第一章 十三話 迫りくるタイムリミット
まぁ先ほども言ったが今日はカナタに一日くっついてる予定だ。二日前のことを思い出して俺自身も少し悲しくなってきちまった。今はどうやって元気にするかと作戦を実行している途中である。
「ほらほらカナタく~~ん。お腹が空いてきただろぉ!!食べたかったら起きて食べるんだぞ。」
「・・・グゥ~~。」
「なぁ何か言ってくれよーー。せっかく教わったチャーハン?だっけかな、それを作ったんだからさぁ大好物だろ。」
「・・グッ・・・・ググゥゥウウ・・・・・。」
明らかにカナタの腹は限界を迎えていた。しかしそれをもしのぐショックを思い浮かべてまた静かになる腹。ここでフェリスに良い考えが浮かんだ。
「むぅ・・・カナタが食べないんじゃアラン王子食べますか?」
「ティア!?ここにいるのか・・・・・・。」
ソファーからガバッ!と起き上がり周りをキョロキョロと見渡すカナタ。単純だなぁ~~と軽蔑の視線を向けるフェリス。
いままで俺が心配してたのはなんだったんだよ・・。
「そうか。そうかそうか・・・フェリスは俺にそんなにも殺されたいんだな。今すぐにその望みをかなえてやるよぉぉおおお!!!」
思いっきり殴ってきやがったなカナタの奴。確かに俺も嫌な嘘をついたと思うが。
「誰のせいでこうなったんだこのバカ野郎がぁぁぁぁああああ!!!!王子が好きなのか?ホモか。ホモなのかこの野郎!」
「おれはホモじゃねーーーー。」
男同士のどうでもいい喧嘩が始まった。殴っては殴り返しの繰り返しである。そんなことを繰り返しいるから五分もたたないうちに二人の顔は腫れあがっていた。
「ハァハァハァ・・・少しは頭が冷えたかバカカナタ。」
「ああ、いてぇ・・悪かったななんか。もう平気だ。」
床に仰向けに倒れながら会話をする。どうやらカナタはふっきれたらしいからこのぐらいの傷は良しとするか。それにしても家はリフォームしないとだな。
「失礼します!フェリス副長。城からの伝令を伝えにきま・・し・・・た。」
勢いよくドアを開けてハキハキと挨拶をしていた騎士だが、現状を見てだんだんと言葉が弱くなっていく。
「これは気にしなくていいから。報告してくれ。」
「はっ!只今ガリア師団長共にラッグ副長が城から姿を消しました。大臣達は突然のことで混乱しており他国への亡命を防ぐため国中で指名手配をしています。」
「いやまて。それはおかしいだろう!たかが姿が朝から見えなくなっただけで指名手配って・・・とうとうこの国もいかれちまったのか?」
「昨日ガリアさんは城の中で見回りしていた騎士を殺しています。そこに居合わせた騎士数名とエイドリック王子が目撃したと。」
俺は驚いた。それは隣にいるフェリスも一緒なのか返事も返せずに固まっている。騎士は一礼してまだ仕事が残っているのかすぐに駆けだしていった。
「おいフェリス。俺達も行ってみようぜ!」
「おう。」
俺達はすぐさま立ち上がり騎士を追おうと家を出ようとすると服の襟をいきなり掴まれて宙に浮いてしまう。すぐに武器を抜こうとしたが後ろを見て手を止める。
「お前らにはここに居てもらわねーと困るんだがな。これからのことを知っておいてもらわねーといけねーからな。」
「ガ、ガリア(団長)ァァアアア!!!」
「おう!!一昨日ぶりだなおまえらぁ。」
ガリアとの出会いに十分浸ってからラッグさんも入れて四人で円を作るように座る。ガリアは下はズボンを穿いているが上は包帯を巻かれている。
「まずは今までのことをまとめねーといけねぇ。カナタ。まずお前のキレた原因はなんだ?」
ガリアの発言に二人も興味津々でこちらを見てくる。
「俺の話しにはティアが関わってくるけど話しても大丈夫だよな?」
