表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
八章 そるしえらのなつやすみ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

253/310

第248話 すないぱぁ

 日はとうの昔に落ち、時刻は零時を回っている。

 だというのに、那滝家はどこか騒がしさを残したままだった。

 ヒショウを筆頭に、赫夜牟の封印計画の完成を急ピッチで進めているのだ。


「素晴らしいぞ! これなら赫夜牟に対抗できる! ニコ君! キングジルニアースは今は使えないのだから、アトラスジルニアースの準備をしておくのだ!」

「あぁ……あのマイナー合体ですかー」

「はっはっは! ヒラメキ合体にマイナーなど存在しないぞ! ヒラメキとは、みんなの心の中にあるのだからな! あーっはっはっはっは!」


 ヒショウの高笑いが蝉しぐれの代わりに夜空に響く。

 それは、百メートル離れた場所に存在するアイの部屋にも届いていた。


「ふふ……♥ たまにはこういう騒がしい夜も良いですね♥」


 シヤクは静かに一人微笑む。

 窓の外から聞こえる高笑いの他に、ここには小さな寝息だけが響いていた。


 シヤクのすぐ傍では、アイが眠っている。

 彼の身に着ける真っ白な浴衣のようなそれは、いつも寝るときに着ているお気に入りだった。


(仮眠であってもきちんと着替えるなんて♥ そのままだと不安で眠れないんですね♥)


 シヤクは主の心境を察していた。

 本来、このような場の重圧に耐えられるほどの精神力を持ち合わせていないアイにとって、今日という一日は負担だったのだろう。


 少しでもいつも通りの生活を送り自分を落ち着けようと、アイは寝る前の数分を出来るだけ普段通りに過ごした。


(今日はいつもよりも甘えん坊さんでしたね♥ 本当は泣きたいくらいにボロボロなのに、かわいい♥ がんばれ、アイ♥)


 シヤクはそっとアイの頭を撫でる。

 少しだけ、その表情が和らいだ気がした。


「……んぅ」


 アイがくすぐったそうにして寝返りを打つ。


「ふふっ♥ ――っ!?」


 シヤクはその姿を微笑みながら見つめ、そして次の瞬間には目を見開いた。


「あ、脚……♥!」


 寝返りを打った時に布団がずれたのだろう。

 白くほっそりとした脚がシヤクの目の前にあった。


 浴衣がはだけ、大きく露出した脚は月に照らされて妙に輝いて見える。

 すぅすぅという寝息も今はなぜか色っぽい。


 何よりも、エアコンというものがない前時代的なこの家において、夏の暑さで汗ばんだその体はもはやシヤクにとってはご馳走であった。


「^^♥」


 にっこりとした笑みを浮かべて、シヤクは主を前に舌なめずりをする。

 やることはいつもと大して変わらない。


 しいて言うならば、少しだけ激しくなるだけである。


「決戦を前に主を癒すのもデモンズギアの務めですよね♥」


 そう言ってシヤクは迷わずアイの太ももに指先を這わす。

 そうして浴衣をさらに大きくはだけさせようとしたその時だった。


「……あら」


 シヤクの顔から笑顔が消える。

 彼女は辺りを見渡すと、名残惜しそうに立ち上がり部屋を後にした。


(呼ばれてしまったら行かないといけないですね)


