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かませ役♂に憑依転生した俺はTSを諦めない  作者: 不破ふわる
一章 星詠みの目覚め

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第11話 美少女だからと言って、話の主軸に絡む必要はない

 なんか、皆やたらと優しい。

 六波羅さん相手に頑張ったからだろうか。


 元を辿れば俺が原因なので、マッチポンプ風味ではある。……いや、大元は配信じゃねーか! アイツが配信してなければこんな事にならなかったんだよ!


 次あったらボコボコにしてやる。


「さて、皆さん無事ですし今日も楽しい学園生活の始まりです」


 生徒会室で、手をぱちんと一度叩いたミロク先輩はそう言って笑った。

 電話番はもう良いのかと、電話を見てみればコードが抜けている。……迷惑かけてごめんなさいね。


「今日はもう既に随分と仕事をした気がするが……思い返せば何もしていないな。結局目当てのデモンズギアも見つけられなかった」


 ミズヒ先輩は、自分のダイブギアを磨きながら不満げに呟く。

 見つけたらその時点でBAD直行なので、切実に見つけないでほしい。その点で言えば、まだ六波羅さんの方がマシだ。


「そう言えば、ケイ君がダンジョン救援に登録したいらしいですよ」

「何? それは本当か」


 たまたまか、それともこのままだとまたあの実験施設に行きかねない空気を察したのか、ミロク先輩がミズヒ先輩にそう告げる。


 そう言えばそうだった。

 元は、新しいお金稼ぎとして救援に行くんだった。


「そうなんですよ。俺、もう初心者用ダンジョンで大分体の動かし方を理解しましたし、今度こそご一緒できればと」

「そうか。なら、すぐ行こう」

「えっ」


 まだ俺、朝飯食ってないんですけど。


 そんな俺の視線を理解したのか、ミズヒ先輩は立ち上がって自信満々に頷いた。


「大丈夫だ。朝食はこのタッパーに詰めている。向こうで食べよう」

「……また、もやしですか?」

「そうだが?」


 よくそれで毎日戦えているなアンタ。






 

 学園都市ヒノツチの中央都市。

 そのさらに中心に存在する、巨大なDNA螺旋構造のような塔。

 通称『アリアンロッド』

 そう呼ばれているこの場所は、学園全体を管理するエイピス理事会の本部が設置されている。


 ダンジョンの救援システムは、そのエイピス理事会が考案し、今日にいたるまで運営をしていた。


「ここがアリアンロッド……」

「厳密には違う。この建物の十階から上がアリアンロッドだ」


 建物内で、キョロキョロする俺を他所にミズヒ先輩はそう言った。


「アリアンロッドは足を踏み入れる事が出来るだけでも、エイピス理事会から一目置かれている証拠らしい」

「へぇ」


 知らなかった。

 そんな描写、全然なかったし。

 なんなら、割と早い段階でトウラク君はアリアンロッドにいた気がする。改めてとんでもねえな、あの人。


「さっさと登録を済ませてしまおう。救援要請は常に至る所で発生している」

「あ、はい」


 俺はミズヒ先輩に連れられて機械の前に立つ。

 なんか、映画館の券売機みたいだぁ。


 操作自体は割と単純。というか、そもそもダイブギアが紛失したら詰むレベルで個人情報の詰め合わせなので、これと通信したら大体が完了した。近未来~!


 ちなみに、スマホも存在するが、明らかに戦闘でぶっ壊れそうな物は探索者は持ち歩かないらしい。じゃあソシャゲのスタミナ溢れたらどうすんだよ。



「これで、ケイのダイブギアに救援依頼が届くようになった。詳しい座標と、現在そのダンジョンに挑んでいる生徒が表示される」


 そう言われて、俺はダイブギアを操作してみる。

 すると、確かに新しいアイコンが増えていた。

 

 起動してみれば、学園都市の地図と共に至る所に救援要請を意味する赤い丸と、その横に生徒名と校章が記されている。


 すげー。

 そもそも俺としてはダイブギアから現れたこの半透明な板でタブレット同様の操作ができるっていうのがまず驚きポイントなのだが、この世界では当たり前の技術のようだった。


「それじゃ、いこうか。後は、救援先で説明した方が早いだろう」

「はい」


 ミズヒ先輩は、救援要請を見比べて俺と共に行くに相応しい物を選ぶと歩き出した。

 俺がそれを追って一歩踏み出したその瞬間だった。


「――ケイ君?」


 随分と聞きなれた声が、背後から聞こえる。


 こ、この主人公のような声は!


 俺は思わず振り返る。

 そこには、黒目黒髪の主人公の優良サンプルみたいな容姿の青年が立っていた。


「牙塔トウラク……!」


 やっべ本物! 本物だァ! 握手してもらおうかなー!?

 サインとか、このダイブギアに書いてくれたりするのかなぁ!?


 ってか、身長高いなぁ。

 180だっけ? まだ高校一年生なのにそんなに高いんだね!


