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vol.10 月影

   [Ⅰ]



 俺達はその後、馬を暫く走らせ、ようやくゴーヴァンさん達に追いついた。

 空を見上げると日も沈み始め、夕暮れ時のような感じとなっていた。

 岩山の谷で少々時間食ったので、まぁしょうがないところだろう。

 俺達の合流に気付いたゴーヴァンさんが、最後尾へと下がってきた。


「クロウ、どうだった? 奴等を上手く引き離せたか?」

「ええ、恐らくは大丈夫でしょう。奴等を足止めする時間稼ぎは出来たと思います。で、護衛の方はどんな感じですか?」

「今のところ大丈夫だ。道が悪いから、あまり速度は上げれないがな」

「それは良かったです。ところで、日が落ちてきましたが、エルカまではあとどのくらいですかね?」


 俺はそう言って空を見た。

 日はもう少しで地平線に落ちようとしている。


「エルカはもう少しだ。日が沈む前に着けるかどうか微妙なところだがな。しかし、助かったぞ、クロウ。ボードウィンさんの言う通りだったな。凄腕の剣士というのは。街に着いたら酒を奢らせてもらうよ」

「はは、ありがとうございます」

「じゃあ、引き続き、最後尾の護衛は任せたぞ」


 そんなやり取りの後、ゴーヴァンさんは先頭へと戻っていった。

 リーサがそこで口を開いた。


「ねぇ、クロウ。リュスとイグナムが奴等の仲間だったの、良く気付けたわね。私……全然わからなかった」

「リュスに対してイグナムは敬語を使ってたから、俺も不思議だったんだよ。おまけにリュスは、彼と比べて凄く良い装備してたし。でも、金持ちがこんな護衛するわけないから、なんで上下関係になってんのかなと思って、色々考えたんだよ。それで、そういう上下関係が起きる場合というと、師弟関係か、育ちの格差、もしくは、何らかの団体での上下関係かなと思ったんだよね。で、それらを可能性が少ない順に消去していったら、今話題のジャグーナ盗賊団が、そこで脳裏に過ぎったという感じかな」

「そっか……確かに、イグナムはリュスを敬ってる感じだったもんね。でも私じゃ、そこまで考えがいかないかも……というか、クロウって剣の腕も凄いけど、状況把握する能力も凄いわね。アムリ並みかも……」


 リーサはそう言うと、顎に手を当て、何かを考える素振りをした。

 盗賊団とのやり取りで、何か思うところがあったようだ。

 

「まぁそれはそうと、運搬護衛って、こういう事がよく起きるの?」

「頻繁にはないと思うけど、時々起きるわね。私達が賞金稼ぎやってた時も、野盗に遭遇する時があったし。でも、ここ最近は多くなってきたのかもしれないわ……」

「ン、何で?」

「数年前までは、第7騎士団が野盗の討伐に動くこともあったんだけど、ここ最近、ファルメキアとの関係がよくないから、今はそっち方面の仕事の方が多いのよね。クロウと出会った時も、それ絡みの案件だったし……」


 どうやら、治安維持で騎士団が動く事は少なくなってきているようだ。

 ローシュさんも言ってたが、最近物騒になってきているのは、治安維持機能の低下も関係しているんだろう。

 街の治安は衛兵に任せればいいが、外は騎士団の力が及ばなくなると、途端にヒャッハーな世界になってしまうに違いない。


「なるほどね。という事は、今後の護衛任務は大変そうだね」

「かもしれないわね。あ~あ……今回の報酬2000リアじゃ安いわ。受けるんじゃなかった」


 リーサは頬を膨らます。

 かなり後悔してるようだ。


「まぁでも、とりあえず、護衛が成功すれば、それで良しとするよ。ところで今、ガシュワンの森の件もファルメキア絡みと言ったけど、なんで?」

「ああ、それね……実はつい最近なんだけど、ファルメキアで悪名が高いソーサリア密偵部隊・マーディラスが越境してきたという噂があって、それ絡みで調査に行くことになったのよね」


 一瞬、戦隊物シリーズの新しいタイトルかと思ったのは言うまでもない。


「ソーサリア密偵部隊・マーディラスねぇ……よくわからんけど、凄そうな名前だね。で、そいつ等はヤバいの?」

「噂だと、かなりヤバいみたいよ。平気で現地の住民とかを拉致して、尚且つ、魔法を使った拷問で色々とその地域の情勢とか調べるらしいわ。しかも、拉致された者の行方は当然わからないらしいし。それで私達があの森に、調査隊として派遣されたのよね」

