その18 脇役(Part. D)
街道に出るまでに、数十体のスケルトンを解呪した。
術者の位置は既に探知済みであるものの、その
意図が未だ分からなかった。
警戒しつつ進んでいけば、そこで魔物に囲まれた教え子達の姿を見つけた。
「危ないから下がってください―!!」「…?」
アンデッドと戦う青年と、それらに威嚇する使い魔と、張り詰めた表情の教え子。
彼女も転送術で懸命に援護はしていたようだ。
青年の方はどうやら私を心配していたようだったが、周囲のアンデッドを数体解呪してみせると、今度はこちらに剣を向けた。
正義感に溢れる鋭い表情が、実に良い。
「貴方はこの事件の張本人ですか…?」
「ああ…確かに誤解を受ける状況ですが、違います。もし私なら、こんな不完全な蘇生はしませんからね。」
「あっ!本当ですっ、その人は私の先生ですっ!!」
「そうなんですかっ!?;」
ハーミアの一言で、慌てて剣を収めて非礼を詫びる青年。
私が彼女の師だからといって、なぜ敵でないと言えるのか。
彼彼女に若さを感じる。
「僕はルーシェといいます。冒険者として果樹園の警備の依頼をこなしていたら、アンデッドが森から出てきたので、その出元を追ってきたんです。」
「そうでしたか…教え子を助けて頂き、ありがとうございました。私はディアス、魔術学校スコラ・リンデの教師です。そしてこの子は、転送術科の学生のハーミアです。」
ちらりと彼女を見ると、慌てて恩人に頭を下げている。
そんな様子に微笑み、よかったと気さくに微笑む青年。
さて、こういうときは…。
「…お礼となるかはわかりませんが、これを。私は死霊に嗜みがありまして。」
彼の剣に解呪の効果が追加される魔術をかける。
これに触れられれば、並のアンデッドなら即座に元の遺骸に戻されるだろう。
同時に周囲に悟られないよう、さらりと術者の位置を耳打ちする。
教え子にはこれで問題解決と思わせるために。
ルーシェは状況を理解して、お礼と共に颯爽と敵へと向かって去って行った。
後には我々だけが残った。
その18 終