「まぁ平気だろ。こいつら二人は俺ら二人が信頼してる奴らなんだからな。それにこいつらは俺とカナタの話をタイミングよく聞いただけだ。」
豪快な笑みがこちらを向く。これ以上おおざっぱな奴は他にいないぜ。
「じゃあまず‥‥‥みんな第二王子と言っているが本当は女だ。」
『第二王子は女だったのか(ですか)・・・ええぇぇぇ!!!!』
「おいなに言ってるんだよカナタ。いくら場を穏やかにしたいからって失礼だぞ!!女ってのはな、男にないとてつもなく柔らかい綺麗な際だった物がついてるんだぞ!それを理解してもう一度見てみろ。あれは全方位から見ても男でしかない。寝言は寝てから言え。」
「場を穏やかになんかしたくねーしフェリス。お前の方がよほど失礼だ。戯れ事は死んでから言ってくれ。」
フェリスの出会って聞いてきたなかで一番長いセリフを冷えた口調で切りすて、同じく驚いていたラッグさんの方をみる。
「僕は巨乳しか認めはしない。それはあってはならない。駄目だカナタ君は僕を洗脳しようとしているんだ。思い通りにはならない。自分に暗示をかけるんだ。巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳巨乳・・・・・。」
『・・・・。』
「えっ、ちょっと誰かツッコミをしてくださいよ。冗談ですよ!ちょっとカナタ君までそんな目で見ないでくださいよ!!」
冗談はキライじゃないがラッグさんがやることには無理がある。ガイアさんはなれているのか笑いを耐えるのに必死になっているし、フェリスは俺の言葉に膝をつき泣いている。なんなんだこの集まりは・・・。
「ガイア。この場を少し静かにさせてくれ。」
「俺様に出来ないことはないぜ。」
自信満々に頷くガイア。こういう時だけは背中がでかく見えるぜ。ガイアは立ち上がりフェリスの方に近寄っていく。
「俺なんてどうせ脇役だよ。しょうがないじゃないか俺から女とコメディー差をとったらなにが残るって、もうこの青い髪の毛しか残らねーよ。どうすんだよ。生きてけねーよ。ちくしょぉぉぉおおおウボッグハッァァ!!!!!!!」
『ガシャァァアアンンン!!』
「お前ら静かにしろ。」
ガイア。二人とも黙ったけどフェリスだけを殴るのはかわいそうな気がしてならないよ俺は。顔が床に突き刺さってるぜ。
「どうだカナタ!俺に惚れるんじゃねー「それはない。」」
まぁそれからどうにか落ち着いて。俺の今まで起こった出来事やガイアの聞いた真実を聞き時間が過ぎていった。二人は・・・特にフェリスはようやく事態の深刻さに気付いたのか妙に神妙な顔になっている。
「俺らは今知っての通り追われる身になってるから。少し外す。だからそれまではお前らでなんとかしていけ。いいな。」
「カナタ君もフェリス君も大変だと思うけど頑張ってね。」
『はい。ラッグさん。』
「てめぇらぁぁぁあああああまた俺を無視したなぁぁぁああああ!!!!」
顔を沸騰させているガイアをラッグさんは宥めながら連れて行った。
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「ふぅ~~今日も終わったな。二日休むとやっぱり体力は落ちてるよな・・・。」
フェリスの家にあった素振り用の木刀。約2・3キロはあるがそれを毎日500回振るう。もう深夜という時間帯になってしまい町の明かりもうっすらとしか見えない。
俺は吐く息が白いことに気づく。この世界も四季があるのだろうか?ふと疑問に思う。空を見上げると星が自分の場所を教えるかのように輝いている。
「ティア・・・。」
王国内ではどこからでも城が見えてしまう。ティアは今どんな気持ちなんだろうか。
「明後日にある王位継承の試合に何かが起こる。」
断定はできないがティアを裏切るなら格好の行事だろう。だけど長く計画を練ってるみたいだから奴らは守備的だ。まだ油断しないほうがいいな。
