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相原彼方の異世界物語  作者: klow
第一章 偽りの姫
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第一章  四話  採用試験での死闘

俺がいる国。ミルフィーユ王国では、少し前に王様が亡くなったらしい。王子が二人いるらしいが今は王様の側近がなんとかまとめているということだ。国の騎士になるためには一カ月に一回行われる採用試験に合格しなくてはならない。


「まずは、来月行われる採用試験に合格しようぜ!!」


フェリスがそう言って稽古をつけてからちょうど一月ひとつきが経った。


俺はというとフェリスになら同等に闘える力をつけた。まぁそれまでには百回ぐらいフェリスにボコボコにされたが。あの弱い者いじめはもう思い出したくもない。


「カナタがこんなにも短期間で強くなるなんて驚いたぜ。だけど剣の腕はまだまだだ!!その身体能力でカバーしているが実践で使えるにはな。」


「まぁ身体能力は神様のお墨付きなもんでね。そんなこと言ってるがフェリスにならもう勝てるな普通に。」


「お前なぁ‥‥これでも俺は第四師団副長だぜ。弱いわけじゃないんだぜ?お前がおかしいんだ!お前が。」


この一ヶ月でフェリスとカナタの中も一段と深まり、じゃれ合っている姿を周りから見れば長年からの知り合いにしか見えないだろう。


「それよりさぁ採用試験って実技のほかに何かあるのか?てか合格の基準って低いん?」


「今になってそんな事の心配か?心配しなくても俺より下の騎士たちが少し試験者達の力を見るだけだって。今のお前じゃあ楽勝だぞ?」


へらへらと笑いながらフェリスは言うので当日ということもあり気張っていた体を楽にする。フェリスより下ぐらいの騎士ならなんとか良い勝負はできるだろう。


「ほかに質問することはあるか?稽古づけの毎日だったから聞きたいことがあるなら俺の知ってる限り教えるぞ。」


「ああ大丈夫だ。」


「そっか。ならそろそろ時間だしいっちょ行くか!!」


そう言ってフェリスはタオルで汗を拭きながら試験会場に行くための準備に取り掛かるため家の中に入っていた。そのあとに続いて俺もついていった。












********

ミルフィーユ王国は城を中心に建物が建ち並んでいて、試験会場は中心に位置する闘技場で行われる。ここはまさに野球のドームのような広さだった。試験者は十数人集まっていてその中を30分の遅刻で試験官がやってくる。


「えー今回は第八師団長のガリアが責任を持ってお前らを見させてもらう。試験は簡単だ!!自分の持ち武器を使って、この俺を倒すか認めさせるかだ。分かったかお前らぁ。」


身長が百九十をゆうに超えている大男がめんどくさそうに説明をしていく。筋肉も無駄なくついており人は見た目で判断しないと言われてもこれでは強いとしか感じられない。


フェリスに聞いて話だがこの国では騎士団が八つあり師団長ともなれば最高クラスらしい。試験は楽だとへらへら笑っていたフェリスを無性に殴りたくなる。


こりゃあ勝てねーな。てか、師団長がくるなんて聞いてねーよバカヤロー!。


「あとな。今回は第二王子が見学に来てるから俺もいつもみたいに手はぬかねーから。死ぬ気でかかってこい!!」


おいおい‥‥今回レベル高すぎだろ。なに王子が来てんだよ。この周りにいる十数人に王子の目にかかるような奴がいるとは到底思えん。


説明が終わると休む間もなく試験の開始だ。カナタも予想外の出来事からか体がいつもよりも硬くなっている。


「じゃあ順番に入ってきてくれ。」


会場に入った師団長から催促の声が放たれた。試験者は十三人で俺は六番目になっている。いくら試験だとしてもれっきとした武器を振り回すんだ。一歩間違えたら死が待っている。日本じゃ・・・俺のいた世界ではあまり体験できないな。


