。見よ。ここにある伝説の武器達を眺めるだけでも、我らがいかに偉大な冒険をして来たのかがわかるというものだ」
そう語り、自らの紋章の入った盾を磨く中年紳士の見つめる先には、壁際の専用ラックに掛かったアロンダイトやガラティーン、クレシューズ、マルミアドース、セクエンス、カルンウェナンといったアーサー王伝説に関わりのある刀剣、また、その上の天井近くにはロンゴミニアドの槍が荘厳さをもって飾られている。
ベディヴィエール卿の言に、騎士達も各々の手を止めて、その上に自分達の果たしてきた冒険の数々を重ねながら伝説の武器類を見上げた。
室内を見渡せば、その他にも彼ら新生円卓の騎士団が用いているボディー・アーマーや銃火器類、刀剣類に始まって、先日の〝幽霊の狩猟〟で使用した中世の甲冑から、彼らがこれまでに蒐集した武器以外のアーサー王や円卓の騎士達に関する遺物までもがすべてここに収められている。
ここ、建物地下一階にある倉庫は、現在、彼らの武器庫兼宝物庫として使用されているのだ。ただし、トゥルブ家に伝わっていたエクスカリバーとアーサー王の王冠・王笏・宝珠のレガリア三点セットだけは、いまだ現れぬ現世のアーサー王の代わりとして、建物二階にある円卓の置かれた大広間の方に安置されているのであるが……。
「…………ああ、そうだ!」
そうして、彼らの軌跡を辿る記念館ともいうべき場所でしばし感慨に浸る時間が流れた後、ガウェイン卿が思い出したかのように口を開いた。
「そういえば、そこにある旧トゥルブ家邸博物館から奪還した〝石に突き刺さった剣〟ですが、大き過ぎて置き場がなかったのでこっちに運んでおきましたけど、やはり大広間に持って行った方が良かったですか?」
「んん?」
ガウェイン卿に促されて、ベディヴィエール卿がそちらに目を向けると、専用ラックのある壁の隅に、ワイン樽ほどの大きさの岩に一本の長い剣が突き刺さったものが置かれている。いや、より正確に言えば、その剣は岩に刺さっているというより、その岩に融合するかのようにしてくっ付いた金床へ突き立てられていると言った方が良いであろう。
「あ、そういやガラハッド卿。君、あれ抜くの試してみたかい?」
声につられてベディヴィエール卿以外の者も全員そちらを注視したが、その中の一人、黒いジャケットを羽織った若者が、牧師のような黒服の青年にそう尋ねた。
それは、おそらくアーサー王のもの以外にガラハッド卿が円卓に加わる時に抜いた〝川から流れてきた石に突き刺さった剣〟というものもあるので、そのことを踏まえての質問であろう。
「いや。一応、試してみたけど抜けなかったよ。やはり、あれはアーサー王にしか抜けない剣なんだ。そもそも私の持つべきダヴィデの剣は、あのベイリン卿みたいな双剣の男が持っているようだしね」
その問いに、牧師のような青年は首をふるふると横に振ると、ランスロット卿が旧トゥルブ家邸博物館で相対したという男の話を口にする。
「ああ、あの黒尽くめの男か。私は直に剣を交えたが、確かにあの者は凶暴で剣の腕も立ち、まさにベイリン卿を思わす人物だった」
すると、その名を聞いたランスロット卿も、あの夜の戦闘を思い出して感慨深げに言う。
「なら、きっと彼も私達みたいにベイリン卿の生まれ変わりに違いありませんわ……あ、でも、服装からすれば、黒い鎧を着て、知らずに兄のベイリン卿と戦って刺し違えた弟のベイラン卿の方という可能性もありますわね」
「それを言えば、俺が交戦したあの奇怪な女も、まるでモルガン・ル・フェイのようなヤツだったぞ? 魔法でも使っているかのように宙を自在に飛び回っていたからな」