 そんでもってこんな自分よりも背が大きい人を虐めていたんだ、かませ役♂。度胸があるとかそういうレベルじゃねえな。怖いって。

 サバンナでライオン虐めるようなものじゃん。


「――き、聞こえてる? ケイ君」

「ん? ああ」


 やっべなんかトウラク君が話していたみたいだけど、聞いてなかった。

 ごめん。でもほら、俺ってかませ役♂だしそういう失礼な態度も当然というかさ。

 自分でも舞い上がっちゃってるのがわかるわぁ!


 ちびっ子が、仮にヒーローショーではなく本物に出会ったとしたら恐らくはこんな感じになるのだろう。


 それくらい、俺はトウラク君のファンであった。

 どうにかして握手できねえかな!


「ケイ君、急に別の学校に行ったって聞いて。その……僕があの決闘でやりすぎたのかと思って」


 いい子~!

 今まで虐めてきた本人に対してもこの思いやり。

 器がでっけえでっけえ男だ。


 これは原作を知っている俺だからこそ分かっていることだが、誰ともパーティを組めていなかった自分を誘ってくれた那滝ケイに、トウラク君は随分と恩を感じているのだ。


 ダンジョンに閉じ込められた時も、那滝ケイへの暴言は一切無い。


 まあ、これに関しては彼の家庭の事情で自尊心と自己肯定感がボロボロなので自責思考になっているだけでもあるのだが。


 それでも、やっぱりいい子だった。

 そして、そんな彼を相手に俺は那滝ケイとして接することを強いられている。


 急に態度を変えるとそれはそれで気持ち悪いだろうからね。

 負け犬に徹するぜ、キャインキャイン! くぅ~ん!


「ふん、別にお前が原因なわけないだろ三流! 俺はあくまで自分の意志で、御景学園を去ったんだ!」

「で、でも」

「くどいな。それになんだ、さっきからその目は。まるで俺を憐れむような目。いつから、貴様は俺よりも偉くなった?」

「っ、ご、ごめん」


 こっちこそごめん……。


「こんな所でお前と話している暇はないんだよ」


 そもそも原作じゃこんなシーンないから、あまり会話をしてはいけない。

 すでに六波羅さんの動きが変わっているのでこれ以上の原作干渉は危険だ。


 と、その時俺とトウラク君の間に割り込むように誰かが飛び込んできた。


 見覚えがある水色のハーフアップツインの髪が揺れる。

 それはまさしく、トウラク君のメインヒロインに他ならない彼女だった。


「アンタ、さっきからトウラクになんて態度取ってるのよ!」

「双葉ミハヤ……」


 俺、感涙。

 

 主人公だけでなく、メインヒロインとも会えた。

 俺は憑依してから転校手続きまでを爆速で行っていたため、原作のキャラとは関わりがない。


 こうして会うのは初めてですね。


 俺の知る限りの原作の最新刊で、無事トウラク君と付き合えたようでおめでとうございます!


『双葉ミハヤ』。

 彼女は、主人公の幼馴染でありツインテールのツンデレという圧倒的負けヒロイン属性を背負いながらも、ぶっちぎりでメインヒロインになった素晴らしいお方だ。

 後に、Aランクのクソ強い探索者になる頼もしい相棒枠でもある。

 特に『絶対に先手で致命傷をとる』という特殊能力がヤバイ。敵に回すと、余裕で死ねる。


「何よ、私の言葉に文句でもあるわけ?」

「別にない。鬱陶しいからさっさと失せろ」

「はぁ!? トウラク、また決闘しなさいよ! そんでもってボコボコにしなさい! 嫌ならアタシが決闘する!」

「えっ、ミハヤ駄目だよ!」

「はぁ。相変わらず騒がしい女だ」


 そしてそれが長所だ。

 いつも、主人公が挫けそうなときは隣に立って手を引いてくれる。

 そんな素敵な女性なのである。

 特におすすめなのは単行本六巻の特典イラストのウェディング姿で――。


「失礼、うちの生徒が何かしただろうか」

「あ、ミズヒ先輩」


 そう言えばうっかり忘れていた。

 すみません先輩。心が読者に戻ってました。


 ……先輩? どうしてそんなに二人を睨んでいるんです? 先輩!?


