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かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
十一章 【期間限定イベント】始まりの星を詠う君へ

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第385話 7‐7 背徳の星、地を照らせ

絶望のソルシエラにとってこの戦いは予想外で溢れていた。

 

「面白いな」


 大剣と大鎌がぶつかり合い、火花を散らす。

 城の中で繰り広げられている戦いは、もはや戦争と呼べるまでの規模へと発展していた。


「力を奪われたとは聞いていたが、その様子だと殆ど取り戻したようだな」

「ええ、そうよ。そして今から貴女の力も奪ってあげる」

「ははっ、その意気だ」


 絶望のソルシエラは笑みを浮かべ、大剣を振り下ろす。

 そして柄をポールのようにして自身が回転すると、跳躍と共に蹴撃を放った。


 ソルシエラは咄嗟に障壁を張ろうとするが、それよりも早く絶望のソルシエラの足先が顎を捉える。


「っ」

「こういう芸当も出来るようになった」


 蹴り上げられたソルシエラの体が宙に浮く。

 脳を揺さぶられ、思考が乱れた一瞬の隙をつく様に周囲からシルエットのような影シエラ達が襲い掛かってきた。


 影の持つ大鎌が無造作に振るわれる。

 しかしそれは、舞う羽根と共に空を切った。


「転移か」


 少し離れた場所で、肩で息をしながらソルシエラは立ち上がる。

 追撃を仕掛ける影シエラ達を舞うように刻んでいく彼女を見て、絶望のソルシエラはその場にゆっくりと腰を下ろした。

 何もなかった場所に、椅子のように這いつくばった一体の影シエラが現れる。


 当然のようにその上に座りながら、絶望のソルシエラは笑みを浮かべつつ口を開いた。


「私は強いだろう? 絶望の名を冠しているのは伊達ではない」

「あら、もう疲れたのかしら。もっと私を見てくれないと」


 影シエラを切り伏せ、蹴り倒し、一瞬生まれた絶望のソルシエラまでのルートへ向けてソルシエラは砲撃を放つ。

 素早く無駄のない砲撃は威力こそ万全の砲撃には劣るものの、完璧に絶望のソルシエラに直撃した。

 爆発と激しい煙に、影シエラ達の動きが一瞬止まる。

 しかし、砲撃を当てたソルシエラだけが変わらず動き続けていた。


「せめて絶望する間もなく殺してあげるわ」


 大量の砲撃陣が展開され、次々と絶望のソルシエラがいるであろう場所に打ち込まれる。

 徐々に崩壊していく城の内部で、ソルシエラは背後から襲い掛かった影シエラを切り裂いて煙の中を注視した。


「――もういいだろう、オリジナル」


 煙の中から声が聞こえる。

 同時に、一瞬にして煙が晴れた。


 見れば、絶望のソルシエラの両脇を守る様に二体の影シエラが大鎌を振り下ろした姿勢で立っている。

 鎌を振り下ろした風圧で煙を払ったのだろう。


 そして絶望のソルシエラはと言えば、服に汚れ一つつけない状態で鎮座していた。


「お前は、私の権能は何だと思う」

「この影のようなものを操る事かしら」

「半分正解だ」


 絶望のソルシエラはそう言うと、指を鳴らす。

 その瞬間、彼女の背後から新たな影シエラ達が現れる。


 それを見て身構えたソルシエラだったが、彼女の想像とは違い影シエラ達が襲い掛かったのは絶望のソルシエラであった。


「私の背負う業は絶望。本来、世界を背負う英雄が抱いてはいけない感情だ」


 絶望のソルシエラはゆっくりと立ち上がると、大剣を手に振り返る。

 そして一度横なぎに振るうと、襲い掛かってくる全ての影シエラを切り伏せた。


 ボロボロの紙切れのように影シエラ達は散って床へと沈んでいく。

 その光景を見ながら、絶望のソルシエラは再び腰を下ろした。


「私の権能は、《《自身の影を敵として生み出す事だ》》」


 言葉を証明するように、殺したはずの影シエラ達が再び人の形をとり始める。

 そして完全な人型に変形すると、今度はソルシエラへと向かって駆け出した。


「自身で生み出してわざわざ殺さなければ操れないなんて、随分と手間がかかる権能ね。やっぱりいらないかもしれないわ」

「……勘違いをしているようだな、オリジナル。私の力はあくまで敵の召喚。それを服従させるのは、私の純然たる力だ」


 その瞬間、魔力が渦のように巻きあがり突風を起こす。

 なんてことはない。絶望のソルシエラがほんの少し魔力を解放しただけだ。


「この力は終わらない戦いに対する絶望から生まれた。安寧など与えられず、心すら休むことなく戦い続けることを運命づけられる。そこに果たして希望はあるだろうか。……ああ、そうだ。本来は問うまでもない愚問である」


