Ⅶ 円卓騎士の鉄槌(2)
ほんの短く輝いた瞬間、キャメロットという名の場所があったことを忘れてはならない。
アラン・ジェイ・ラーナー&フレデリック・ロウ『キャメロット』より
その翌朝。ピカデリーの緑男の骨董店……。
10時の開店を控えたこの店で、石神刃神は店の片隅に置かれた応接用のテーブルに腰を据え、新聞片手に優雅な朝の紅茶を啜っていた。
「うちはカフェじゃないんじゃがのお……」
彼の催促で紅茶を煎れさせられた店主のウォーリー・フォレストは、白い眉毛を「ハ」の字に寄せて迷惑そうに言う。
「気にするな。ちょうど朝飯代わりに一杯お茶が飲みてえと思ってたんだよ」
そんな店主の迷惑顧みず、スモーキーなプリンス・オブ・ウェールズの香りを存分に堪能しながら、テーブルの上に置かれたスコーンに手を伸ばして刃神は答える。
「お茶が飲みたければ、どこか他所へ行ってほしいもんじゃの。こちらは開店の準備で忙しいんじゃよ」
「フン。見栄を張るんじゃねえよ。どうせ、まっとうな客なんか来ねえだろうが」
「失礼じゃの。一応、表向きは普通の骨董屋として店を構えておるからの。たまにはカタギのお客も来るんじゃよ。それに毎日ちゃんと決まった時刻に店を開けてにゃ、当局に目を付けられるかもしれんしな…」
カラン、カラン…。
カウンターの中でてきぱきと手を動かしながら店主がそう反論をしかけたその時、突然、入口のドアに付けられた鐘が荒々しく鳴り、一人の男が転がるように入ってきた。
「ご、ごめんください! ご店主はおいでですか⁉」
アンティークな木製のドアを閉めるのも後回しに、入るなり慌てて店主の所在を確かめるその人物を覗うと、それはトレードマークのソフト帽を被った、白いシャツ姿のアルフレッド・ターナーだった。
「ん? ……ああ、お前はあの詐欺師…」
「ああっ! 旦那も来てたんすか? そいつはちょうど良かった!」
アルフレッドの方も刃神の存在に気付き、どこか安心したように声を上げる。
「どうした? やけに慌ててるようじゃねえか?ヤツらについて何かわかったことでもあんのか?」
「わ、わかったも何も、それが大変なんっすよ! あ、いや、何かわかったっていうより、余計、訳がわからなくなったって感じなんすけどもね……」
「ああん? 言ってることが理解できんぞ…」
気が急いているせいか、今一何を言いたいのかよくわからぬアルフレッドの言動に、不機嫌そうな皺を眉間に作る刃神だったが。
「ウォーリーっ! もしかして、あの日本人の危ないヤツ来てる⁉」
今、閉まったばかりのドアが鐘の音とともに再び開いたかと思うと、今度はマリアンヌが息を弾ませて現れたのだった。
「おお、マリアンヌ嬢ちゃんか……」
「ん? 怪盗小娘……」
あのクリーム色の仕事着ではなく、白いウールのオーバーコートを羽織った、どこにでもいる普通の若い女の子といった格好のマリアンヌを見て、店主と刃神が同時に口を開く。すると、彼女は店主の返事を待つまでもなく、刃神と、それからアルフレッドもそこにいることを確認して言葉を続けた。
「ああ、詐欺師さんも来てたのね! ってことは、もう事件の話は知ってるわよね?あたしは今朝のニュースで見て知ったんだけど」
「事件? ……一体なんの話だ? てめーら、さっきから言ってることが全然、要領を得てねえぞ?」
尋ねるマリアンヌに、刃神はさらに不機嫌そうな顔をして彼女とアルフレッドを交互に睨みつける。
「えっ? ディビッド・アダムスのこと、まだ知らないの? もしかして詐欺師さんも知らないとか?」
「あ、いえ。実はその事件の現場に居合わせちゃったりなんかしちゃいまして……今、ちょうどその話をしにここへ来たとこなんすよ」
今度はマリアンヌの方が二人の顔を見比べると、アルフレッドは頬を掻きながら、自分の運のなさを自嘲するかのように苦笑いを浮かべて答えた――。
