裸とセクハラ絶対殺すウーマン
本編「暗殺依頼を受けたらとんでもない事になった」の1話読み切りのパロディ短編集。
街外れの薄暗い住宅街。ライルは自室の机に突っ伏し、遺言でも書くかのような震える手でペンを握っていた。
「……シエラ君。聞いてくれ。第3章が幕を閉じたというのに、我々には、冷たい風(評価ゼロ)しか吹いていないんだ……」
「……そうね。わたしも、そろそろ自分の存在価値を見失いそうだわ」
「そこでだ。俺はある『妙案』を思いついた。……ビャクを、温泉に誘おうと思う」
シエラが、ゴミを見るような、あるいは未知の害虫を見るような眼差しをライルに向けた。
「ビャクは凄いんだぞ。何が凄いって、あの研ぎ澄まされた身体だ。腹筋にはうっすらと縦線が入り、まさに動く芸術品。これを描写に収めない手はないだろう?」
「……あのねぇ、ライル。ビャクは肩に手が伸びただけで、相手の首を飛ばしかねないセクハラ絶対殺すウーマンよ?
それに彼女の技術……『斬撃無効の空間で、無効を無効にして斬撃を当てる』なんていう、作者も説明を投げ出すような次元干渉能力の使い手なのよ?」
シエラは鼻で笑い、無慈悲に宣告する。
「今の弱っちいライルじゃ、一瞬で細切れのミンチにされるのがオチよ」
「確かに今は弱いけど、俺には努力が強さに反映され易い謎の恩恵があるから、最終的にはきっとすっごい力持ちになるんだぞ!」
「今弱い事へのなんの反証にもなってないわよ! ライルが弱くて地味だから評価がつかないの! この無能冒険者!」
「俺だけのせいにするな!」
─ガチャ
その時、無情にも玄関のドアが開いた。
「やあライル。ノックしたが返事がなかった。……不用心だぞ、鍵が開いていた」
「ビャク…、こんな夜中にどうかしたのか?」
「実は部屋の風呂が壊れてしまってな、風呂に入らせてもらえないだろうか。」
(このタイミングで現れて…この台詞を言うだと…!? 彼女は女神なのか!)
ライルは素早くビャクにかしずく。
「ビャク様、お風呂の準備は万端でございます!このライル、ビャク様の美しいお体を洗わせていただく光栄に預からせていただきます!」
「なに?一緒に入るのか?」
「わたくしはお背中を流させていただくだけです!ご希望されるようであれば髪なども…」
─ドス
「がはっ!」
ライルのみぞおちにはビャクの膝がつき刺さっていた。
みぞおちを押さえると、ライルはそのまま床に崩れ落ちる。
「ライル、お前は未婚だったな。……国の少子化対策のために急所は外してやった。感謝しろ」
ビャクは冷ややかな一瞥をくれると、悠然と部屋を出て、大衆浴場へと向かった。
暗闇のなか、軽蔑の視線を送るシエラと、「女神様……」とうわ言を漏らす男だけが残された。




