お前、面白いな
私は昔からご飯を食べるのが遅かった。
そもそもそんなに胃の中へ入らない。
だから、おにぎり一個とかで足りた。これが原因で虐められるなんてことは無かった。
ただ、高校ではそういうことが起きた。
「ねぇ、アンタってなんでそんなに食べないの?」
「いや....えっと」
水を頭からかけられた。
「アンタには水だけで充分よ」
嘲笑いながら私を見下す。
「....」
誰も来ない空き教室。
私に水をかけた女子はロッカーからモップ取り出し私に投げる。
「アンタが掃除しといてよ」
「....分かった」
女子はスタスタと教室を出て行った。
「....」
そんなにあまり食べない事がいけないことなのだろうか?
よく食べることが正しいことなのか?
「どっちなんだろ....」
「何がだよ」
いつの間にか一人の男子生徒が教室のドアに寄りかかっていた。
「いや、別に....」
「ハッキリしろよ、分からないって」
「でも」
「まぁ、いいや。お前何で濡れてんの?」
男子は私をじっと見つめる。
「掃除しようと思ったらバケツ入った水をひっくり返して....」
「誰も使わない空き教室を?それにバケツに汲んだ水を被ったにしては量が少なすぎる」
まるで探偵のように言い当てては私に近付いてくる。
「どうせ、虐められてるんだろ」
「いや、えと」
「やっとくからお前は着替え帰れ」
「あ、ありがとう」
私は一言だけ残してその場所を後にした。
翌朝、私に水をかけた女子が近付いて来た。
「ねぇ、アンタ。この大会参加しなさいよ?」
女子が見せてきたのはデカデカと大食い大会と書かれたチラシだった。
「え、ムリだよ....」
「時間内にしかも一位で食べきったら賞金10万円」
「だから、ムリだって」
「は?」
女子は私を睨む。
「何やってんだ?」
昨日掃除を代わってくれた男子がやって来た。
「あ、向井くん」
「なにしてんの?」
「大食い大会、八乙女出るかなって」
「八乙女出んの?」
「わ、私は....」
「....」
「へぇー、早川出てみろよ」
「え?私?」
向井くんは早川さんに話を振る。
「だってさ、勝てば10万だろ?時間内に食いきっても3万は貰えるんだぞ?」
「いや、そうなんだけど」
「お前、新しいコスメ欲しいけど金無いって言ってたじゃんか!」
「え、いや」
「は?いらねぇの?」
向井くんは早川さんを睨む。
「ひっ」
早川さんは足早に去っていった。
「大丈夫か?八乙女」
「う、うん」
「お前、早川に虐められてるんだろ?」
「うん」
何でもかんでも見抜いてしまう彼に隠しても無駄だと私は断念して全てを話した。
「そっか〜そんなに食えねぇのか」
「あははは、おかしいかな?」
「いや、可笑しくはねぇよ?」
「そう、なのかな?」
「何、お前はもっと食えるようになりたいの?」
「まぁ、出来れば....そうしたらもっと美味しいものを一度の食事で沢山食べれるし....」
「無理して食えるようにしなくてもいいだろ」
「私が嫌なんだ」
「ああ、そう?お前が言うなら止めないけど」
「ねぇ、向井くん。手伝ってよ」
「何をだよ」
「私を沢山食べられる女子にしてほしい」
「....ぷっ!はははは!お前、面白いな!女子でそんなお願いする奴お前しかいねぇよ!絶対!」
向井くんはお腹を抱えて笑い転げる。
「いいよ、任せろ。改めて自己紹介だな、僕は【向井 あずま】」
「私は【八乙女 みなみ】」
これから私と向井くんの物語が始まる!
ていうか、向井くんって一人称【僕】なんだね