「そういや、あの森で行方不明者が後を絶たないって言ってたもんな」

「ええ。まぁ結果は、ガルヴェリオンだったわけだけど」


 話を聞く限りだと、ファルメキアという国は手段を選ばないようだ。

 ソーサリア密偵部隊・マーディラス……あまり関わり合いになりたくない輩である。

 だが、今の話で引っ掛かる部分があった。


「でも妙だね……」

「妙って……何が?」

「そういう組織って、普通は(ひそ)かに行動するもんだと思うけど、何で噂になってんのかな」

「え? 確かにそれもそうね……何で噂になっているんだろう」


 そこが引っかかる部分ではあるが、今考えても仕方ないので、この話は終わらせることにしよう。


「まぁでも、ファルメキアとかいう国が、この国を錯乱させる為に、そういう噂流してる可能性もあるから、何とも言えんけどね。さて、それはそうと、ようやく街らしきものが見えてきたね。外も暗くなってきたけど」


 俺はそう言って、前方に見える街の明かりらしきモノに視線を向けた。


「ようやくエルカね」

「へぇ、あれがエルカか。じゃあ、もうすぐだな」


 俺達がそんなやり取りをしている内に、太陽は地平線に落ち、辺りは夜の(とばり)が降り始めようとしていた。

 護衛するにはあまり良くない状況だが、前方にエルカが見えて来たので、そこまで案じたモノでもないだろう。


「それにしても、今日は月が綺麗ね……見て、クロウ。今日は満月よ」

「へぇ、今日は満月か……綺麗な月……って、えッ!?」

「ん、どうかしたの?」

「いや……なんでもない。月が綺麗だから驚いただけさ」


 俺はそうとしか言えなかった。

 なぜなら、月を見た瞬間、動揺してしまったからだ。

 視線の先にある月……それはなんと、俺がよく日本で見ていた月の姿と、非常によく似たモノだったのである。

 ウサギが餅つきをしている姿に見えるという、あのクレーター模様が、はっきりと月の表面に描かれていたのだ。


(あれは……俺が日本で見ていた月の姿とすごく似ている。どういう事だ、一体……ここは地球なのか……だとすると、俺は今、どういう状況なんだ。未来にいるのか……過去にいるのか、それとも……パラレルワールドにでもいるというのか……)


 そして俺は、誰も答える事のない自問を繰り返しながら、暫し呆然と、星空に真円を描く美しい月を眺め続けたのであった。




   [Ⅱ]




 護衛の仕事も無事終わり、ファーレンへと帰ってきた俺は、数日ほど休息を取る事にした。

 旅の疲れを癒すというのも勿論あるが、少し考え事をしたい気分になったからである。

 それと今日は、俺1人で過ごす事となりそうだ。

 ローシュさんとリーサが、ノードスラムへと出勤しているからである。

 ローシュさんの当初の予定では、リーサは暫く俺と行動する事になっていたそうだが、前騎士団長であるアルサールという人が賞金稼ぎに捕まったそうで、その案件での出勤となったそうだ。

 2人は騎士団の人間だから、こればかりは仕方がないだろう。


 まぁそれはさておき、俺は朝食後、ファーレンの街をブラブラと散策することにした。

 空を見上げると曇り空の為、今日は気分も少し曇りがちな日であった。

 お陰で、外はやや肌寒い。雨が降らないのを祈るばかりである。

 ちなみにだが、俺はいつも通り、布の服姿である。武器は短剣だけだ。勿論、俺のではなく、ローシュさんのお古である。

 また、仕事をこなしたことで報酬も手に入り、俺も多少の持ち合わせが出来た。今の所持金は1800リアである。

 この国は銀貨と銅貨を主に使っている為、小さい布袋にお金を入れているところだ。


 話は変わるが、昨日、200リアはローシュさんに滞在費として払った。

 なので、その残金が所持金である。

 ローシュさんは要らないと言ったが、俺も流石に悪いと思ったので、その交渉の結果、報酬の1割を納めるという方向で決着がついたのである。

 今後は、ヴィルカーサの仕事報酬の1割を滞在費として、ローシュさんに納める予定だ。

 というわけで、話を戻そう。


 俺は街を歩きながら、今日の予定をぼんやりと考えた。


(さて、どこ行くかな……とりあえず、エル・ニーサの神殿にでも行ってみるか。確証はないが……俺がこの世界にきた原因のような気もするし……)


