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4話

 またまた、短いです。

 そして、少し暗いです。


 もしかしたら、二度と家には戻れないかもしれません。


 グレースさんの知人である魔術師、シュタイナーさんと会って暫く経ちました。

 彼は僕の状況をあらかじめ聞いて知っていたのでしょう。

 長い時間をかけて、僕に彼が推測し得る限りの現在の状況と、僕が還れる可能性を教えてくれました。

 率直に言ってあまり見通しはよくありません。

 今現在、召喚や転移の専門魔法使いですら異なる世界への移動というのは不可能なのだそうです。

 そのため、僕がこの世界に落ちた原因自体が不明であり、同じことがまた起こる可能性は高くないというわけです。

 この世界には人間以外にも知恵ある種族が多く存在します。

 エルフやドワーフ、龍や一角獣といった幻獣、多種多様な種族が存在します。

 そんな彼らですら、異界に渡る術は知らないだろうとシュタイナーさんはハッキリと断言しました。

 また僕がこちらに来た時に現れた場所も問題なのだそうです。

 何者かが僕を呼び寄せたなら、近くに誰かがいたはずです。

 しかしながら、僕がこちらに来た時に周囲に人はいませんでした。

 また、黒い森に誰かが侵入すればグレースさんが気付かないはずがないのです。

 つまり、僕がこちらに来たのはほぼ100%の確率で偶発的なものなのです。


 シュタイナーさんに会うまでの一月、もしかしたらとその可能性は考えていました。

 それでも、グレースさんが最もこの分野では信頼出来ると言った魔法使いに「還れない」可能性が高いと言われれば、僕は動揺せざるをえませんでした。

 

 元の世界で特に何がしたかったかと問われても直ぐに即答はできません。

 それでも、大学の講義やバイト先での時間、家族や友人とのたあいのない会話は、僕にとって日常で切り離せないものだったのです。

 それを失うというのがどういうことなのか想像できません。

 もう二月ほどこの世界に居ますが、どうやっても二度と彼らと会えない、存在を感じられないというのが理解できません。

 それなのに、時に叫びたいほどの激情が僕を襲い、気が付けば眠られない日々が続いています。

 夢で見る彼らは笑っているのに、僕はその名をどうしてか呼ぶ事ができぬまま目覚めるのです。

 浅い眠りを繰り返して、長い夜をただ寝台の上でうずくまって過ごします。

 もう僕は、還られないのでしょうか。



 能天気そうな主人公ですが、さすがに凹んでいます。

 

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