「ああ、あの女ね。確かに魔女みてえにエキセントリックな動きしてたな。それに、なぜか俺達より先にあの場所にいて、俺達の邪魔しようとしてたしな。きっと、あの女もアーサー王を苦しめた王の異父姉、妖妃モルガンの生まれ変わりに違いないぜ!」
それには、ガヘリス卿、ガウェイン卿、ラモラック卿も食いつき、皆はその話題で一気に盛り上がりを見せようとする。
「………………」
しかし、ベディヴィエール卿だけは〝岩に突き刺さった剣〟を見つめたまま、黙って、彼らの話に加わろうとはしていなかった。
「…? ……どうしたんですか? ベディヴィエール卿」
その様子に気付き、ランスロット卿が怪訝な顔で彼に問いかける。
「ん? ……あ、いや、何。なんでもない………」
そうは答えたものの、彼はなおもそれを見つめたまま、腑に落ちぬという表情をして眉間に皺を寄せている。
彼――ベドウィル・トゥルブがそのような態度を見せる理由……それは、その〝岩に突き刺さった剣〟が紛れもなく旧トゥルブ家邸博物館から奪取して来た物のはずなのに、それに彼はまるで見憶えがなかったからであった。
あの博物館にあったアーサー王関連の宝物はすべて、彼の家に代々伝わる、よく見知った伝世品であるはずなのに、ベドウィルには見た憶えはおろか、そのような物があると聞いた憶えもなかったのである。
「ベイリン卿と妖妃モルガン……遂に僕らにもライバル出現ですね!」
「なんか、おもしろくなってきたっす!」
「いや、おもしろがってばかりではいけない。彼らも悔い改めさせ、正しき道に導いてやらなくては」
一方、そうしたベドウィルの疑問を他所に、若手三人組も新たな強敵出現の話題に興奮気味な声を漏らしている。
「……なんだかよくわからんが……まあ、良いか……」
そんな明るい喧噪の中、ベドウィル・トゥルブは人知れず、まるで狐にでも抓まれたかのような不思議な気分で独りそう呟いた。
「そんなことよりもベディヴィエール卿。この次はどんな冒険をするのだ?」
そこへ、彼の心の内を理解しているはずもないが、彼女も皆の話題にそれほど興味を抱かなかったのか、今度は淡々とした調子でモルドレッド卿が訊いてくる。
「ん? ああ、そういえば、そのことをまだ話していなかったな……」
彼女に答えると、ベドウィル…否、ベディヴィエール卿は、手元の机の上に置いてあった古めかしい茶革の手帳を手に取り、その分厚い表紙を閉じている金具を外して、中程のページを開く。
「〝マーリンの予言書〟にはなんと?」
「うむ……これまでは全員一緒に冒険を行って来たが、こうして十二人の円卓の騎士が揃い、本格的な活動を始めたことだし、我らの念願であったエクスカリバーも取り返した。そろそろ幾つかのパーティに分かれて、それぞれに冒険をしても良い頃のようだ」
続くガウェイン卿の質問を受け、ベディヴィエール卿は本に目を落としながら語る。
「そう。かつてガウェイン卿、トー卿、ペリノア王の円卓の騎士3人が、アーサー王の婚儀の席でマーリンの見せた幻影――白鹿を追う猟犬・その猟犬を連れ去る騎士・その騎士を追う乙女の謎をそれぞれに探求した冒険のように。または、騎士に冒険を与える60歳、30歳、15歳の3人の女性をそれぞれ連れ添っての、ユーウェイン卿、マロース卿、ガウェイン卿の旅のように、各人が自分に与えられた探求を各々に完遂するのだ」
「ふーん……そいつあ、おもしろそうじゃねえか」
「私はなんだか不安ですねえ……」
ベディヴィエール卿の言葉に、ラモラック卿は誕生日プレゼントに胸躍らせる子供のような笑みを浮かべ、一方、ユーウェイン卿は心配そうに眼鏡の奥で眉をひそめる。