「――とまあ、そんな訳なんすよ。で、一旦は逃げ出したものの、しばらくしてからもう一度、アダムスの屋敷に戻って、野次馬に紛れながら警察やマスコミの情報を聞き集めたって訳です。なんせ、あん時は慌ててたもんだから、アダムスの旦那の死体も拝まずにトンズラしましたからね……ま、もし拝んじまってたら、しばらくローストビーフ食えなくなってたでしょうけど」
応接テーブルの席についたアルフレッドは、刃神と、同じくその隣に座ったマリアンヌに、昨夜、自分が巻き込まれたアダムス邸襲撃の際の模様を詳しく話して聞かせた。
「いやあ、まさか二日連続、騎士の一団に襲われるとはねえ……おかげさんで、またも着の身着のまま逃げなきゃならず、昨日、新調したばっかだってのに、今日もジャケットとネクタイを買わなきゃならなくなりましたよ」
一通り話し終わると、アルフレッドは自分のYシャツ姿を見せびらかすようにして、そう二人にぼやく。
「なるほどな……ってことは何か? 今回、ヤツらはアーサー王のお宝が目当てじゃなく、アダムスを葬るために襲って来たっていうわけか?」
そのぼやきを無視し、腕を組み、じっと黙って聞いていた刃神が確認するように尋ねる。
「ええ。その親分らしきヤツの話し振りからすると、どうやらそのようで。なんでも、アダムスがアーサー王さんを金儲けに利用しようとしたのが気に食わなかったみたいっすよ?」
「そうか……俺も、まさかこんなに早くまたあのふざけた野郎どもの話を聞くことになるとは思ってもみなかったが……これで一つはっきりしたぜ。ヤツらはアーサー王グッズを欲しがるただのマニアじゃなく、完全に頭のイカれた狂信者どもだ。ここにいる三人なんざ、即刻、不敬罪で死刑確定だな」
アルフレッドの答えに、刃神は虚無的な笑みを口元に浮かべながら、笑えない冗談を口にする。
「実際、俺はもう二度も死にそうな目に遭いやしたよ。まったく、ツイてないというかなんというか……警察の話じゃ、やっぱり今回も俺以外、居合わせた連中は全員皆殺しにされちまったみたいで……」
「あら、そんな中で二度も生き残るなんて、むしろツイてたってものよ、ムシュー・ターナー。で、アダムスは死ぬ間際に、そのリーダーみたいだったののことを〝ベドウィル〟と呼んでたのね?」
不運を嘆くアルフレッドに、今度はそのぼやきを拾ってマリアンヌが訊く。
「あ、はい。確かにそう言ってましたね。〝お前はベドウィル…〟って。それが、ヤツらの親分の名前っすかね?」
「〝ベドウィル〟というのは円卓の騎士の一人、ベディヴィエール卿の別名じゃな。もしくはベディヴィアとも言うの」
するとそこへ銀のお盆を持ってやって来た店主が、アルフレッドの問いに答えて説明した。
彼は三人に注文されて、刃神のお茶のおかわりとマリアンヌのカフェオレ、アルフレッドのブラックコーヒーを用意して来たのである。さらには朝食を食いっぱぐれたアルフレッド用にサンドイッチなんかもお盆には載っかっている。
「ほれ、奪われたエクスカリバーを代々伝えてきたトゥルブ家のご先祖様じゃよ。円卓の騎士であるとともにアーサー王の宮廷を取り仕切る〝酌人〟で、王の死を看取り、エクスカリバーを湖の貴婦人に返した人物じゃ」
「ああ! トゥルブ家のご先祖のお名前っすか? ……あ、こりゃどうも」
コーヒーカップをテーブルに置きつつ説明を続ける店主に、アルフレッドは少々驚きながら頭を下げた。
「メルシー、ウォーリー」
「まったく。うちはカフェでもサロンでもなく、骨董屋なんじゃけどのう……」
マリアンヌの前にカフェオレを置き、ティーポットからおかわりを刃神のカップに注いだ店主は、カーネル・サンダース人形のような顔をしかめて再び文句を口にする。
「だから、細けえことは気にすんなって。それよりも、その〝ベドウィル〟だ」