息を吐き呼吸をゆっくりとする。
あのときの感覚。あの永久の騎士団達と戦った時の記憶は曖昧だが、そのときからか身体にある力に気づく。フェリスに言うとそれが魔力らしい。あと少しで自分のものになりそうなとこまで出来るようになった。
「あと一日か・・・短いな。」
魔力に気づいて俺としても初めての事で嬉しかったが駄目だ。力が大きすぎる。魔王はスゲーなと実感した瞬間だった。それからは寝る間も惜しんでの修行が続いた。
次の日の朝までは自分で鍛練をして早朝からフェリスを起こして特訓。それが12時間以上続きようやく不格好ながら魔力の扱いに成功できるようになった。
まぁそのまま二人してぶっ倒れて朝まで眠りについたのは言うまでもない。
王位継承の儀まで時間は迫っていた。
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妾はどうしたらいいのだろうか。
明日は大事な王位継承の儀だ。そうは思っているのだが最近の出来事に顔は浮かない。
城のほぼ最上階に位置するこの部屋から見える町や空はとてもきれいだ。なにか悲しいことがあるといつもそこに来てずっと眺めていた。
カナタのことやガリアの事・・・。妾はまた一人になってしまうのだろうか。
あの最後に見せたカナタの悲痛な顔。今でも頭から離れないでいる。あの時の行動は正しかったのだろうか?でももう遅い。カナタを妾は見捨てたのだ。もう戻ってはこない。
「当然の報いだな・・・。」
誰に言うでもなく一人呟く。部屋の空気が寒く感じてきて手に持っていた愛刀をギュッと抱きしめる。その動作の余韻として首にぶら下げてあったネックレスが刀に当たる。
「カナタ・・・。」
あやつが妾のために必死にとってくれたもの。これだけは着けていていいだろうか?許してくれるだろうか。
『ジャリッ』
「誰じゃ!!」
音のしたドアの方を見る。見慣れた顔がそこにはあった。
「なんだワームスか。すまないな探していたのだろう。」
そこにいたのは我が騎士団が結成された当初からいた老人のワームスだった。吐く白い息がテンポ速く出てるのを見て心配させたことを悟る。
「フォフォフォ!!!なにを言っておられますか。あなたが姿をくらます時は大抵ここにいるとわかりますよ。何年のお付き合いですか。」
「そうだったな。」
「王子。明日は大事な試合であられますぞ!このような所にいては風邪を拗らせてしまいますゆえ、部屋に戻っていただきます。」
「わかっておる。そう声を張り上げるな。」
ワームスの気遣いに自然と笑みがでる。しかしカナタの言葉が頭をよぎってしまう。「聞いてくれよティア!!こいつらはお前をだましてるんだ!あの時だって奴らは敵に加担してたから姿がなかったんだよ。」隣にいるワームスの顔をちらっと覗く。
「どうしました?」
いつもと変わりのない角のない笑み。
「ワームス。そなたは妾の事をどう思っている?ずっと妾の護衛をしてくれるか?」
一瞬驚いた顔をするが質問の意味を理解してフォフォフォとまた笑いだす。そして膝を少し曲げて目線を合わせてくる。
「何をおっしゃるかと思えば。当然でありましょう。王子が死ぬまで私めは王子の騎士でございますぞ。」
ティアは「そうか・・・。」と小さく言って安心した表情を見せる。その姿はまだ精神が子供のままだとわからせてしまっている。いくら強くいおうとも心と体は一緒ではない。
「そなたも早く寝るのだぞ!明日は頑張ってもらわねばならんからな。」
「仰せのままに。」
ティアは恥ずかしくなったのかそこから駆け足で部屋に行ってしまう。そこに残ったワームスが気味の悪い笑みを浮かべているとも知らずに。
遅れてすみません!!よろしくお願いします”””