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聖母になるまでの鎮魂歌(レクイエム)8



響き渡る歓声、怒号、声援、…そして、高笑い。それらは、現代日本で置き換えれば、競馬のそれと近い。深夜になっても止まらない反響する声の大群…ある人は、一夜で一攫千金の成金になり、またある人は、自分の持っている貴族という地位をだし(ベッド)にし、それが災いして一気に奴隷に転落したり…まぁ、人生十色とは聞くが、現代日本でもありえない生き方をする人を見れるのは、後にも先にもここだけであろう。視線を側面へと向ければ、競馬場。とは言っても、それは日本人の知っている知識で表現しただけのもので、競走馬というまな優しいものではない。確かに競走馬は馬ではある。そして、馬の順位を予想する現代日本の賭博の形となんにも変わらない。しかし、競走馬にも賭けたものにもきついのが日本のそれと明らかに違っていた。競走馬が10敗した場合、今度はその競走馬を使った処刑が行われる。賭けたもの、それぞれに10個の矢と弓が渡されて、その弓と矢を使って、馬を当てる。当然、馬は逃げるため、しばらくは殺されないが、多勢に無勢。いずれ、複数の矢が当たり、死に絶える。賭けたものが当てるのは、馬を殺すのに使った矢の数だ。これは、外れた矢もカウントする。そして、普通、オッズ{賭けに勝ったときに、返ってくるお金の倍率。例えば、百円を賭けた時に、勝って、オッズが10倍なら、千円が返ってくる。}は競走馬の時よりも低い。しかし、その矢の数がピッタリ当たった場合は、オッズが100倍!この賭博場で、3番目に高いオッズが与えられていた。しかし、それを当てるのは、非常に困難なものだった。まず、どういう偶然かわからないが、馬が生き絶える矢の数は毎回、完全ランダムで法則性がない。非常に頑張って、1500本くらいでやっと息絶える馬もいれば、100本も満たない数で死ぬ馬もいる。しかも、この賭けは同じ人が賭けられる数は最大で3個までしかないため、当てるのは難しい。実際に、これらの要素のせいもあってか、本当に当てられた人は知っている中だと二人しかいない。これも風の噂で聞いただけの話だが。そして、賭けた者の中には、絶望の中に一筋の光を求めて賭博場から借金をするものもいる。これは意外なことだが、結構な数いる。なぜ、そんなにいるのか検討がつかない。これから話すことを考慮すればさらに謎だ。つまり、こういうことだ。もし借金をしたものが、その金を返せなかった場合、どうなると思う?...これは、ある意味、競走馬よりも残酷な仕打ちが待っている。そもそも、この賭博の運営には、人件費がわずかしかかかっていない。そのことを聞けば、お察しだろう。つまり、借金したものはこの賭博上で一生働き続けるのだ。この賭博の仕事はこの国の法律上、確かに給料を与えていることになっている。しかし、借金の金利分のため、最低限の生活に必要な経費以外は没収したと、詭弁を弄して一生その繰り返しなのである。そのことが王族に比較的に近い平民街で許されているのは、大人の事情というやつだ。…端的にいえば、金…money…そういうことだ。ここの運営は、上納金として膨大な量を政府に収めている。そのため、このような横暴が許されているのだ。

 視線を奥に進めれば、現代日本では法律上で禁止されているカジノ…これも仕組みは大体、現代の海外のカジノと同じだ。しかし、スロットのようなハイテクマシーンは、当然この時代にはあるわけない。しかし、高級感を出すためであろう。ポーカー台や大富豪の台、さらに、賭けるのに使う玉や硬貨まですべて木製である。ちなみに、借金をした賭博者は前述と変わらない。

 そして、目の前に広がる演劇をするかのような広い空間。現代日本に例えるなら、日本武道館の会場と例えた方が良いだろう。しかし、実際で目視した限りでは、それよりもずっと広く感じる。その広さは、今紹介した競馬場やカジノよりもずっと大きい。かといって、それらの容積の和と比べた場合は、さすがに無理があるが…ものすごく広いことは想像できただろう。そのせいもあってか、まだステージの脇側にいるにも関わらず、ものすごい声量の波が断続的に襲ってきて、嫌になってくる。しかし、司会者はそれに慣れているのか気にもせずに淡々と自身の役割をこなしていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇


『さぁ〜!!!昼の美女たちによるリアルキャットファイトに始まり~!!夕方の、コロシアム〜!!そして、現在、夜の部〜!!奴隷売買〜!!今夜も残すところ、あと三品になりました〜!!!ラストはとんでもない大物が控えていますが、こちらもそれに匹敵するほどの代物で〜ございま〜す!!」

そう、司会者が大袈裟なテンポで話しながら、目の前の品を欲にまみれた富豪たちが、続々と品定めをしている…現在、ステージ前で紹介されている品は、双子の姉妹のような相貌の子供だ。とは言っても、私より年上のように見えるため、最低でも8歳くらいだろう。その二人は、大事な部分が申し訳ない程度の服装に包まれているが、ほぼ全●だ。ネットで『ドラ●エの踊り子』と調べて出てきた際どい方の服装を、例の二人はそれぞれまとっている。そして、二人はお互いの体を抱き寄せながら震えているのだから、第三者の視点である購入者からすればこれほど扇情的な(さまはない。…まぁ、実際そのように見せて購入意欲を高めるために、私を含めてこんな服装にしたのだろう。私はこんなので、どっかの大富豪が買ってくれるなら万々歳のため、気にしないが、例の二人含めて普通の人なら耐えられない程なのだろう。…まぁ、どうでもいいが…そう思考している間に、目の前のオークションは再び始まった。始まる前で、すでに苛立つほどうるさいのに、オークションが始まったらステージの方向を向くのも耐えられないほどだ。よって、私はその喧騒のほとぼりが覚めるまで控室に籠ることを決定した。


 そして、約15分後…例の双子のように見える子たちの真相はわからないが、私の出番が来た…私の服装は、さっきの双子よりもさらに際どく、大事な部分は丸見えであるが、そこにわずかばかりのフリル付きの布が付いているだけである。そんな格好に観客は大盛り上がりで、正直鼓膜が破れたと錯覚してしまう。いや、実際に破れててもおかしくない声量だ。そんな状況であるのに関わらず眉一つ動かさない司会者はさっきの一席ぶりが嘘かのように、さらに非常なる高テンションで私を紹介した。


「ここにお待ちのおきゃ〜くさ〜ま〜!!こちらが今回のメインディッシュ!!今まで語られた神話…いや、伝説が今ここに!!人間なら一度は夢見たことでしょ〜う!!まぼろしの天使を手懐けたい!!!っと!!!その夢が今日!!今!!叶います!!エルフの中でも!!さらに希少!!こちらにおわしますのは!!!架空の存在とされてきた!!!銀髪の””エルフ!!””でございます!!!今回、この品は、我がオークション始まって、以来の良物件となります!!この機を逃したら!!2度と手に入りません!!さぁ、欲しいものは!!理性!!!感情!!!その他、日常のすべての人間らしさを捨てて!!この子とただれた奴隷生活をしたいやつはい〜る〜か!!!」


…ここまでの詐欺師となれるのが、逆に羨ましい。そう思わずにはいられなかった。




 


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