しかし、そんな店主に詫びるどころか感謝の気持ちすら微塵も表すことなく、刃神は話の先を急ぐ。
「この前見た様子からすると、どうやらヤツらの中に〝アーサー王〟を名乗る大それたバカはいねえようだったし、そうなると、確かに酌人であるベディヴィエールなら円卓の騎士達を統率する役柄としては申し分ねえ。やつらの頭目はおそらく自分のことをベディヴィエール卿だとぬかしてやがるアホウだ。アダムスの言葉はきっとそのことを言ってたんだろうぜ」
「それで、自分が王より託されたエクスカリバーを悪徳金貸しの手から奪い返す騎士ごっこに興じてるってわけね。そのムシュー・ベディヴィエールは」
刃神の説に賛同し、マリアンヌも相槌を打つ。
「そういうこった。つまりは、子孫の家に伝わってたアーサー王のお宝をベディヴィエール卿ご本人様が取り返してくださったってことだな。となると、ヤツらの正体は正真正銘、円卓の騎士団の亡霊かもしれねえな、ハハッ!」
「まあ、そのご子孫は家宝ともども全財産奪われた揚句に、当主は気が狂って廃人になっちまったようですからねえ。ご先祖さまが恨んで出てもおかしかありませんや……あ、でも、アダムスの旦那はどうしてそいつがベディヴィエールだとわかったんでしょうか? 別に顔見知りでもないでしょうに……それに、今際の際にわざわざそんなこと言うってのもなんか変な気が……」
一方、思ってもいない戯言に笑う刃神に対し、アルフレッドはどこか納得いかないという表情を浮かべると、首を傾げながら素朴な疑問を口にする。
「そいつはまあ……確か、ディビッド・アダムスもかなりのアーサー王通だったんだろ? だったら、やつらの下げてる盾でも見りゃあ、そうだとわかったんじゃねえか?いっちょう前にそれぞれの紋章が描いてあったからな」
「うーん…そうですかねえ……ベドウィル……そういえば、なんか違うとこでもその名を聞いたような……」
少し考え、そう理屈をつける刃神だったが、何か引っかかる所でもあるのか、アルフレッドはまだ納得し切れていない様子である。
「ま、いずれにしろ、リーダーの演じてる役柄がわかっただけで大した収穫じゃないわね。で、あなたはどうするの? ムシュー・ターナー。もう雇い主はいなくなっちゃったことだし、ここら辺でこの件からは降りる?」
一方、マリアンヌは、ぶつくさ呟いているアルフレッドに気を留めることなく、その議論はこれでお終いとばかりに彼に尋ねる。
「とんでもない! まだギャラの半分ももらってないんすからね! ほんとだったら五十万ポンドもらえるとこだったんすよ⁉ 50万っすよ? 50万! こんだけ苦労して、しかも、こんな目に遭わされたってのに、無報酬のまま手を引けますかって!こうなったら、例え火の中水の中、地獄の果てまでやつらを追いかけて、いただくもんはちゃんといただいてやりますよ!」
だが、マリアンヌのその問いに対し、アルフレッドは首をフルフルと横に振ると、逆にいつになくやる気を見せて続投を宣言するのだった。
「あ、ってことで、お宝奪還したら俺にも分け前くださいね……で、俺の方はそんくらいっすが、そっちでは何かわかりました?」
「いいえ。昨日の今日だもん。新しい情報はまだ何も摑めてないわ。目下調査中よ」
今度はアルフレッドの質問に、マリアンヌも首を横に振ると溜息混じりに答える。
「こっちもだ。昨日、このオヤジに英国内にあるアーサー王関連の武器の所在を調べてくれと頼んだんで、今日はその結果を聞いて、これから目ぼしい所に行ってみようかと思ってたとこだぜ」
刃神も顎で店主の方を指し示しながら、本格的な調査はまだこれからであることを二人に告げる。
「あ、ちなみにあたしも昨日、ロンドンに帰ってすぐにここへ来てウォーリーに聞いたけど、やっぱりあんな騎士の格好した盗賊団は知らないそうよ。ねえ、ウォーリー?」
