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呼ばれしモノの名は

作者: 新戸克太
掲載日:2007/10/06

 チリンチリンと呼び鈴が鳴った。ご主人様のお目覚めだ。もちろん私はもう2時間も前から起きて、朝のすべての準備を整えている。


 寝室をノックし、恭しくお辞儀をして枕元へ。


「お早うございます。お目覚めはいかがでございますか」


「ああ、お早う。きょうはわりに気分がいいな。後で少し散歩でもしよう」


「それはそれは結構でございます」


「朝子は連れてきたか」


「はい、ここにお連れしてございます」


 私は手に持った新聞の朝刊をご主人様に渡した。


「鏡子はどこにいる」


「はい、ここにおいでになります」


 私は枕元にある老眼鏡をとって手渡した。ご主人様は眼鏡をかけると、ちょっと顔をしかめた。「やっぱり変だな。姉の方がどうも見づらくていかん。医者に連れていくべきかな」


 姉というのは右目のレンズのこと。左目は妹である。


「ところできょうはブレディに会いたい。少しグラマーなのをな」


「はいかしこまりました」


 ブレディとは洋風の朝食のことである。和風はタマ子とご主人様はおっしゃる。


 5分とかからぬ早業で私はボリュームたっぷりの朝食を作り、寝室へ運ぶ。


「ピアスさまとチョッピーさまはこちらにおいでになります」


 ピアスとチョッピーとはもちろんフォークとナイフのことである。


 朝食が終わると、ご主人様は散歩に出ようとおっしゃった。


「伸子はどうしている」


「はい、玄関でお待ちでございます」


 玄関に出てこられたご主人様に杖を渡す。


「あゆみさま姉妹はこちらに控えておられます」


「ん、そうか」


 ご主人様はその靴をお履きになり、あらかじめ用意しておいた芳枝姉妹を左右の手にはめられ、理佳さまをおかぶりになり、門口に立たれた。


「ではお気をつけて行ってらっしゃいませ」


「ん」


 1時間ほど経って、ご主人様はお帰りになった。


「おい、爪楊枝はどこだ」と大きな声がする。私は慌てて玄関へ出た。


「はい、わたくしならここに」


 ご主人様は安心したようにおっしゃった。


「なんだ、こんなところにあったのか」


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― 新着の感想 ―
[一言] ブラックですが、笑えました。物が来ることは予想していたものの、つまようじという選択がナイスです。
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