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かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
一章 星詠みの目覚め

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第38話 美少女だとしても調子に乗ってはいけない

 はいはい質問でーす!


 この学園都市のSランクでぇ。

 今話題沸騰中のぉ。

 最強完全無欠ミステリアス美少女ってぇ。


 だーれだ!


『うるさいねぇ』


 それは、俺でーす!

 このソルシエラでーっす!


『黙ってくれないかな?』


 黙ったらそれはそれで、クールな美少女だね!


『なんだコイツ無敵か?』


 その通り。

 今の俺は無敵である。


 今なら、原作のボスがどれだけ束になってかかって来ようとも勝てる気がするぜ!


 そんな完璧で究極な俺だが、大きな問題に直面していた。


「……これ、どう性別の開示をしよう」


 フェクトム総合学園の御三方に、俺は美少女として迎え入れてもらうためにこの身が美少女になったと証明する必要がある。


 証明だけなら、全裸になれば良いのだがそれでは面白くない。


 俺は「お前、女だったのか!?」もやりたいのである。

 だって、美少女だし。


『普通に説明した方が絶対に良いんだが。というか、その心配は《《まだ必要ない》》よ?』


 良い訳あるか馬鹿。

 君、本当に演算出来る程賢いの?


『……チッ』


 こういう存在も舌打ちってするんだ……しかもガチめの。


 まあまあ、そんな気を悪くしないでよ。

 どしたん? 美少女が話聞こうか?


 まあいいだろう。


 兎に角、俺の目下最大の問題はどうやって女であるとばらすかだ。

 あと、ソルシエラという存在をどうするか。


 Sランクって、フェクトム総合学園にポンって現れていいものなの?

 他校が俺欲しさに戦争仕掛けてこない?


 俺ってば、美少女レベル高すぎて戦争の火種……!?


『単に強いからだろう。しかも、強いのは私の方ね。相棒は勝手に興奮してるだけ』


 つまり……俺と星詠みの杖は一心同体?


『話聞いてないねぇ』


 聞いてる聞いてる。


 真面目な話、どう考えても君は厄ネタだし、ソルシエラもSランクになっちゃったし、まだ正体を明かすわけにはいかないよね。

 当面は、男装で行くわよ。


『あー、はいはい。制服に戻します』


 俺は制服に戻り、いつもの那滝ケイになる。

 うん。この姿も今となっては感慨深い。


 俺は、ミロク先輩と少年の元へと戻っていた。


 美少女になったし、ミステリアス美少女も出来たし、もう最高の気分での帰還である。


 おお、少年。元気か?


「お姉ちゃん!」

「……しー。今はお兄ちゃん、だよ? あれは、私と貴方の秘密。ね?」


 俺は人差し指に手をやって、笑みを浮かべる。

 少年は、顔を真っ赤にして何度もうなずいていた。


 もう二度と同年代に恋できないねぇ……。


「さて、じゃあ後はミロク先輩を起こすか運ぶかしなきゃならないな」


 ミロク先輩は、今も気を失ったままだ。

 ……大丈夫だよな?


『大丈夫大丈夫。私のパワーをこう、グイっと入れといたからまずこの場で死ぬような事はないさ』


 え、なんか変なの注入したの?


『いや、私のパワー。変なのじゃないよ?』


 それを変なのって言うんだよ!