「ああ。そういった者の噂は聞いたことないのう……」
同意を求めるマリアンヌに、店主もそう答えて首を傾げた。
「そうっすかあ……んじゃ、今んとこわかってるのは、結局、ヤツらが円卓の騎士団を名乗るアーサー王マニアのカルト集団だってことだけっすね……」
昨夜、再びあんな目に遭ったというのに、実は一昨日よりまるで進展のない皆の報告を耳にすると、先程の欲にかられたやる気も萎えてアルフレッドはがっくりと肩を落とす。
「だな……ま、予想外にヤツらが早く動いたが、こっちはまだ始めたばかりだ。勝負はこれからだぜ」
「そうね。とりあえず、前に決めた線で調べていくしかないわね……」
刃神とマリアンヌも落胆まではしていないが、あまり明るくはない表情でそれに頷く。
不意に言葉が途切れ、しばし沈黙が店内を包み込む……それを破ったのは、いまだお盆片手にテーブルの傍らに佇んむ店主だった。
「……おお、そういえば、訊くのを忘れとったの」
「んん?」
その声に、刃神、マリアンヌ、アルフレッドの三人は顔を上げてそちらへ視線を向ける。
「いやの。昨日は甲冑着けた強盗なんていうとんでもない話聞いたもんじゃから、すっかり訊くのを忘れてしまったんじゃが、その奪われたエクスカリバーってのはどんな感じじゃった? 形状は? やはり古いもんじゃったかの?」
表の骨董屋兼裏の古美術品ブローカーとしての血が騒ぐのか、店主は興味津々な眼差しで三人を交互に見つめて尋ねる。
「おお、そのことか。確かにオヤジも気になるとこだろうな。よし、いいだろう。特別にこの俺様が教えてやるぜ」
そんな店主の質問に、同じくこういった武器の話が嫌いではない刃神も身を乗り出して積極的に語り始めた。
「長さは35インチ(約90センチ)くらいだな。なかなか古いもんだっぜ?鍔はなくて、峯側にやや湾曲した銀の柄の先端にケルト十字文様の柄頭が付いてた。でな、おもしれえことには、想像してたような両刃の剣じゃなく、片刃だったんだよ。でけえナイフみたいな感じだな」
「ほお! 片刃じゃたか!」
刃神のその言葉を聞くや、店主はよりいっそう目を輝かせて歓喜を含んだ声を上げる。
「それは、もしや〝スクラマサクス〟ではないかの?」
「ああ、俺もそう思った」
聞き慣れぬ単語を口にする店主に、刃神も意味ありげな笑みを浮かべて答える。
「あ! そんなこと、今は亡きハンコック博士も確か言ってましたね」
すると、二人の説を裏付けるかのように、アルフレッドも在りし日のヘンリー・ハンコック博士を懐かしみながら口を挟む。
「お! そうか! てめえの相棒だったっていう考古学者もそう言ってたのか?そいつはますます、あれが本物のエクスカリバーである可能性が出てきたってもんじゃねえか」
「ねえ、どういうこと? そのスクラマなんとかって何?」
アルフレットの発言を聞き、さらにニヤニヤと不気味に口元を歪める刃神にマリアンヌが尋ねた。
「ん? ああ、〝スクラマサクス〟ってのはな、ゲルマン固有のナイフ〝サクス〟のデケえヤツでな、サクソン人のサクソンもここから来てるんだが、4世紀~11世紀にかけてのヨーロッパじゃ、この片刃の刀剣がサクソン人なんかのゲルマン諸族を中心に戦争用の武器として使われてたんだ」
「ふーん。サクソン人の剣ねえ……で、それがエクスカリバーとどう関係があるわけ?」
「俗に〝アーサー王の時代〟と呼ばれる、もし実在していたとするならば、アーサー王のモデルとなった歴史上の人物が生きていた時代は五、六世紀。そのスクラマサクスが盛んに使われていた時代とかぶるんじゃよ。つまりな、エクスカリバーの形状はそのスクラマサクスだった可能性が高いんじゃ」
刃神の説明を聞いてもピンと来ないマリアンヌに、店主が補足説明をする。
