3 黒の悪魔が悩む理由
とある県に存在する村上学園は三つの科が存在する。
一つは【黒の悪魔】皇慧星も所属する迷宮攻略科。
この迷宮攻略科はダンジョンの中に入って資源やアイテムを確保する者達でこの学園の8割を占めている実質のダンジョン攻略の実行部隊である。
次に迷宮支援科。
この科に所属する者達は外部の団体などに所属して迷宮内の資源やアイテムを買い取り、逆に迷宮攻略科に売ったりして金銭を儲けている。
以前は迷宮商業科と呼ばれていたが如何せん学生がお金儲けを率先してやるというイメージが強すぎて世間体に悪かったため支援科という名目に変更された。
もちろん名称が変わったからと言ってやっていることに変わりはない。
そしてこの科ではまれに支援科に所属しながらダンジョンを攻略するものもいるが攻略科よりは活発では無い。
最後に迷宮情報科。
上記二つの科から情報を仕入れダンジョン攻略の情報をまとめ上げる者達。
この科は一番人数が少ないが非常に必要な攻略の戦力でもあるため国から援助金も出ているので待遇は悪くない。
これらを簡略呼びで攻略科、支援科、情報科と呼ばれている。
そこで攻略科の授業はどうなっているかと言うと基本的に個人がどの授業に出るかは自由となっている。
言ってみればダンジョンが出来てからまだ十年しか経っておらず、そこには間違った情報もあるのだ。
そのため教師の数も不足しており、基本的に教壇には情報科の生徒が立つのである。
その情報科の生徒をサポートするように大人がいる、それがこの村上学園迷宮攻略科の授業風景なので生徒が生徒に物を教えると言う中々珍しい光景でもある。
「五階層までのモンスターの特徴は獣が多く、六階層からはゴブリンを基本とした鬼が多い。そのために二足歩行の人型との戦闘があるのは六階層からいきなりとなるので十分に対人戦闘の訓練をしてから臨んでもらいたい。しかしときどき……」
キラリと逆三角形のメガネを光らせながら授業をする生徒の話を適当に聞き流しながら慧星は九階層最奥でのできことの解決策を考えていた。
その答えはすでにパーティーを作るしかないと答えは出ているもののそこが一番難しい話なのである。
何人の人間で構成するかはもちろん、その人間の得意なことも特化させるかバランス良くさせるかもある。
そして慧星自身が募集したとして一体何人の人間が集まるかということも問題なのだ。
季節は夏。
今学園は春を通り越して夏という時期に入っているせいですでにパーティーの作成の準備は完了して出来上がったパーティーの連携を高める時期に入ってしまっている。
有能な人材などとうの昔にどこかのパーティーに入っており、ましてや慧星自身その称号からたくさんのパーティーからの誘いを断っているがために無駄に敵が多かったりする。
また慧星自身人付き合いが得意な方では無いのだ。
そんな自分のパーティーに入ってくれる人などいるのだろうかと慧星はまた一つ溜め息を吐くのであった。