1 それが落ちてからの十年間
今より十年昔の話。
地球にそれは近づいていた。
それに気付いたとある国が軌道を逸らすためにミサイルを撃ち込むもそれはミサイルの爆発すら軽々と防いで地表へと激突する。
途端に世界であらゆる天災が巻き起こる。
地形や気候が変わるほどのそれは容易く人の命を奪い、生活圏をも変貌させる。
それだけならまだよかった。
さらに最悪なのは一部の地形が魔境へと変わったのである。
乱伐により禿げた岩山が見たことも無い木々で覆われる秘境へと変わり、大人気の遊園地が異空間へと飲まれて怪物溢れる危険地帯へと変わり、もともと悪い風評の多い土地などはまるで呪いのように魔境へと変貌した。
そしてそこから湧き上がるように生まれた新たな生命体が人類へと襲い掛かって来たのである。
それらを人はモンスターと呼び、モンスターを生み出すその場所を人々はダンジョンと呼んだ。
こうして人々は未曾有の窮地に立たされた。
ように思われた。
確かにダンジョンから溢れるモンスター達は脅威であったがそれは人々の強さがそのままであり続けたらの話である。
人々はモンスターを直接、あるいは間接的に倒すと強くなることを知った。
しかもそれはダンジョン内であればさらに強くなることを知ったのだ。
強くなるのは単純な力だけでは無い。
特殊能力のスキルと呼ばれる超常の力、膂力や体力と言った生命活動に直轄する力、さらには寿命も延びると言う様々な恩恵をモンスターを倒すことで得られることが判明したのだ。
それだけではない。
なんとダンジョンはモンスターだけではなく無限に物が沸くという異世界とも言うべき場所であった。
それは水であり、植物であり、鉱物であり、新たなエネルギーなどなどまさに人間の欲望が詰まったような宝の宝庫であった。
そして宝もそれだけではない。
アイテムと呼ばれる薬、宝石、装飾品、本などのそれらは万病を治し、異界の力を得られ、万や億を超える額の美術品であった。
そうと分かれば人間など分かりやすい生き物である。
モンスターという資源込みの侵略者としのぎを削りながらも巨万の富を得られ、無限の力を得られるダンジョンの攻略を始めたのである。
そしてそこを攻略するための軍事施設兼学校を作って生徒を育てる国が続々と出来上がるのも自然の流れであったのだ。