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かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
四章 騎双学園決戦

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第134話 愛憎


 犬も歩けば棒に当たるなら、ミステリアス美少女が美少女を拾っても問題はあるまい。


 例えそれが、自分にクソデカ感情を持った美少女だとしてもだ。

 

『時限爆弾抱えているのと変わらないと思うが』


 美少女なら爆弾でもいいんだよ!

 爆風一つ余さずに全てこの身で受け止めるからねぇ^^


『受け止める!? やっぱり受けじゃないか!』


 めんどくせえなコイツ。


「……ねえ、そろそろ自分で歩けるんじゃないの?」


 俺の背後で、クラムちゃんが明らかに不機嫌そうにそう言った。

 足元の蛙が増えていっている気がする。

 アレ一つ一つが爆弾なので、正直怖いです。


『ほら爆弾だぞ、受け止めたまえ』


 物理的な爆弾は話が変わってくるだろ。


「いやー、まだ歩けないなー。ごめんね、ソルシエラ」


 リンカちゃんは、俺の腕の中でニッコリと笑顔を浮かべる。


 落下してきたリンカちゃんをキャッチしたのだが、どうやら足を怪我していて歩けないらしい。

 

 という訳で、今の俺は美少女なのでリンカちゃんをお姫様抱っこしていた。

 美少女! なので!


『うーん、無罪!』


 司法は今日も公平である。


「チッ……ソルシエラ、私がソイツ担ぐよ」

「えー、そんないいよ無理しなくて。大丈夫大丈夫、君の好意だけ受け取っておくからさ」

「は?」


 見たまえ星詠みの杖君。

 ミステリアス美少女を取り合って二人の美少女がバチバチに争っているぞ。

 流石に胃が痛い。二人の美少女に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 


 私のために争わないでって、言いたいねぇ。


『よし、さらに0号を』


 ここを戦場にする気?

 駄目だよ流石に。


「アンタは知らないと思うけど、ソルシエラは天使と戦って疲れているの。だから、大人しく、私に担がれなさい」


 蛙の鳴き声がより一層激しくなっている。

 一瞬、田舎の夜の風景が思い浮かんだ。


 そうだ、夏は田舎に行こう。

 田んぼがあって、綺麗な川がある場所がいい……。


 そこで白いワンピースを着て、ミステリアス美少女ごっこをするんだ。

 たまたま祖父母の家に来ていたキッズにひと夏の思い出をプレゼントしよう。


『またいたいけな少年を壊す気か! どれだけ罪を重ねれば気が済むんだ!』


 誰が少年だけと言った?


『なん……だと……!』


 そんな感じで夏休みを思い浮かべていると、不意に腕の中からリンカちゃんが消えた。

 横を見れば、クラムちゃんがムスッとした顔でリンカちゃんを蛙に担がせている。


 それ爆弾だよね?

 

「離してよー! ソルシエラ助けてー!」

「うるさい。あんまりソルシエラに迷惑かけるな」

「……さっきから、君はソルシエラの何?」


 蛙に運ばれながらリンカちゃんがクラムちゃんを睨む。

 その瞬間、クラムちゃんはそれはそれは凄いドヤ顔で言った。


「私は、ソルシエラの理解者。いい? り・か・い・しゃ! わかった?」

「君が? ……フッ」


 リンカちゃんが鼻で笑う。

 おいやめろリンカちゃん! 君の下のそれは爆弾なんだぞ!


「…………マーちゃんズ」

「やめなさい、クラム」


 流石にストップです。

 美少女が美少女を傷つけてはいけない。

 

「……命拾いしたね」

「そりゃよかった。あ、私はリンカね。吾切リンカ。ソルシエラの友達で協力者。わかる? 貴女と違って、私は《《協力》》してるの。後方理解者面じゃないの」


 してたかな……?

 まあ美少女がそう言うならそうなのかも……。


「それでこの様なんだ。へー」

「……言いたいことがあるならもっとハッキリ言ったら? 理解者(笑)さん」

「こいつ……!」


 舌戦はリンカちゃんの方が強いか?

 というか、クラムちゃんが煽り耐性が低い。


『違う。これは煽り耐性が低いわけではない。ソルシエラが関わると、彼女の思考は防御を捨て攻撃的になるんだ。同時に、彼女はソルシエラ程じゃないが「受け」の素質を持つ美少女。押されれば弱い彼女に、リンカは相性が悪い敵だと言えるだろうねぇ』


 ありがとうございます、専門家の星詠みの杖さん。


『いかがでしたか?』


 急に無能になるな。


「……とっ、というか、そもそもなんで急にこの場所に落ちてきたの?」


 クラムちゃんがなんとか弱点を探ろうと言葉を連ねる。

 それは実際俺も知りたいところだったのでナイス質問だ。


「それは部外者には言えないなぁ。勿論、ソルシエラは知っているでしょ?」


 えぇ!?


「……ええ、勿論。まったく、無茶ばっかりするんだから」

「どうしても必要な事だったからね」


 マズいぞ、知らないままに話が進んでいく。


『どうして嘘ついたんだ……』


 しょうがないだろミステリアス美少女なんだから。

 ミステリアス美少女は、何でも知ってるの。

 それが普通なの!


