第二十六話:理外のその先へ、絆の終着点
色葉の神格化『零の聖域』が展開され、戦場の空気は一変した。
アザトースが誇った「概念侵食」も「不死性」も、色葉の無垢な白の波動に触れた瞬間に、ただの「無」へと還されていく。
「……バ、バカなッ! 我は万物の根源、混沌の王ぞ! その我が、なぜ力を……存在を感じぬのだ!!」
アザトースの巨大な体が、色葉の無効化領域によって、ただの脆弱な「標的」へと引きずり下ろされる。
「今だ、ゼル!!」
神格化を維持するスイ、ジン、リアの三人が、残された全エネルギーをゼルの背中へと注ぎ込む。
「……色葉。お前のその『無効化』、俺に預けろ」
ゼルが、色葉の隣に立つ。
通常、ゼルの「無限の感情」と、色葉の「すべてを消す無効化」は、水と油のように反発し合うはずのものだった。
しかし、二人が互いの手を強く握りしめた瞬間、その力は未知の領域へと昇華した。
ゼルの左腕から放たれる虹色のオーラが、色葉の白い輝きを包み込み、螺旋を描いてアークを包み込む。
「……ゼル。私の力は、このためにあったんだね」
「ああ。……お前が『ゼロ』にした世界を、俺の重力で塗り替えてやる」
理外の王 × 無効化の聖母
二人の絆が、「理外」をも超えた真の答え(アンサー)を導き出す。
最終奥義:新星・天導く重力
「アザトース……。お前の『虚無』なんて、俺たちのたった一日の『思い出』の重さにも勝てねえんだよ!!」
ゼルが右手を突き出す。
色葉の力でアザトースの「あらゆる防御法則」が消失した無垢な空間に、ゼルの「無限の感情の重み」が叩き込まれた。
「『感情の終着点』――新星・天導く重力!!」
ドォォォォォォォォン!!
それは破壊ではない。アザトースという「悪意の概念」そのものを、新たな宇宙の星々へと再構築する、理外の一撃。
邪神の王は、悲鳴を上げる間もなく、暖かな光の奔流の中に溶け、浄化されていった。
虚無の深淵は崩壊し、暗黒の空からは光が降り注ぐ。
アークは、ボロボロになりながらも、仲間たちの笑顔を乗せて、次元の壁を越えていった。
数週間後。
天界の「十二神」の座は空席となった。ゼルたちが「自分たちの居場所は神殿ではなく、あの家だ」と、地上へ帰ることを選んだからだ。
地上。いつもの天導家のリビング。
「……ゼル! また私のプリン食べたでしょ! 半分ない!」
「……お前が太るのを防いでやったんだよ、感謝しろ」
相変わらずの言い争いをする二人。
キッチンではスイとリアが楽しそうに昼食の準備をし、ジンはソファで「因果の読書」を楽しんでいる。
ゼルは窓の外、どこまでも続く青い空を見上げた。
かつては「感情の終着点」を、自分を壊す呪いだと思っていた。だが今は違う。
「……さてと。飯食ったら、今日は全員で買い物にでも行くか」
ゼルの言葉に、色葉が満面の笑みで答える。
「賛成! 帰りにまた、プリン買ってね!」
理外の王と、彼を繋ぎ止める愛しき仲間たち。
彼らの物語は、これからもこの青い星で、騒がしく、暖かく続いていく。