「一番入れ!」


待機室から一人目が礼をして入っていく。後の奴らも師団長の力を見ようと待機室に設置してあるモニターに集中する。


団長は大剣を肩に担ぎ相手を見据えている。一番の奴は身長こそ上回っているが筋肉の質がかなり違う。これは魔法は使わず単身の技量だけで決められる試験だ。一番の目には苦悩が浮かんでいる。


「はじめっ!」


審判が合図をした瞬間にあれほどの図体をした団長が画面から消え、一瞬にして一番の後ろに回りこんでいた。


「ひっ‥‥」一番は短い悲鳴を発声ながらも団長の振り下ろしてきた大剣を剣で受け止めようと、頭の上で横に剣を構える。いきなりでの反応だほかの選手たちも歓声を漏らす。


「ぬぅうんんんん!!!!!!!」


『バキンッ』


一番の剣悲痛な音を発して簡単にへし折られ、団長の大剣が身体ギリギリで制止させられている。バタッと腰を抜かして気絶してしまった一番は救護班によって運ばれていった。


≪カランカラン≫


待機室ではみんなの武器が手から滑り落ちて、床に転がる音が響いた。開いた口が閉まらないとはまさにこのことだろう。


初めの合図から三秒で決着がついた。これは試験になっていない、ただのイジメではないか?誰もが思ったであろう。絶望の色がみんなから発せられる。


「次っ二番!」


呼ばれていることに気付いたのか慌てて地面にある武器を持とうとするがうまく持てずに時間が流れる。


「大丈夫だ。どうせテストなんだから死にはしない。それにお前も今日のために頑張ってきたんじゃないのか?」


震えている男の肩に手をかけて出来るだけ柔らかく男に言葉を言う。男は俺の瞳を少し見つめ静かに頷いた。そして未だに震えているがしっかりと武器を持ち立ち上がる。


「誰だか知らないがありがとな。出来るだけまともに戦ってくるよ。」


ゆっくりと試験場に入っていく。そしてすぐに開始の合図が出る。


二番は開始同時に突進を仕掛けたが、一撃目を止められずその勢いのまま壁に張り付けにされた。この試合を毎月楽しみにしている観客たちだが、今日の試合は圧倒的な差で終わり盛り上がりに欠けている。


「次っ三番!」


先ほどと同じく坦々と次の番号を言う。三番と言われたが誰も動こうとしない。静かな時間が流れるが小さく声が出ていることに気づく。


「‥‥‥ふざけんなよ相手ができるわけねーよ!!馬鹿じゃねーのかアイツ。」


そう言って部屋を飛び出す。一人がそういう行動をとるとそれは集団に感染する。それに続いて後の奴らも逃げ出していく。結局残ったのは俺一人。


「おい三番誰だ?早く来い!!」


ドアが開かれ団長が顔をだす。しかし残ったのは俺だけであって必然的に目が合う。団長もどうして一人なのかすぐさま理解して楽しげな笑みを浮かべる。


「ほかの奴らは腰ぬけだな・・・。お前だけか?逃げねーのは。」


「この状況を見るとそうなるな。」


「へぇ~やるじゃねーか。久しぶりに骨のある奴が出てきたか。お前名はなんて言いやがる!!」


「カナタだ。相原彼方。」


カナタか‥‥‥団長は小さく呟き、意味ありげな笑みを漏らす。そして親指で場内を指差し歩きだした。来いという意味であろう。


俺は深呼吸を一回して気合いを入れて立ち上がる。そして団長に続いて場内に入っていく。


『当初予定していた十三人の参加者なんですが、急遽変更としてこれで最後とさせていただきます。』


アナウンスにより、ブーイングが所々から起きるがしょうがない。十三試合見れると思っていたのに三試合しか見れないのだから。だけどこの一試合は過激だぜ!カナタは心の中で闘士を燃やす。


