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かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
二章 蒼星の少女

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第43話 因果応報と美少女

 入院生活おしまいでーす!


 さよなら病室、今行くぜ我が家!


『穴開きの寮だけどねぇ』


 うるせえ。

 あの退廃的な部屋にこそ、ミステリアス美少女は合うんだよ。


 ミステリアス美少女が普通の部屋にいたらなんか嫌だろ?

 月光が差し込む廃屋とかに居てくれよ!


『君の衣食住って美少女に左右され過ぎじゃない?』


 左右されない衣食住ってなんだよ、それこそ知らねえや。


「着替えもヨシ! んじゃ、さっさと病室出るか」


 あまりにも一人だったせいで、女装しか出来なかった。

 そのおかげで、俺は外部的美少女ニウムが足りない。

 

 早く美少女ニウムを……。


『知らないエネルギーが出てきたねぇ』


 自分で生産できる分は既にミステリアス美少女で発生させたからね。

 これ以上は俺以外の美少女と接触して得ないと。


『無い物をある体で言うのは、怖いから止めてもらっていいかな?』


 あるのに……。


 とにかく、俺は今すぐフェクトム総合学園に戻ってミズヒ先輩とトアちゃんとコミュニケーションを取らなければならない。


 ミロク先輩は何故か会えなかったし……。

 体は大丈夫だって聞いたけど、どうしたんだろう。


『心配なら夜にでもソルシエラで部屋に入ったらいいんじゃないかい? この病院の警備網程度なら簡単に突破できるだろう』


 夜中の美少女の病室に忍び込むとか倫理観ないの?

 そういう事しちゃ駄目だよ。


『なんなんだよコイツ……!』


 美少女のプライベートは守られなければならない。

 そこはきちんと線引きしなきゃ。


 さ、というわけで帰りましょうねー。


 俺は制服の上着を羽織り扉の前に立った。

 いやぁ、二着目があって良かったねぇ。

 サイズは相変わらず大きいけど。


 ……今度、男装状態に使えるように敢えてサイズの小さめの制服でも買おうかしら。

 それで中身が女であると察せるようにするとか。

 

『いや、敢えて大きめの制服サイズだからこそ見えてくる美少女もある。ミステリアス美少女であるならば、自分から美少女を提示しないだろう。このままのサイズで行くべきだろう』


 わあ、早口で捲し立てられたぞ。君も大分仕上がってきたねぇ。

 急にミステリアス美少女に対する見解をワッと浴びせられてびっくりしちゃった。


 腕輪を隠すだけの制服だったが、そこにも美少女シナジーがあったとは。


『私のラーニング能力を舐めないで貰いたいね』


 頼もしい事限りない。

 後で、ダブルミステリアス美少女タイムの方法について議論しようね♥


『断固拒否する』


 素直じゃない星詠みの杖に俺はやれやれと首を振りながら、扉を開けた。


 ミズヒ先輩! トアちゃん!

 今、ミステリアス美少女が帰りますよー!


「「あ」」


 扉を開けた瞬間、目の前の人間と眼が合った。


 黒髪に爽やかフェイス、服の上からでもわかる引き締まった肉体。

 そう、原作主人公様だね!


 なんでぇ!?


「や、やあ。奇遇だね……えっと、はは」

「……人の病室の前で何してんだお前。失せろ」


 かませ役に切り換えて、俺は突き放すようにそう吐き捨てる。

 そして、トウラク君の目の前からさっさと居なくなろうとしたその時だった。


「あ、待ってくれ!」


 トウラク君が俺の手を握る。

 え、何? 今度はなにが始まるんです?????


「――あ、ご、ごめん! 手を握ったりして……」

「あ? ああ、別にそれは良いが」


 ハッとした様子で手を離すトウラク君は、何故か謝罪をしてきた。

 こっちこそ、かませ役で手を握ってもらってすみません……。

 今度、ミステリアス美少女で握手しようね……。


「その……少し話さないかな」

「俺は忙しいんだ。お前みたいな出来損ないと違ってな」


 俺がそう言うと、トウラク君は真正面から俺を見てきた。

 ぎゃぁっ、純粋な目が俺を浄化するゥ!