「なに、分かれて冒険するとはいっても、これが真に初めてではない。これまでにもカナーヴォン、フォルカーク、エクセターのキャッシュ・ポイントから我らが活動するための税を徴収した時には、幾つかのパーティに分かれて行動した。今回行う冒険も似たようなものだ。それにな、ユーウェイン卿。勇気を持ってその不安に打ち勝ち、危険な冒険を達成してこその騎士というものだ」
「はい……そうですね。確かにその通りです。臆病風に吹かれるなど、騎士道に反する行いでした」
ベディヴィエール卿に諭されたユーウェイン卿は、ひどく反省した様子で居住いを正して己の未熟さを謝る。
「それで、その冒険とはいかなるもので、誰が何をすれば良いのですか?」
すると、今度はその傍らで、冒険を待ち望んでいるという目をしたパロミデス卿が訊く。
「うむ……ここにその行うべき冒険の内容と各冒険を行う騎士の人数が記されているが、誰と誰がどの冒険をするのか、その具体的な者の名は記されていない……そこで、それについては私がマーリンの代理人として、まことに勝手ながら決めさせてもらいたいと思うのだが、どうかな?」
「ええ。その辺はアーサー王宮廷の〝酌人〟たる貴方にお任せします」
答える代わりにベディヴィエール卿が皆へ了承を求めると、ランスロット卿は考える間もなくそう返し、他の者達もそれに続いてそれぞれに頷く。
「では、冒険の内容を述べるとしよう……先ず一つ目は、ダラム州の〝アーサーの丘〟だ。この土盛の中には宝が埋められており、それをアーサー王の騎士達の亡霊が守っていると伝えられている。その宝を手に入れることがこの冒険の目的だ。土盛を掘るとなると三人は必要であろうが……ガラハッド卿、ボールス卿、パーシヴァル卿。貴殿ら聖杯探究の三人組に任せよう」
「僕達ですか?」
確認するように黒ジャケットの若者が聞き返す。
「そうだ。ダラムはプリンス・ビショップが治めた宗教の町であり、その聖職者の居城・ダラム城も残っている。どこか聖杯の城へ向かう聖杯の探求の冒険を彷彿とさせるではないか?それに現在、そのダラム城の一部が学生の宿舎となっているダラム大学の町でもある。学生であった貴殿らにはお似合いというものだ」
「確かに……僕達にぴったりの冒険かもですね」
「ええ。町にはダラム大聖堂もありますし、まさに私達のためにあるような冒険です」
「聖杯探求に似た宝探しなんて、すごくおもしろそうっす!」
濃茶の革の手帳から目を上げて言うベディヴィエール卿に、黒ジャケット、牧師の黒服、格子模様のセーターの若者三人は目を輝かせて口々に呟いた。
「二つ目はウェールズの北西端。アングルシー州のアングルシー河畔にある〝アーサーの洞窟〟だ。ここはアイルランド軍との戦闘の際にアーサー王が避難した場所とされ、かつて、そこに立っていた環状列石の真ん中に王の財宝が隠され、魔法の生き物達が守っていたとも伝えられる……その財宝を探すのが二つ目の冒険だ。これにも三人が必要だが……これはロッド王の息子三人組ということで、ガウェイン卿、モルドレッド卿、ガヘリス卿に行ってもらおう」
「イエッサー! 二人のお守りは任せてください」
二つ目の冒険の指名に、ガウェイン卿は軍隊式の敬礼を返してから、二人の少女の方をちらりと見て言う。
「子供扱いはやめろ。そのくらいのこと、わたし一人でも十分だ。むしろ自分一人で冒険がしたい」
「まあ、よろしいじゃないですか、モルドレッドお兄さま。わたくしはお二人のお兄さまと一緒に冒険ができるなんて大満足ですわ」
その扱いにモルドレッド卿はいつもの醒めた態度で不平を口にし、されにそれを無邪気にはしゃぐガヘリス卿がなだめる。