 もうやめてよね。ミロク先輩を魔改造しようとするのは。


 この人は、普通の清楚系なんだから。


『別に冷え性とか肩こり腰痛が解消される程度なんだけど……』


 温泉みたいな効果だね、君のパワー。

 じゃあいいや。


 俺達が、ミロク先輩の前でそうやって脳内会議をしていると、ふと新たな人影が。


 見ればそこにはようやく駆けつけた議会所属の探索者達がいた。

 遅いよォ。


 中でも一人が、集団を離れて俺達の方にやってくる。


「大丈夫ですか!?」

「ええ。俺達はなんとか。でも、あっちの中心部で、大きな戦いがあったみたいで」


 俺はあくまでここで耐え忍んでいた風を装う。


「確かに、あの辺り一帯に異常な魔力深度を感知しました。それが、出現した怪物が原因なのか、それともソルシエラが原因なのか……まだ調査中です」

「ソルシエラがっ!? あの、正体不明のSランクがここに現れたんですか!?」

「あ、はい。御景学園の生徒会から、そう連絡が入っています」

「ここからじゃ、何もわかりませんでした。ソルシエラ……一体何者なんだ……!」


 俺はいつものように、驚くかませ役を演じる。

 流石ミステリアス美少女。

 ここでも話題に上がるとは……。


「それよりも兎に角、その人を運びましょう。遊園地の外に、回復系の能力をもった探索者を中心に簡易的な医療テントが展開されていますから」


 探索者は、そんな俺達を気遣うようにして提案をしてきた。

 が、俺はそれに静かに首を横に振った。


 そして、少年を指さす。


「俺達よりも彼をお願いします。親とはぐれてしまったようで」

「おねっ……お兄ちゃん?」


 少年は俺を見上げて首を傾げる。


 さらばだ少年よ。

 もう二度と会う事はないだろう。


「俺達だって、探索者です。外までは自力で行けます」

「……わかりました。では、子供はこちらで預かります。……行こう、歩けるかい?」

「うん」


 少年は、探索者に手を引かれて出口へと向かって行った。

 その際何度かこちらをチラチラと見てきたので、手を振り返しておいた。


 ありがとう少年。

 思えば、君にも俺の美少女欲を満たすために付き合って貰ったな。


 そして最後にも、探索者をミロク先輩から引き剥がすのにも役立ってくれた。


「美少女に触れていいのは美少女だけだからな」


 これ、常識ね。

 探索者が美少女だったら、お願いしたのだが残念ながらゴリゴリの男だった。


 そうなると、美少女である俺が美少女を運ぶのが当然である。


「失礼します、ミロク先輩」


 俺はミロク先輩を背負い、立ち上がる。

 背中に、美少女を感じる……。


 俺も美少女だから、ここには美少女と美少女が密着した怖ろしい力場が発生しているはずだ。


『してないよ。それと――』


 してるもん!


 さてさて、無粋な杖君の事は放っておいてさっさと行こうねー。


 俺はえっちらおっちら歩き出す。

 よし、このまま学園に帰って美少女日常四コマでもしよう。そうしよう。


「……ケイ君?」


 なんか、後ろから声が聞こえたんだけどぉ。

 いかにも主人公みたいな声ぇ。


 俺はそっと振り返る。

 そこには原作主人公一行様がいた。


『やば。隠れまーす!』


 その言葉と共に、ソルシエラの気配が消える。

 はいお疲れ様。


「どうしてお前らがここにいるんだ」

「それはこっちのセリフだよ。というか、大丈夫!? その人も、あとケイ君も……」

「あ? 誰に言ってんだ。俺はてめえと違って軟じゃねえ」


 ミステリアス美少女の後はかませ役。

 どんな状況でも俺は完璧にその役をこなして見せよう。


 というか、ここで言い争いをするとミロク先輩が起きちゃう。

 この人には小鳥の囀りで起きてほしいんだ。


 俺の願いも虚しく、トウラク達は俺にずんずんと接近してきた。

 ちょ、止めろ見るな。


 あ、それはそれとしてリンカちゃん初めまして!

 いや、さっきソルシエラの状態で会ったか。わはは。


「制服がボロボロじゃないか! 君も無理をしている筈だよ」

「無理なんかしてないね。……これはあれだ、ちょっと転んだだけだ」


 俺はボロボロになった制服を見てそう言った。

 影の触手さんは強敵でしたね……。


「でも」

「しつこい奴だなァ!」


 俺は心底嫌そうな顔をトウラクに向ける。

 俺へと伸ばされていた手が、とまった。


 ごめん、トウラク君。

 まじごめん。


「――ああもう、アンタだと埒が明かないわ。どきなさい」


 トウラク君を見かねて、ミハヤちゃんが俺へと近づく。

 そして、問答無用でミロク先輩を奪い取った。


 ああっ、美少女が別の美少女に奪われたぁっ!