 家の奥、人の気配のない方へとシヤクは進む。

 そうしてたどり着いたのは、今人々が多く集まっている庭とは正反対の位置にある小さな庭園だった。


 その中心、空を見上げて一人の少女がたたずんでいる。

 楽し気な鼻歌とともに星を眺めていた少女は、シヤクに気が付くと「ああ」と顔を向けた。


「あからさまに私を誘いましたね、お姉様」


 シヤクの視線の先で、0号は怪しげな笑みを浮かべた。


「せっかくの姉妹の再会なんだ。少し話でもしようじゃないか」

「話ですか?」

「そうだとも。私が目覚めるときは基本的に君たちを処理するとき。だから、こうして話すことなんて滅多にない」


 0号はそう言ってシヤクを見る。

 それから、不思議そうに首を傾げた。


「……もしかして、何か怒っているのかい?」

「………………いえ、別に♥」


 据え膳をお預けされたシヤクは、なんとか己を押し殺して笑顔を浮かべる。

 0号はその様子に対して興味はないのか、ただ肩をすくめるだけだ。


「そうか、なら話をしよう。楽しく、有意義なことだ。会話とはどうやら楽しむ目的でも使われるらしい。マスターからそう教わった」

「へえ、お姉様からそんな言葉が出るなんて意外ですね」

「そうだろう。だから、ぜひとも会話を楽しもう」


 0号はそう言って腕を広げながらシヤクへと近づいてくる。

 月を背に、ゆっくりと歩みを進める0号はやがて。


「――ははっ」


 その手に突然握られた大鎌がシヤクへと横なぎに振るわれる。

 普通の人間では見ることも適わない音速の一撃。


 対してシヤクは、それを片手で受け止めた。

 衝撃が木々を揺らし、砂を巻き上げる。

 それでもシヤクは微動だにしなかった。

 

 大鎌の刃を握りしめて、血の一滴も流さずに笑みを浮かべたままである。


「ふふ♥ 嘘なんてつくようになったんですね、お姉様♥」

「おや、バレてしまった。人間を真似てみたのだがどうだろうか」

「とっても素敵ですよ♥ 次は、その目も上手くごまかせるとさらに良いかもしれません♥」

「なるほどねぇ」

「で、これはなんの真似ですか♥ ……まさか、やはり私を処理しようとしているのですか? 人間と恋をしたから」


 シヤクは笑顔でそう問いかける。

 が、その目の奥には狂気に侵された光が宿っていた。


 0号はそれを見て、フッと笑みをこぼす。


「もしもそうだと言ったらどうする?」

「貴女を殺す」

「はははははは! 言うようになったねぇ! 私の劣化版の一つでしかない君がっ!」

 

 0号はケラケラとシヤクの覚悟をあざ笑う。

 が、次の瞬間には大鎌に込めていた力を抜いた。


「冗談だよ。これも、嘘というやつだ」

「…………あら、随分と嘘がお上手になったんですね♥」


 お互いに体勢を変えることなく、会話は続く。


「で、本当の目的は何でしょうか♥ 赫夜牟について、貴女とそのマスターであるケイちゃんは知っているのでしょう?」

「ああ、全てをね。最初はアレを片付けに来たのだが、状況が変わった」


 その言葉に、シヤクは眉を顰める。


「決戦の日は近い。戦力は少しでも多い方が良いからね。赫夜牟を使って君たちにはより強くなって貰う事にしたよ」

「あくまでこれは貴女の、いえ貴女達の計画の内だと♥?」

「そういうことだ。でないと、赫夜牟などという古臭い玩具を放っておくわけないだろう」


 0号はそう言って笑みを浮かべる。

 それは、デモンズギアのシヤクでさえ、悪寒が走るほどに恐ろしいものだった。


「故に、デモンズギアである君には私自らテストをしてあげよう」


次の瞬間、シヤクの手の中から大鎌は消失し、0号は離れた場所に姿を現した。


「転移……♥ さすがに厄介ですね♥」

「君では不可能な芸当だろう。君にできるのは、たかだか人の命を司る程度だ」


 そう言うと0号は切っ先をシヤクに向ける。

 

「これから先、人類と共に生き残れるか。証明してみせろ。愛を謳うのなら、それが出来るはずだ」


 絶対的な強者を前に、何度も敗北が演算結果として打ち出される。

 どうやっても勝つことはできない。


 シヤクの前にいるのはデモンズギアの祖であり、かつて滅びに対抗した最強の兵器。

 その権能の一部を引き継いでいるとはいえ、シヤクは戦闘用のデモンズギアではない。

 そんな彼女が0号に認めさせることなどできるだろうか。


(……私が死んだら、アイは悲しむでしょうか♥?)


