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かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
九章 九重ちゃん、参上!!

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第265話 俺のデータにないぞ!

 隠密行動はミステリアス美少女の得意分野である。

 ターゲットに悟られることなく尾行をするなど朝飯前なのだ。


「あっ、見てください! ナナちゃんが道端の花を観察していますよ!」

「シャッターチャンスですね!」


 俺の言葉で、ミロク先輩が躊躇なくカメラを構える。

 ちなみに今ミロク先輩が持っているカメラはミユメちゃんの特別製。

 撮影可能距離は100㎞、対象までの障害物をすべて排除して撮影が可能な兵器スペックである。


 ミユメちゃん曰く「クラムちゃんに頼まれて作ったっすけど、でも本人には渡さないで欲しいっす。倫理観の問題っす」と言っていた代物である。

 そういうわけで、お手軽犯罪道具のこのカメラはミロク先輩が管理することになったのだ。

 今まさに、可愛いナナちゃんの写真を撮れているので、十分に有効活用されていると言って良いだろう。


『マイロード、私もお花にしてくれ』


 するわけねえだろ、一生電子の海でパタパタしてろ。


「おや、移動を始めましたね。私たちも後を追いますよ」

「はい」


 ナナちゃんの後を追って、俺たちはどんどんと中央へと進んでいく。

 この辺りは様々な学園の生徒や、外から来た人間が混じり合い、人が多い。

 