「カナタァァアア!!!頑張れよ。」


フェリスには適当に手を振っておき、直ぐに団長へと注意を向ける。俺の武器は長刀。日本刀にそっくりで耐久力がある。フェリスからプレゼントとして買ってもらった物だ。


「 初め 」


審判の声と同時に団長は動く。背後に回り振りかぶる。剣速が速いからこそできる業である。


俺は居合抜きの構えで、右足を半歩後ろに引き、そこを軸に横一線振り抜く。


「なにっ!?」


団長は攻撃を中止して攻撃を大剣で受け止める。その前に俺は刀の止められる方に小さく移動し、受け止められると同時に渾身の突きを入れる。


団長は身体を半分捻りギリギリでかわしていく、その動作と連動して片手を離し顔面にパンチを入れてくる。近づきすぎていたため避ける間もなく直撃する。


考えていた戦いとは違う野性的な攻撃。はっきり言って変な先入観を持ち油断をしていた。

勢いよく吹っ飛ぶが空中でなんとか体勢を整えて着地する。


「グッ‥‥。」


痛いなんて考えてたら負けてしまう。カナタは勝ちを取りにいっていた。口の中を切ったのか血の混ざった唾を吐き今度はカナタから攻めていく。


二人の攻防は試験とは思わせない迫力があった。場内は二人から目が離せなくなってきており、二人がならす金属音だけが響いている。


カナタは段々とおされて来ていることに気づく。たぶんこの団長はまだ本気を出していない。だけど敵を甘く見たら足元をすくわれると教えてやる。本気を出させる前に決着をつけなくては。


(ヤバイな、だけど後少しだ後少しで俺が勝つ条件が揃う。)


今回二度目となる完璧な防御。しっかりと大剣を防ぐ分折れてしまう危険性がある。刀に軽いヒビが入っているのに気付き焦りがでてくる。


「どうした‥‥もう降参かカナタァ!!!!!もっと楽しませてくれ。」


時間は三十分を周った。フェリスとは違う本当の切り合いにカナタの神経は今までにないほど研ぎ澄まされていたが、集中力はもう互いに限界が近くなってきている。繰り返される攻防の中カナタが動きを見せる。


(チャンスは‥‥‥‥‥‥今だ!!)


誰が見ても分かるぐらいのスピードアップ。速さではカナタの方が団長よりある。カナタはここぞとばかりに刀を振っていく。団長は防戦一方になり場内はおおっと驚きの声をあげる。


連撃からカナタは団長の体勢が崩れるのを見つけ後ろに大きく振りかぶった。団長も崩れた体勢から無理やり溜めに入り力のある一撃をだす。


ここにいる人達はみんな騎士の下っ端か普通の民である。だからこの一撃を目で追うことができたのはほんの一握りだった。それほどに速い振りだった。


───ガキンッ


鋭い音と同時にカナタの刀の刃が折れた。その瞬間誰もがカナタの負けを悟ったがただ一人カナタだけはまだ諦めていなかった。


(終わったか‥‥‥‥いや・・・まだだ!!まだアイツの目はまだ死んでねーーー。)


団長は素早く体勢を立て直そうとするが遅かった。一瞬の満身が動きを鈍らせた。


カナタは折れた刃で大剣の腹を思い切り突く。大剣は根本から折れ弧を描くように地面に突き刺さる。


カナタは最初からこの時を待っていた。注意して見れば分かったがカナタの攻撃は全部大剣の根本へとされていた。あの攻防の中で一体誰がそんなことを考えれただろう。


「なにっ!!」


団長の動揺を見のがさずにカナタは動く。右手を掴み今までにない声を張り上げる。


「うぉぉぉぉおおおおお!!!!!!」


日本の文化の神髄一本背負いである。団長は地面に叩きつけられ意識を手放した。観客は今の光景に度肝をぬかされた。なんせ自分と頭一個分と少し離れた相手を放り投げるなんて見たことがない。


しかし一人が手を叩くと全員が立ちながらの拍手をしてくれた。俗に言うスタンディングオーベーションである。


勝ちを実感した彼方は団長と同じく意識手放し、地面に倒れこんでしまった。しかし顔は満足そうにしたままだったが。








これからもyろしくお願いします

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