「現に『サー・ガウェインと緑の騎士』という物語の古い挿絵では、アーサーや騎士達がこのサクスと思しき片刃の刀を持っているし、中世初期のゲルマン諸族では戦士の最後の武器とされ、時にその持ち主の地位を表す物ともされていたらしいしの。このサクスに対するイメージは、どこか英雄の剣、王者の剣としてのエクスカリバーを連想させる」
「えっ? ってことは、つまりその……あのエクスカリバーは本物…かも?」
「ああ。その可能性がいっそう強まったってことだ」
ようやく彼らの言いたいことを理解したマリアンヌに、刃神はどこか満足げな口調で答えた。
「ま、鞘の方は後世のもんだろうけどな……どうだ? 余計欲しくなっただろ?だが、あのエクスカリバーは俺の取り分だからな。忘れんじゃねえぞ?」
「わ、わかってるわよ、そんなの……あの剣が本物となると、他の王冠とかだって本物の可能性が高まるわけでしょ? あたしはそっちを貰うから別にいいわよ」
刃神が改めてその取り決めを確認すると、マリアンヌは意地を張りながらもかなり悔しそうに言う。
「あ、そんじゃ、俺の分け前は、そいつをマリアンヌお譲さんと山分けにするってことでよろしくお願いします」
「はあ? 7:3に決まってるじゃない。もちろん、あたしが7であなたが3ね」
それを聞いて、思い出したかのように自らの権利を主張するアルフレッドだったが、マリアンヌは有無を言わさずその分配率を訂正する。
「ええ⁉ な、なんでそうなるんすか?」
「当ったり前じゃない。あなたは本来、アダムスから金を貰うってことで話がついてたんだから。本当なら9:1にしたいとこを寛大にもそうしてあげてるんだからね。嫌なら降りてくれても構わないわよ?」
「そ、そんな殺生なあ……」
そうして欲深な者達の低俗な遣り取りがなされる傍らで、ぽつりと、店主が感慨深げな表情をして呟く。
「それにしても、わしの不安通り大変なことになったの……これはやはり、ダヴィデの剣による呪いかの?」
「ん? …ああ、その話か。そういや、あの騎士達にもベイリン卿って言われたぜ」
その独り言のような呟きに、刃神は先日、ここで店主と交わした話と、一昨日の晩の戦闘の時のことを思い出して答える。
「呪い? それ、なんの話?」
多少興味を惹かれたのか、マリアンヌも二人の会話に割って入る。
「ああ、いや、なに。この前、そんな話題になったんじゃがの。聖杯伝説に登場する双剣の騎士ベイリン卿は、本来、ガラハッド卿のものとなるべき剣を抜いてしまい、その呪いで不運に見舞われることとなるんじゃが、同じくガラハッド卿のものであるダヴィデの剣を持ったこのサムライの兄さんが、どうにもそのベイリン卿と重なっての。何か悪いことがあるんじゃないかと、少々心配しておったんじゃが……」
「ケッ。オヤジも以外と迷信深えな。別にこんくれえのこと、不運でもなんでもねえよ。ただ、アホウどもに邪魔されただけだ」
信妙な面持ちで語る店主の不安を、刃神は吐き捨てるかのようにして否定する。
「へえ~おもしろいわね。ま、円卓の騎士団が出てきたり、今回は何かにつけてアーサー王が絡んできてるし、確かに因縁めいてるとは言えなくもないわね」
「俺はもう、その呪いを受けてか、充分不運に見舞われてますけどね……」
マリアンヌとアルフレッドの二人も、それぞれに素直な感想を述べる。
「フン。むしろ、おもしろくなってきたってもんじゃねえか。アーサー王伝説といやあ、冒険と探求の旅に明け暮れる騎士達の物語だ。せっかく円卓の騎士団を名乗る物好きな野郎どもが現れたんだからな。こっちもご期待通りベイリン卿になりきって、エクスカリバー探究の物語を紡いでやるとするぜ」
刃神は脇に置いたダヴィデの剣の袋を摑むと、曇った表情を浮かべる店主にそれを見せつけるようにして言った。
To Be Continued…
A suivre…