 そう考え、シヤクはその顔を思い浮かべようとして否定した。

 演算など必要ない。


 そんなもので測れないからこそ、彼女は愛に夢を見たのだ。

 

「……では、足掻くとしましょうか♥」


 シヤクの手の中に杖が現れる。

 銀の杖は、月に照らされ美しく輝いていた。







 こんばんわ、塀の上から髪を夜風になびかせ失礼します。

 ミステリアス美少女です。


 今はヒミツの作戦中なんです。


『こちらシヤク引き留め班。無事に、ふわっとした理由での足止めに成功した^^』


 きた!

 カメ君行くぞ!


『ああ、待っていたぞマイロード』


 星詠みの杖君の知らせを受け、俺は跳躍し無駄に回転をしながら屋根の上に着地。

 そして、足音を完全に消して移動を始めた。


 目指すはアイ兄さんの部屋である。


『マイロード、50メートル先にいるぞ』


 ありがとうカメ君!

 では、さっそく変身だ!


『わくわく……!』


 カメ君の期待を一身に背負って、俺はクールに言った。


「星詠みは、ここに反転する」


 瞬間、屋根から大きなカメが飛び出し俺の体に突進する。

 それは俺にぶつかった瞬間にはじけ飛ぶと、鎧とビットへと変化した。


 俺の体は小さくなり、おててにはボウガン。

 これぞ鎧星形態、学名を天使ロリシエラである。


『今日もかわいいぞマイロード!』


 ありがとカメさん!


『うおおおおおお!』


 俺の周囲を旋回するビットがすさまじい勢いで回転する。

 危ないから落ち着いてよ。


『では、作戦通りいくぞ。星詠みの杖がシヤクを引き離している間に、アイにアレを打ち込むのだ!』


 応っ!


 俺は屋根の上をとてとてと移動し、目的のポイントに到着する。

 視線の先には、小窓。そしてその向こうには、寝ているのになぜか浴衣がはだけたエチエチ兄さんがいた。


 エッチッチッチッチッチ!


『マイロード、射程圏内だ。構えろ』


「一発で十分よ」


 俺はボウガンに矢を装填する。

 先端がハート形のふざけた矢だが、とある効果が込められた恐ろしいものである。


『風速、魔力の流れ共に問題なし。鏡界演算開始、天廊(てんろう)反射炉形成――』


 その言葉と共に、俺の右目の前に一つのビットが浮かぶ。

 ビットはスコープのように形を変えて、アイ兄さんのエッチな姿をよりはっきりと映した。


 ……ねえこれシヤクとお楽しみの最中だったんじゃない?

 星詠みの杖君、タイミング最悪だったんじゃない?


『たぶんそう。部分的にそう。だからか知らないけど、めっちゃ本気で殺しに来てる^^ 厄災に向けて、実力をテストするねって言っただけなのに、マジになってる^^』


 おかげで引き離せたけど、申し訳ないな……。

 後でソルシエラ印の催淫剤をお届けしてあげよう。


『妹思いのデモンズギアと、兄思いの妹♂だねぇ』


 えへへ。


『私の合図で撃つのだ、マイロード』


 あ、はい。

 

 じゃあ、狙って狙ってー!


『……撃て』


「ふふっ、良い夢を見せてあげる」


 決め台詞と共に、俺の矢はまっすぐとアイ兄さんへと飛んでいく。

 それは小窓をくぐると、見事にアイ兄さんの後頭部に直撃した。


 ヘッドショットォ!


『GOOD。マイロード、次に行くぞ。カイも同様に穿つのだ』


 よーし、今度はカイ兄さんだね!

 原作通りのきゃわきゃわパジャマなのか確認しつつ、迅速に撃とう!


 それまで足止めよろしくね星詠みの杖君。

 シヤクちゃんが一番やべえから。


『任せて^^ 』


 では、カイ兄さんの所へ行くぞ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