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転送術士候補生  作者: よのもり せいう
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その6 依頼をください!(Part. D)



授業期間も始まって、しばらく経ったある放課後。

ライトを抱くハーミアに連れられて、転送術士協会第5支部の門を叩いた。

戸を開ければ、黒髪の受付嬢の眠たそうな声に迎えられる。


「いらっしゃい…あら、早速後輩が男を店に連れ込んだ!しかも中々…」


「違います!先生ですっ!支部長はいらっしゃいますか?」


呆れるハーミアに受付は重い瞼でにやついて、少し待つようジェスチャーする。

のっそり彼女が奥へと消えると、しっかりした表情の女性がやってくる。


よく櫛の入った美しい銀の髪に、曇りのない金縁の眼鏡。

やや痩せた身を、落ち着いた清楚な衣装で包んでいるところが、実に良い。


「転送術士協会第5支部長、エーレンツァです。」


挨拶を済ませる中に、どうも彼女からは静かな怒気のようなものが感じられた。

彼女は何か話を切り出しそうだったものの、ハーミアが先立って話しはじめる。

実は私も支部長の名に覚えがあり、彼女への用を思い出していた。


「支部長、私達に何か依頼を下さい!お金が必要なんですっ(৹˃ᗝ˂৹)」


必死な雰囲気で、彼女は眉を顰める支部長に事情を伝える。

その内容とは、なんとも面目ない限りではあるのだが…。


「つまり…先生は、その使い魔を購入した代金で支度金を使い果たして、しばらく日々の食べ物にも困っていた、と。そして、それがこの子にばれて、ここに連れて来られた、ということですね?」


「ええ…。」


頷けば、やれやれといった表情をするエーレンツァ。

それから眼鏡の位置を直して、受付嬢が持ってきた冊子をぺらぺらとめくる。


「今…うちにはいくつかの依頼がありますが…。その前に先生、ご挨拶を兼ねて少しお話があるので、奥まで良いですか?」


報酬の出る仕事話を斡旋する代わりに、少し二人で話がしたい。

彼女は強いまなざしで、自身の用事に舵を戻した。



その6 終





【ひとこと事項】


・ライトを抱くハーミア

 気に入ったようなので、ディアスはライトにハーミアの護衛の命を与えていた。


・王国の依頼

 王国では税金から報酬をあてがい、各機関に様々な依頼を出している。


・転送術士協会に来る依頼

 転送術を込めた魔術品の納入や、関連施設の保守・点検等を行う依頼が多い。


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