「アンタ、何よ」

「私はフェクトム総合学園、生徒会副会長の照上ミズヒだ。うちの生徒と決闘するのなら、まずは私に話を通してもらおう。尤も、貴様ら程度がケイに敵う訳が無いがな」

「は? なによ」

「なんだ? 私と決闘がお望みか?」

「ちょ、ちょっとミハヤ!」

「ミズヒ先輩、抑えてください。俺は別に良いので」


 トウラク君とそれぞれを宥める。

 ごめんなさいねぇ、ウチの先輩が。普段はこんな人じゃないんですよ? 口実作って戦いたがるだけの人なんです。……じゃあ平常運転か。


 いやぁ、お互い大変ですねぇ。ははは……ん? そういえば、一人足りないな。


「トウラク」

「な、なにかな」

「ルトラはどうした」


 トウラク君の契約した最強のデモンズギアであるルトラちゃんがいない。

 真っ白の髪に、蒼い眼の幼女である。

 基本はトウラク君と一緒にいるのだが、どうしてだろう。彼女の姿が見えない。


 こういった争いの時に「トウラク、コイツ切っていいの?」と聞いてトウラク君が止めるお決まりのヤツがあるのだが。


「ああ、ルトラなら御景学園だよ。デモンズギアの事が学園都市に広まったからね。念のため、彼女を余り外に出さない様にって生徒会長が」

「そうか」


 じゃあ、俺のせいじゃない?

 厳密には、俺と配信者のせいじゃない?


 マジごめんねルトラちゃん。君、お出かけ大好きっ子だったもんね。せっかくのお出かけの機会奪ってマジごめん。


「……どうして、ケイ君がルトラの事を知っているの?」

「は? 知っているだろ……ぁ」


 やっべ!

 俺、知らねえ筈じゃん!?


 那滝ケイとの決闘では、まだルトラとは仮契約の状態。

 だから、名前も何も知らない。ましてや、女の子の姿であるという情報すらもこの那滝ケイという存在は知らないはずなのだ。


 どうしようかなぁ。ちょっとはしゃぎすぎて余計な事言っちゃったかな。


「別に、お前らには関係のない事だ。答える義理はないね」

「……!? もしかして、わざわざあのダンジョンに閉じ込めたのって」

「お前が何を考えているかが想像できるが……そんな事はあり得ない」


 マジであり得ません。

 那滝ケイは普通にクズでアホなだけです。

 ナイフペロぺロするだけのかませ役♂です。


「……ケイ、そろそろ行くぞ。救援要請が来ている」

「はい」


 ナイス助け船だぜミズヒ先輩!

 後で、俺の持ってるソルシエラをどうにか売り払ってお肉御馳走するからね。楽しみにしててくださいね。


「ま、待ってくれ」


 待ちたい!

 けど、待てない。


 トウラク君、君の活躍は草葉の陰からこっそり応援させてもらうよ!


 俺は、主人公様の呼び止める声を無視してその場を後にした。







「い、行っちゃった……」

「ふん、あんな奴放っておきましょ! あのミズヒって奴も、あのクズに騙されているのを気が付けないで、いつか痛い目見るんだから」


 ミハヤはそう言って不機嫌そうに鼻を鳴らす。

 が、トウラクは違った。


「ケイ君、本当に酷い奴だったのかな」

「はぁ!? アンタ、自分が何をされたのかわかってんの!? ダンジョンに置き去りにされたのよ!? ダイブギアも無しで。ルトラがいなきゃどうなっていたことか」

「――そう、ルトラが《《いた》》。そして、それを彼は知っていたんじゃないかな」

「は?」


 トウラクは今日、初めて会った時のケイの目を思い出す。話しかけた自分を無視して、まるで何かを見定めるように自分の身体を見ていた。


「ルトラの名前も知っていた」

「そんなのたまたまどこかで聞いたんでしょ」

「なら『そうか』って返事はあり得ないよ。僕は、ルトラがデモンズギアだから置いてきたって言ったんだ。もしも、ケイ君がルトラをただの女の子だと認識していたのなら、その時点で驚くはず」


 それなのに、ケイはただ静かに返事をした。

 驚いた様子は疎か、考える事すらせずそれが当然の事として受け入れていた。


 それはまさしく、彼がデモンズギアを知っているという何よりの証拠だ。


「確かに言われてみれば……って、さっきのミズヒとかいう生徒! 確かフェクトム総合学園って言っていたわよね!?」

「え、うんそうだけど」

「例の配信でデモンズギアが発見された学園の名前がフェクトム総合学園よ。……まさか、それを知っていて?」


 トウラクは頷く。


「ケイ君、あの人への態度は凄く丁寧だった。いや、というよりは僕達への態度があからさま過ぎる。まるで、嫌われようとしているかのような……。御景学園ではそう立ちまわる必要があった? そもそもあの時の僕に接触してきたのが、おかしい。虐めるためにわざわざ今まで無関係だった僕を相手にするのが普通か? いや、前提から、考え直す必要がある――」


 より深く考えこもうとしたその時だった。

 トウラクは、おでこに軽い衝撃を受ける。


 見れば、ミハヤがデコピンをした態勢のまま見つめている。


「これ以上は考えても仕方ないわ。アイツが何を考えているにしても、私たちは私たちに出来ることをしましょ。とりあえず、今日はアリアンロッドに行くんでしょ?」

「ああ、うん。そうだったね、ありがとう」


 トウラクは礼を言うとアリアンロッドへとつながる唯一のエレベーターへと向かっていく。

 

(ケイ君、君は一体何が目的なんだ)


 その問いの答えは今はまだ出そうになかった。

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