 依然としてソルシエラは影シエラ達を相手に戦い続けている。

 それは終わりの見えない戦いに身を投じてきたソルシエラという少女の生き方そのものに見えた。

 

「私はこのソルシエラバトルが始まってから今に至るまで戦い続けてきた。己の影とな。最初は逃げるのでやっとだった。しかし、一体、また一体と殺していき着実に力を付け最後には従えるまでになったのだ。故に、私はただ一つの解を得た」


 徐々に傷ついていくソルシエラを見ながら、絶望のソルシエラは言葉を続ける。


「己の力こそが全てだ。絶望すらも私の前では己を磨く道具でしかない」

「あら、もっと悲観的かと思ったわ……!」

「そんなもので強くなれるものか。もういいだろう、オリジナル」


 絶望のソルシエラは立ち上がる。

 すると、影シエラ達は戦いをやめ綺麗な列を作り始めた。


 両脇に影シエラ達が並び、絶望のソルシエラとソルシエラを繋ぐ一本の道を形成する。

 絶望のソルシエラは手を差し出して、ソルシエラへとこう言った。


「私に服従しろ、オリジナル。その胸に抱く絶望はもはやお前には抱えきれない」

「……ふふっ、私は絶望なんてしていないわ。星の輝きは決して消えることはない」

「私たちの間に嘘が通用しないことはお前が一番わかっている筈だ。この胸を押さえつける絶望は、お前の物である筈だろう。ソルシエラ」

「…………そんなわけないじゃない」

「なら、その目はなんだ。輝きを宿す者が、何故そのような目をしている。まるで死に場所を探す幽鬼だな」


 絶望のソルシエラの言葉に、ソルシエラは無言で大鎌の柄を向ける。

 そして間髪入れずに収束砲撃を放った。

 が、それを絶望のソルシエラは大剣の腹で軽々と受け止め、確信と共に頷く。


「もう疲れただろう、オリジナル。ここからは私が全てを担おう。さあ、私に身を委ねろ」

「…………うるさい」

「もう今までのように振る舞わなくても良いのだ。弱者に戻って良いのだぞ、オリジナル」

「うるさいッ!」


 その叫びは今までの彼女からは考えられない程に感情がむき出しであった。

 大鎌を握る手に力がこもり、優雅さの欠片もなくソルシエラは絶望のソルシエラを睨みつける。


「お前が私を知った風な口をきくな……!」

「今まで必死に隠してきた己の心情を言い当てられて恐ろしくなったか? やはり弱者だな」

「もういい、殺す」


 ソルシエラは傍にいた影シエラへと手を伸ばす。

 そして無理矢理干渉を始めた。


 理屈や美しさなどかなぐり捨てた、力づくの干渉により影シエラが形を変える。

 それは漆黒の仮面であった。

 光をも吸い込む黒い仮面を、ソルシエラは自身にそっとあてがう。


「私が、私だけが星詠み」


 仮面をつけたソルシエラの威圧感が、今までとは比べ物にならない程に増した。

 それは本来のソルシエラの戦い方とは違う、自身の力を全て解放し真正面から叩き潰す狂戦士が如き圧倒的な暴力。


 これからもソルシエラであるために、彼女はこの瞬間自身の道を外れることを決意した。


「お前は私じゃない。その絶望も私じゃない……!」

「ふっ、いいだろう。全力で来い」


 ソルシエラは駆けだすと同時に、傍の影シエラをもう一体干渉により取り入れる。

 そして漆黒の大鎌を形成した。


「絶望なんて、私は知らないっ!」


 否定の言葉と共に、ソルシエラは絶望のソルシエラへと斬りかかった。














『この後、絶望のソルシエラを倒したんだよね……』

『本人によるネタバレかぁ^^』

『おぉ……可哀そうに、顎を蹴られていなかったか? カメさんエマージェンシートルネードするか?』

『マジでそれ絶対に使うな』

『ご主人、もうすぐそっちに到着しちゃいそうなのじゃ。このままでは戦いの中にガーデナー達が飛び込むことになるのじゃ!』

『仕方がない。プランBだ! 絶望のソルシエラVSソルシエラVSガーデナーチームの三つ巴と行くぞ! それと、光堕ちフォームも用意しておいて! ガーデナーちゃんがきっと俺を元気づけてくれるから。そしたら絆的ななんやかんやでこの世界限定の新形態が出来るから!』

『また鬼のような発注が急に来た^^ しかも納期がヤバい^^』

『おぉ……では早速取り掛かろう……。星詠みの杖よ、鏡界の特性を生かし天使の意匠を加えるのはどうだろうか』

『いいねぇ^^ 私とお前がいないことを加味した、彼女だけの姿として――』

『の、のじゃ……たぶん難しい話をしているのじゃ……!』

 



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