 ナナちゃんはそんな人混みの中をすいすいとうまく移動していた。


「どこで待ち合わせなんでしょうか」

「アリアンロッド前の広場と言っていましたね。観光地としても有名なので、場所の指定だけでは相手がどんな人間かはわかりません」


 ミロク先輩は難しそうな顔でそう呟く。

 そうだった、ナナちゃんのきゃわわなお散歩写真を撮る目的じゃなかったわ。

 オフ会の相手を知ることが本来のミッションだったわ。


「あ、ベンチに座りましたね。そして……」

「ゲームを始めましたね。うーん、いつも通り」


 物陰からこっそりとナナちゃんを観察する。

 が、目的地に着いたナナちゃんはそこから動くことはなく、ずっとスマホゲーをしているようだ。


「……まだ来ませんね」

「そうですね。……おや、あれは」


 ミロク先輩が何かを見つける。

 その視線をたどっていけば、そこにはヨレヨレのジャージを着たエイナがいた。

 近所のコンビニに行くスタイルでよく人の往来が激しい場所に来れるな。


『しかも両手にアイスを持っているぞ。欲望にまみれているねぇ』

『NO幼き波動。興味ないな』


 アイス喰ってるだけでここまで言われるなんて……。


 というか、六波羅さんはどこなのだろうか。

 エイナが一人で行動するなんて珍しい事なのだが。


「……まさか、キリキリまいさん?」

「いえ、エイナちゃんはオンラインゲーム禁止令が六波羅執行官から出ているらしいので違いますね」

「そんな禁止令出されてるんだ」


 まあ、十中八九相手をあおり散らかしたのだろう。

 根っからのクソガキなので、想像が容易である。


「あっナナちゃんが、エイナちゃんに気が付きましたね」


 ナナちゃんは、エイナに気が付くと駆け寄る。

 それまで笑顔でアイスをペロペロしていたエイナだったが、ナナちゃんの姿を確認すると「うわ……」という顔と共に、他人のフリをしようとした。


「他人のフリで乗り切ろうとしてますね、アレ」

「無視したことに怒ってナナちゃんが脛を蹴りましたね。あ、アイスを二つとも奪われました」

「哀れですねぇ」


 声は流石に聞こえない。

 が、どう見てもナナちゃんにアイスをカツアゲされていた。


 と思いきや、ナナちゃんは首元にぶら下げていた財布からお金を取り出す。

 そしてエイナへと差し出した。


「あれは……ああ、なるほど。アイスを買ってこさせようとしていますね」

「早く行かないと、お前のアイスが溶けるぞって脅しているみたいです。ナナちゃん、結構妹には容赦ないな」


 エイナはお金を握りしめてダッシュで人混みへと消えていく。

 そして、一分も立たずにアイスを一つ片手に猛ダッシュで戻ってきた。


 汗を額に浮かべながら、エイナがアイスを差し出すと、ナナちゃんは頷いて二つのアイスを返した。

 えらい。


『流石はシエルだ。しっかり姉妹の教育は出来ているようだねぇ』


 あの見た目だから忘れるが、二号なのでお姉ちゃんだ。

 アイスをペロペロしているが、お姉ちゃんなのだ。


『おぉ……マイロードは食べなくても良いのか? 私が買ってくるが』


 いや、いいよ。

 アイスを買うためだけに天使を解放できないって。


「後でエイナちゃんと六波羅執行官に謝らないといけないですねこれは……」

「でも最初に無視したのはエイナの方ですからイーブンでは?」

「脛を蹴られてアイスを奪われてパシリにされてイーブン?」

「……確かに」


 何故か、エイナならいいかと思ってしまった。

 あの子、カテゴリがリュウコちゃんと似てるんだよなぁ。


「それにしても、六波羅執行官はいないんですね。いつも一緒にいるイメージですが」

「ですねぇ。………………ん!?」


 辺りをキョロキョロと見渡して、俺はその姿を捉えた。

 エイナを陰からこっそり覗く怪しい少女が一人いる。


 騎双学園の黒い制服に身を包んだその少女は、長く美しい黒髪が特徴的であった。

 が、何よりも特徴的なのはその魂の輝きである。


 俺の眼はごまかせない、あの魂の輝きは間違いなく六波羅さんだ。


『また違う視点で世界を観測しているねぇ』

『別位相の観測でも魔力による感知でもない。……ふむ、流石は愛娘』


 姿かたちが違えども、俺が原作キャラ様を見間違えるわけもない。

 俺は自信満々にその少女を指さして言った。


「あれが六波羅さんですね」

「え? ………………あぁ、そう言えば任務の役に立つかと思ってトランスアンカーを渡しましたねぇ」


 俺の知らない間に、とんでもねえモンが六波羅さんの手に渡っていたようだ。


「そんな気軽に渡していいものじゃないですよ、アレ」

「六波羅執行官なら大丈夫だと思ったんですよ。あの様子だと、エイナちゃんをこっそり見守っているようですし、私たちと同じですよ」


 ミロク先輩はくすりと笑う。

 そして「行きましょう」と言って、六波羅さんへと近づいて行った。

 

「こんなところで会うなんて思いませんでしたよ」


 声をかけられて、少女の肩が揺れる。

 こうして見ると、やはり美少女にしか見えない。


「……あぁ、面倒くせェ」


 可愛らしい声で、しかしぶっきらぼうに吐き捨てながらその少女は振り返った。

 

「なんで俺だってわかったんだ」

「可愛っ!」

「わぁ、想像以上に美人さんですね」


 突然の美少女のご尊顔アタックに俺の脳が焼き切れる。

 すぐに修復され事なきを得たが、見るだけで人を殺せるとは恐ろしいほどの美少女フェイスだ。


 一見すると、黒髪に黒セーラーのお清楚美少女。

 しかし、近づけばその印象は一転する。

 ただの黒髪ではなくインナーカラーの赤がはっきりと存在を主張し、鋭い目は整った顔立ちにはよく映える。

 そして、六波羅さんの特徴の一つでもあるギザギザの歯も、今は妙にエッチだ。

 本人のぶっきらぼうな態度も相まって、お清楚な見た目とのマリアージュが素晴らしい。少し身長は低めだね^^


 えー、満点とさせていただきます。


『ほう、六×ソルのTS百合カプですか。大したものだねぇ』


 うちのカプ厨も大喜びです。


『美少女六波羅と男体化ソルシエラのカプも捨てがたい。執事服のソルシエラ♂に抵抗しながらもお姫様抱っこされる六波羅ちゃんの表紙が目に浮かぶようだ^^』


 喜びすぎかもしれない。


「シエルがいるからもしやと思ったが、お前らが近くにいたのか」

「そうなんです。はい、チーズ」

「撮んなバカ」


 六波羅さんが顔を隠すよりも早く、俺とミロク先輩は一緒にフレーム内に収まりパシャリ。

 ここでポイントなのは、俺が無表情でピースをすることである。

 

「ったく……ああ、もしかしてお前らはお前らでデート中だったかァ? だとしたら邪魔したなァ」


 お返しと言わんばかりに、六波羅さんが意地の悪い顔で笑う。

 ははは、ナイスジョーク。

 俺が美少女とデートしたら、喜びと申し訳なさが対となり無限のエネルギーを生み出しちゃうわ。


「いやいや、違いま「えぇ~! そう見えちゃいますか? 困りましたね、ケイ君。あっ、今はケイちゃんでしたね」……え、あの」


 ミロク先輩が俺の言葉にわざとかぶせたように聞こえたが、気のせいだろう。

 というか、距離が近くなってませんか?