「……クラムにも教えてあげて。彼女も今や無関係ではないわ」

「ソルシエラ……!」


 ぱぁっと明るい表情になったクラムちゃんと、一瞬ムスッとしたリンカちゃん。


 どうして片方が笑顔だと片方が不機嫌になるんです?

 どっちも笑ってくれよ。


『この状況を楽しんでいる奴が何言ってんだ』


 楽しいけど……それよりも罪悪感が……!

 俺は二人に笑ってほしいんだ。


「まあ、君がそれでいいって言うなら」


 そう言ってリンカちゃんはここに来た経緯を話し始めた。

 難しい単語がいっぱいだったので、ついていくのがやっとである。


 リンカちゃんの話をまとめると、銀の黄昏がまたなんかやらかしたので、その証拠となるものを探しに行ったらしい。


「――それで、見つかってここに放り投げられたってわけ」


 よく生きてたねそれ。

 いや、俺がキャッチしなかったら死んでたのか。


「ダサ、結局見つかってるじゃん」

「あんなの予測できないよ! じゃあ君は壁から突然騎双学園の生徒会長が飛び出してくるって予測できるの? そのまま担がれて人質として扱われたらどうすればいいの!」

「……それは、えっと……ごめん」


 何がどうなったらそんな状況になるんだよ。

 聞いても理解できないんだけど。


「そう言えば、ネームレスと名乗る少女と接触したよ」

「っ!? ……そう」


 リンカちゃんの口から出てきた名前に俺は戸惑う。

 アイツ本当に何なんだ。


「彼女は何者……?」

「私にもわからない。あれは完全なイレギュラーよ」

「ふーん。ちなみに、知り合いだったりとかは」

「……心当たりがないわね」


 俺の顔を、リンカちゃんがジッと見つめている。

 あれたぶん俺の表情から嘘かどうか読み取ろうとしているね。


 ははは、甘いわ!

 ミステリアス美少女の表情筋を舐めるなよ!


「またネームレスか……厄介だね」

「君も知ってるんだ」

「うん」


 クラムちゃんが胸を張ってそう答える。

 

「と言っても、私達も詳しくは知らないけれど」

「そうね」


 俺と情報共有してますよ、といった様子でクラムちゃんはアイコンタクトしてきた。

 

「ただ、次会ったら容赦はしないわ……ふふっ、あの子の泣く姿が今から楽しみね」

「……うん次は捕まえよう。私も手を貸すから」


 不意に右手を握られる。

 思わずヒロイン声を出しそうになってしまったが、俺は平然とそれを受け入れ握り返した。


「なっ……!?」

「どうしたのかな、協力者ちゃん(笑)」

「い、いや別にぃ? ……あ、あーなんか急に立てるようになったわー! 探索者の治癒能力のおかげだねー!」


 リンカちゃんはそう言ってマーちゃんズの上から飛び出すと、そのまま俺の左横にピッタリとついた。

 え、足大丈夫なの?


『君だけだよ、あれを本気にしてたの』


 美少女の怪我は心配して当然だろ!


「……ちょっと、なんでアンタも手を握ってるの」

「仲良しだからだよ。ねー」

「……どっちも離してほしいのだけれど」

「「やだ」」

「…………そう」


 ミステリアス美少女は強い拒否ができない。

 そして手を振りほどくこともできない。

 これ武器出せないんだけど、どうすんの?

 天使がまた出てきたらどうすんの?


『自分、いつでも行けます! 天使を倒して、その後に二人の感情をぶっ壊せます!』


 やめろって言ってんだろ。


 両手を美少女に拘束された俺は何もできない。


 今は領地戦が始まった頃だろうか。


 領地戦の後に、トウラク君に天使の死骸を見せたいのでそれまではここでスタンバイである。

 

『拡張領域の中に天使の死骸入れるのやめてほしいんだが。というか君は平気なのか?』


 別に。

 というか、鹿の首っぽくてお金持ちの家にあるやつみたいでむしろ好きかも。

 あれ部屋に飾っちゃダメ?


『断固拒否するねぇ!』


 そんなぁ。

 部屋のインテリアに丁度良いと思ったんだけどな。


「はぁ」

「どうしたのため息なんてついて。……あ、やっぱりアイツに手を握られるの嫌だった?」

「ははっ、ナイスジョーク。君のその無駄に積極的な姿勢にうんざりしているんじゃないの?」

「は?」

「ん?」

「喧嘩はやめなさい。私、意味もない争いをする子は嫌いよ」


 二人を落ち着けつつ、俺は荒野を進む。


 あー、早く領地戦終わらねえかなぁ。










 同時刻、領地戦用特別エリアにて。


「リンカ……どこに行ったんだ。まさか、騎双学園の奴らに……!?」


 焦燥感から、トウラクは白太刀を強く握りしめる。

 そんな彼の心を支える者はこの場にはいない。


『行こう、トウラク。私達に出来る事は戦う事だけ』

「……うん、そうだね。全員、切り伏せればいいだけだ」


 間もなく、領地戦が始まろうとしていた。

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