「では決まりだな。次に三つ目は、ハートフォードシャー州ドーストンにある〝アーサーの石〟だ。一説に、この石からアーサー王が〝石に突き刺さった剣〟を引き抜いたとも云われているが、この石の下にアーサー王、あるいはアーサー王によって屠られた王が埋葬されているという言い伝えもある。そこを掘って、埋められているものがなんであるかを確かめるのだ。これにも三人一組で行ってもらうが……ユーウェイン卿、パラミデス卿、ラモラック卿、これは貴殿ら三人の冒険だ。まあ、この三人にした理由は特にないがな」
「え……ないんですか?」
「なんだ、宝探しじゃねえのかよ? 俺は宝探しの方がいいな」
「遺体の発掘とはなんだか薄気味悪いですが……精一杯、がんばります」
別段、前世の因縁、現世での共通点ともにないパラミデス卿、ラモラック卿、ユーウェイン卿の三人は、逆らうつもりはないながらも、ベディヴィエール卿の指示にそれぞれ不服そうな感想を漏らす。
「四つ目は、スコットランドのストゥにあるウェデイル聖マリア教会から〝アーサーの旗印〟――即ち、ネンニウスによれば、グイニオンの戦いの際にアーサー王が身に付けていた聖母マリア像の描かれた布の切れ端を持って来ることだ。これは発掘を伴わないので一人による冒険とし、ランスロット卿、貴殿にこの栄誉を与える。『荷馬車の騎士』で、メレアガンス卿に攫われたグウィネヴィア妃を助けた時のように、カルボネックのペレス王の娘エレインを煮えたぎる熱湯の風呂から救出した時のように、また、シャルロットの姫君エレインを父親が閉じ込めていた塔より解き放った時のように、聖母マリアをその手で救い出すのだ」
「はっ! サー・ランスロットの名に恥じぬよう、その務め、しかと果たしてみせます」
ランスロット卿は背筋を伸ばすと、古の騎士のような立ち居振る舞いで、その名誉ある使命を謹んで拝領した。
「そして、五つ目はペンザンスの東、マラザイアン沖の〝セント・マイケルズ・マウント〟だ。フランスの〝モン・サン・ミシェル〟でアーサー王が巨人を退治した伝説にちなみ、モン・サン・ミシェルとは姉妹修道院の関係にあって外観もそっくりなこの島において、最上階の部屋に我らの円卓の旗を掲げ、我々円卓の騎士団の正義を示して来てもらおう。そもそも、この島には後に円卓の騎士となるジャック少年の巨人退治なる話が伝わっており、もしかしたら巨人退治の伝説の元はこちらなのかもしれないし、また、ここはアヴァロンの候補地の一つでもある。この冒険は最後に残ったトリスタン卿、貴殿に託す。貴殿はペンザンスの出身でもあるし、伝説ではトリスタン卿もこの島に逃げ込んだことがあるという話だからな」
「ああ、任しときな。そこには何度か行ったことあるし、あそこら辺は俺にとっちゃあ庭のようなもんだ」
トリスタン卿は、懐かしい故郷近くの名所の名に胸を張って大きく頷く。
「さて、これで各人、自分の行う冒険が何かわかったことと思う。期限は一週間。一週間後の正午にそれぞれ冒険の結果を持って、キャメロットの有力候補地の一つ、サマセット州のサウスキャドベリー丘にて再び相見えるとしよう」
「そういえばベディヴィエール卿。今の中にあなたの名はありませんでしたが、あなたは今回、冒険をなさらないのですか?」
それぞれの冒険を発表し終え、話を締めくくろうとしたベディヴィエール卿に、そのことにふと気付いたランスロット卿がなんとはなしに尋ねてみる。
「ん、私か? 無論、私自身にも皆と同じように冒険が用意されている。円卓の騎士の中では最も古くから伝説に登場する、このベディヴィエールに相応しい冒険をな」
その何気にされた質問にベディヴィエール卿は茶革の手帳をパタンと閉じると、不敵な笑みを愉快そうにその口元に浮かべて答えた――。
To Be Continued…
A suivre…