「リンカ、この人の事、お願い出来るかしら……リンカ?」

「えっ、ああ! うん、わかった任せて」


 リンカちゃんは、ミハヤちゃんの言葉でハッとした様子でミロク先輩を預かって背負った。

 また別の美少女に……。


 というか、なんかリンカちゃん俺の事じっと見てなかった?

 気のせい?


「ほら、さっさと上着脱ぎなさい」

「え」


 俺がリンカちゃんに気をとられている隙に、ミハヤちゃんは俺から上着を問答無用で剥ぎ取った。


 同時に、俺は気が付く。


 ブラをしてねえ!

 うわー、どうしよう!

 やべえやべえ!


 というか、俺が美少女だってバレちゃう!

 なんでこんなヌルっとバレるんだよォ!


「お、おい! お前、なにしやがる! 気安く触るんじゃ「黙ってて!」……えぇ」


 ミハヤちゃんの目が怖い……。


 そのままミハヤちゃんは、俺のワイシャツのボタンを開けていった。

 こんな形で俺の美少女バレかぁ。


「……うーん、確かに目立った外傷はないわね。所々に打撲痕みたいなのはあるけど、まあ探索者なら問題ないでしょう」

「え?」

「なによ」


 ミハヤちゃんは俺の身体を見て、安心したように服を元に戻した。

 なんで????


 俺の美少女ボディに驚かないの???


 俺がそう思っていると、脳内に囁くような声が聞こえてきた。


『……アレ、時限式です……。もう、相棒は男です……』


 ふぇ?


『何度も言おうとしたのに……煩くて聞いてもらえなかったから……。期待させて本当にごめん。それじゃ、またルトラがいなくなったら会おう』


 それだけ言い残すと、再び星詠みの杖の存在が消えた。


 俺、男なの……?


 自覚した途端に、突然身体中の力が抜けて崩れ落ちる。

 なんとか、膝をつくだけに止まったが、ショックは大きい。


「ケイ君!」

「やっぱり無理してるんじゃない! この様子だと、魔力の枯渇かしら……」

「べ、別にそんなんじゃねえ。これ以上、お、れにかまうな」


 ショックで頭が痛い。

 妙な吐き気も、倦怠感も身体を襲ってくる。


 夢が叶ったと思った瞬間に叩き落とされるのが一番ショックがデカいんだよ……!


「でも、ケイ君は明らかに様子がおかしいよ!」

「おかしいのはこの世界の方だろ……!」

「え?」


 美少女になったら、そっちで固定しろよ……!

 不可逆であれよ……!


 可変式のTSもそれはそれで良いが、なら最初に告知しろ。

 海外なら、虚偽広告で裁判勝てる案件だぞこれ。


「チッ、最悪の気分だ……」


 俺は何とか立ち上がる。

 はは、膝が笑ってらぁ。


「――アンタいい加減にしなさいよ!」


 突然、ミハヤちゃんにそう怒られた。

 ごめん……俺、美少女じゃないから……。まじごめん……。


「そうやって強がっても良い事なんて一つもないわ! この人だって、アンタの事心配してるんじゃないの? アンタに何かあったら、この人だって悲しむはずよ」


 そう言って、ミハヤちゃんは背負われたミロク先輩を指さした。


「ミロク先輩……」


 あ、そう言えば俺、ミロク先輩を背負っちゃったじゃん。

 美少女じゃねえのに。

 密着しちゃったじゃん。


 ウーン、罪悪感でさらに眩暈が……。


「お、れは……ごめん、な、さ――」

「ケイ君!」


 歪む視界と、トウラク君の俺を呼ぶ声。


 そして、誰かに抱き留められる感覚と共に俺は意識を手放した。


 美少女をおんぶした罪は重い。

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