「それでも、一度でいいから君と話がしたい」

「……チッ、少しだけだぞ。ありがたいと思え」

「うん。ありがとう」


 いい子……。

 マジでいい子……。


「じゃあ、話せる所に行こうか」


 トウラク君は相変わらず笑顔が眩しい。







 病院の中庭だっていうのに、やたらと景色が良い場所に来た。

 中庭……? これ庭園の間違いじゃ……。


『魔力深度から考えるに中庭に極小のダンジョンを展開しているねぇ。御景学園は中々の技術力を有しているようだ』


 へえ、流石は御景学園。

 ダンジョンコアも沢山あるからこういう事にも使えるんだな。

 フェクトム総合学園に一つでいいから分けてくれよ庭園こっちでも作るから。

 ……あ、どうせコアあっても売るから変わらねえか。

 

「ここに来るのは初めて?」

「ああ、病院なんて俺みたいなエリートは縁がないからな」

「ははっ、そうかもね。僕は、いつも怪我をしていたから病院にはよくお世話になってた。ここは、お気に入りの場所なんだ」


 草木で作られた緑のカーテンが風に揺れる。

 穏やかな日差しと美しい自然風景は確かに病院という閉鎖的空間には最適なのかもしれない。


 俺はトウラク君の隣のベンチに腰を下ろす。

 一緒のベンチには座れない。

 なぜなら彼は原作主人公様だから。


 隙あらば逃げてやるぜ!


「覚えてるかな。君が最初に僕をダンジョン攻略に誘ってくれた時の事。御景学園の中等部で、誰にもパーティに入れてもらえずにいた僕を君は誘ってくれた」

「……忘れたよそんな昔の事」


 那滝ケイとの過去話は、殆ど描写がないのよ。

 だって本来は既に原作に登場しないキャラだから……!

 掘り下げがいらない奴だから……!


 確か、そんな話だった気もするけども。


「僕は今でも覚えてるよ。ルトラとの出会いも、君が居たからこそだ」

「俺としてはあそこで野垂れ死んでくれれば良かったんだけどな」

「……ケイ君、もういいんだよ」

「あ?」


 俺はトウラク君の方を見る。

 彼は、真剣な表情で俺を見ていた。

 ひゃだ……! イケメン……!


「本当は――女の子なんだよね」


 辺りに沈黙が降りる。

 聞こえてくるのは、風が草を揺らす音だけだった。


 俺は、そんな大自然環境音を聞きながら冷静に考える。


 なに言ってんだこの人????


「お前なに言ってんだ」

「リンカから聞いたよ。ソルシエラの事」

「……ッスー」


 思わず息を吐く。


 リンカちゃんの前でミステリアス美少女したらトウラク君にも伝わったって事?

 は???

 なんで???


『自業自得だねぇ』


 俺はリンカちゃんに那滝ケイは男装女子である事を教えただけだ。


 ……うん! なら普通に考えてトウラク君にも伝わるのが道理だね!


 うわあぁぁぁぁん!

 俺の完璧なミステリアス美少女チャートがァ!?


「正直驚いた……。リンカに言われるまで、僕もミハヤも気が付かなかったんだから。僕が知らないところで、君はずっと戦っていたんだね」

「……俺は」


 絶賛ピンチである。

 なるほどね。

 原作キャラ相手にミステリアス美少女すると、周りまわってこうなるんだね。


 今後に活かそうね。

 今後があるかわからないけどね!


『これで少しは懲りたかい?』


 は? 懲りるってなんだよ。


 星詠みの杖、こんな言葉を知っているか?


『なんだい?』


 なっちゃったものはしょうがない!


『えぇ……』


 なっちゃったからには……ね?


『……え? マジ? ここでやるのかい!?』


 何かを察してごちゃごちゃうるせえ声を無視して、俺は星詠みの杖との接続をさらに深くする。

 同調する意識と共に、身体を膨大な量の魔力が流れ始めた。


 何よりも顕著に変化したのは、俺の身体――いや性別。

 星詠みの杖により、俺の身体は一時的に書き換わる。


 0.1秒。

 

 それだけの時間で、俺の身体は完全なミステリアス美少女に変化した。


 女装ではない完全な美少女化。

 これすなわち、スーパーミステリアス美少女タイムである。


「――はあ、これだからお人好しって嫌いなのよね」


 星詠みの杖により拡張された五感で、トウラク君以外に周りにいない事を確認する。

 

 俺は髪をさらりと伸ばして、風に靡かせた。


 男子生徒の制服を少女が着る事により生まれた奇跡。

 これは男装美少女とは似て非なる姿だ。


 男装美少女と、男物の服を着ている美少女は違うんだ。

 ここはイコールではない。


『成程ねぇ』


 星詠みの杖君も覚えておくように。


『ああ。ちなみに、今の君の魔力量だとスーパーミステリアス美少女タイムは五分が限界だろう。それまでに満足したまえ』


 了解!

 それではこれより、「お前、女だったのか!?」を開始する!




  


 


 




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