 裁判長、自首します。


『うぅーん、しかし今の君もまたトランスアンカーで女の子の状態だからねぇ。無罪放免だねぇ』


 司法が優しい。

 そしてその優しさが痛い。


「ははッ、揶揄って悪いな。ミロクのそのマスクとサングラスを見るに、デートなわけねェか」


 その言葉を言い終わるよりも先に、ミロク先輩はマスクとサングラスを外していた。

 ミロク先輩の行動の中で過去一で速かった。


「なんで外したんだお前」

「何か?」

「いや、サングラスとマスク」

「な に か ? 」


 ふえぇ、ミロク先輩が急に怖くなったよぉ。


『ミロケイも同時に摂取できてたまらないねぇ!』


 今のどこにミロケイがあったんだよ。カプ厨のこじつけも大概にしとけよ。


『こいつたまに察しが悪くなるのなんなんだよ』


 理不尽な罵倒すぎる。


 というか六波羅さん、なんで俺とミロク先輩を交互に見てため息をついているんですか。


「まあ、とにかく俺の邪魔だけはすんな。今、俺は忙しいんだ」

「んー、美少女不審者にしか見えないけど」

「うるせェ。……エイナに休暇をくれてやったが、心配なんだ」

「エイナちゃんを見守っているんですね。相変わらず仲良しで何よりです」

「あのバカがやらかさねえか心配なだけだ。お前らも似たようなものじゃねェのか?」

「うーん、少し違います。実はですね――」


 ミロク先輩は事情を説明する。

 すると、六波羅は話を聞き終えてすぐに言った。


「お前のところのデモンズギアはしっかりしてるなァ」

「オフ会をするだけなのに?」


 俺の言葉に、六波羅はやれやれと首を振る。


「ネットで知り合った人間と良好な関係を築けるだけで大したもんだ。エイナは煽るからなァ……」


 過去にあった出来事を思い出しているのか、少し疲れたように息を吐く。


「まァ、上手くいくように祈ってるわ」

「ありがとうございます。ああ、そういえば先ほどはナナちゃんがすみませんでした。随分とひどいことをお宅のエイナちゃんにしてしまって」

「最初に無視してたのはあいつだからなぁ。しかも、自分の方が背が高い優越感に浸ってわざと見下ろしていたし。脛を蹴られてアイスを奪われてパシリにされてイーブンだろ」


 六波羅さんから見てもイーブン判定なんすね。


「ってか、キリキリまいって名前に俺は覚えがあるんだが」

「本当ですか!?」

「ああ、俺の推測が正しければ……」


 六波羅さんは美少女フェイスでキョロキョロする。

 そして、指さした。


「やっぱり、姉が心配でついてきてたなァ。アレを見ろ」


 示された方向には、両手にちっちゃな木を持った灰色の髪の美少女がいた。

 はい、全知データベース照合完了!


 あれは天羽サヤカちゃん!

 キリカちゃんの妹で、キリカちゃんよりも若干背が高いしっかり者の13歳だよ!


『えー、審議の結果、幼き命とさせていただこう』


 やばい判定貰っちゃった。

 意外と広いね、幼き命判定。


『肝要なのは、魂の純度だ。美しく透き通った魂が幼き命なのだマイロード』


 なるほどなぁ。

 美少女の輝きみたいなものか。


「お前らの言っているキリキリまいってのは、あそこでお手製の茂みを掲げて下手くそな尾行をしている奴の姉のことだ。悪い奴じゃねェことは、俺が保証する」

「そうなんですか」


 ホッとした様子でミロク先輩は胸を撫でおろす。

 なんだかんだ、本当に心配していたのだろう。優しい人だ。


「あいつがいるってことは、近くにもうキリカは来ているはずだ」


 探してみれば、すぐに見つかった。

 そこにいたのは、白い花柄ワンピースでウキウキな様子のキリカちゃん。

 原作美少女キャラである、皆の者平服せよ。


『新たな幼き命……!? マイロード、今日は祭日か何かなのか!?』


 今日という日が、カメ君にとってのご褒美すぎる。

 どうやら、これはロリとロリのオフ会のようだ。


 幸せな光景を想像して、頬が緩んでしまう。


 灰色の髪を今日はかわいらしくサイドテールで結んでいる。

 可愛いね、サヤカちゃんに結んで貰ったのかな?

 ワンピースも良く似合っているよ、隣の白衣の子とのギャップも――誰だ横のロリ!?


『マイロード、全知データベースはどうした!』


 白衣ニット白髪ロリ!?

 そんなキャラ、俺のデータにないぞ!


『今回は役に立つと思ったのに、大したことなかったねぇ』


 白衣のロリは、アタッシュケースに乗って移動をしている。

 キリカちゃんと仲良くお話をしているようで、無邪気な笑顔を浮かべていた。


 あんなキャラの濃いロリを俺が忘れるか……?


「六波羅さん、キリカちゃんの隣の子は誰ですかね……六波羅さん?」


 問いかけに答えない六波羅さんを見る。

 彼女は、信じられないものを見たように固まっていた。


「講師か? いや、にしてはアホ面すぎる。それに、アレは俺が殺したはず……」

「どうしたのですか、六波羅執行官」

「いや、なんでもねェ。俺の思い違いだ」


 そう言って、六波羅さんは力強く言葉を続けた。


「横のガキは、俺も知らねェ!」


 六波羅さんのデータにないなんて、俺のデータにないぞ!


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