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Donect  作者: 天霖千
9/14

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 ロケバスの中は、思ったより静かだった。

 前列に、三宮和龕。

 その後ろに、霜月百。

 さらに後方、窓際に神無。

 そして、その隣に睦月。

 配置は、自然に決まった。

 神無は、無意識に睦月の影に入るように座っている。

「……今日の現場、聞いてる?」

 百が振り返って、柔らかく声をかける。

「地方の公開収録。歌はなし、トーク中心」

「聞いてる」

 神無は短く答える。

 マイクケースを、膝の上で抱えている。

 和龕が、前を向いたまま言った。

「倒れるなよ」

 一瞬、空気が張りつめる。

「そのために俺がいる」

 睦月が即答する。

 和龕は、それ以上何も言わなかった。

 この小さな子供の言葉を信じれるから。Donectのファンだから。

 現場は、小さなホールだった。

 客席との距離が近い。

 ざわつく声。

 視線。

 神無は、久しぶりに“舞台袖”に立った。

 胸が、微かに痛む。

 歌わない。

 それでも、ここはステージだ。

「大丈夫?」

 睦月が、小声で聞く。

「……多分」

「多分は信用しない」

「じゃあ、大丈夫」

 睦月は、それで納得したらしい。

 スタッフの合図。

「本番、いきます!」

 三人が、並んで出る。

 拍手。

 思ったより、温かい。

 神無は、マイクを握る。

 歌わないマイク。

 それでも、手は震えなかった。

「今日は、特別な形での出演です」

 司会者が説明する。

「新しい体制で、初めて現場に立つ三人です」

 百が、軽く会釈する。

 和龕は、視線だけで客席を見渡す。

 神無は堂々と自分の足で立っていた。

 今までの活動で無意識に体に染み込んだ行動として。

 ——いつも通り。

 トークが進む。

 質問が振られる。

「今の活動について、どう思ってますか?」

 一瞬、間。

 神無が、マイクを口元に持ってくる。

「……正直」

 会場が静まる。

「怖いです」

 ざわり。

「でも」

 舞台袖の睦月が、視界に入る。

「一人じゃないので」

 それだけ言って、マイクを下ろした。

 百が、すぐに繋ぐ。

「僕らも、まだ途中です」

 和龕が、短く締める。

「だから、見ててください」

 本番が終わる。

 袖に戻った瞬間、神無は息を吐いた。

「立てたな」

 和龕が、ぽつりと言う。

「……はい」

「それでいいんだよ」

 百が、笑う。

「初現場としては、上出来」

 睦月は何も言わず、神無の様子を見ていた。

 神無は、マイクをケースに戻す。

 歌わないまま、現場に出た。

 それでも。

 ——確かに、始まってしまった。

 三人で立つ、最初の一歩。

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