 俺はそう考え、ヘミアの広場の近くにあるエル・ニーサ神殿へと歩を進めた。

 程なくして、エル・ニーサ神殿の前へとやって来た俺は、暫しその外観を眺めた。

 エル・ニーサの神殿は、イタリアの旅行雑誌で見たドゥオモと呼ばれる大聖堂みたいな佇まいをしていた。

 大きな白い建造物で、アーチ状の意匠を凝らした外壁や、ドーム型の滑らかな曲線を描く屋根、それら全てが美しかった。それ自体が、まるで彫像のように見えるほどだ。

 高さも、一番高い所で30mは優にあるだろう。


(壮大で美しい建物だな。欧州旅行へ行けたら、こういう宗教施設を見れたんだろう……まぁ今となってはもう叶わぬ夢だが……)


 入口に目を向けると、沢山の人々が礼拝に訪れていた。

 神官と思わしき人々の姿も確認できる。

 ちなみにだが、エル・ニーサ神殿の神官は、白地に青い紋章の刺繍が入ったガウンコートのような衣服である。

 まぁそれはさておき、この間、リーサに連れてきてもらったが、中には入っていない。

 というわけで、俺もそれらの人々と共に、礼拝に行くことにした。

 入口を潜り、神殿内に入った俺は、他の者達と同じように奥へと進んで行く。

 神殿内は、太く丸い大理石調の柱が幾つか立っているだけで、仕切りの壁はない。

 上は全て吹き抜けになっており、かなり広い天井空間であった。

 香を焚いているのか、神殿内はラベンダーのような花の匂いで満たされている。

 床は鏡のように磨かれた石で出来ており、歩くたびにカツンという足音が鳴っていた。

 また、神殿内の壁に目を向けると、美しい女神と肥沃な大地、それらの恩恵を受ける人や動物の壁画が描かれているのである。

 それらはまるで、中世欧州で発達した画法である写実的なフレスコ画のようであった。

 そんな神殿内を更に進んで行くと、その先には、10mはあろうかという、大地の神エル・ニーサの美しい石像が安置されているのであった。

 エル・ニーサの石像の前では、人々が両掌を組み、目を閉じて静かに祈りを捧げている。

 俺もそれらの人々に倣い、祈りを捧げる事にした。

 そして、暫しの間、エル・ニーサの石像を静かに眺めたのである。


(……エル・ニーサ、貴方が俺をこの世界に導いたのか? だとしたら、一体何のために、俺をこの世界に呼んだんだ? ここは地球なのか? あの占い師はアンタなのか? ……って、答えるわけないか。フゥ……もう出よ。こんなふうに眺めていてもしょうがない)


 するとその時であった。


「クロウさん」


(おお、エル・ニーサが俺の呼びかけに答えて……ン? 今、後ろから聞こえたぞ)


 俺はその声に振り向いた。

 するとそこに、ミーシアさんがいたのであった。

 どうやら、大地の神は答えなかったみたいだ。チッ……。

 まぁそれはさておき、ミーシアさんはなぜか知らないが、神官と同じような格好をしていた。


「あ、どもです、ミーシアさん。ミーシアさんも礼拝ですか? って、神官みたいな格好ですね」

「ウフフ、私は第7騎士団に所属してますが、実はエル・ニーサの神官でもあるのです。今日は神官の仕事があるので、騎士団はお休みしました」

「へぇ……なんか意外です。そんな事できるんですね」

「はい、色々と事情もあるのです。地方都市であるファーレンには、王都のように神殿騎士がいません。なので、神官はいざという時の為の経験を積むべく、騎士団とヴィルカーサの兼務が許されているのです」


 どうやら、騎士団と神官を兼務してるようだ。

 思ったよりも騎士団とエル・ニーサ神殿は緩い組織のようである。


「そうなんですか。勉強になりました」

「ところで、クロウさん。ヴィルカーサに剣士登録したそうですね。しかも、アレクラント階級で。凄いじゃないですか」


 リーサとローシュさん経由で聞いたんだろう。


「そうなんですかね……まぁでも、仕事に関してはまるっきり初心者ですからね」

「ウフフ、そんな事ないと思いますよ。この間、貴方の戦いぶりを見て、武勇に優れた方だとお見受けしました。それに……もしかすると貴方は、エル・ニーサが使わした勇者かもしれないのですから」


 正直、ここでその単語はあまり聞きたくなかった。


(勇者って……勘弁してよ。仮に魔王がいたとしても、俺は絶対に倒しに行かんぞ。面倒臭い……)


「俺は勇者なんてガラでもないです。もっと他に良い人がいますよ」

「いいえ……ガシュワンの森のニーサ像の前で貴方を発見した時から、私はただならぬ気配を感じておりました。ですから、私は貴方と出会ったことは神の啓示だと思っております。困ったことがあったら仰ってください。いつでも力になりますから」


 ミーシアさんは真剣な表情で俺を見つめる。

 美しい女性に見つめられると照れてしまう。

 するとその時であった。

 彼女は俺の手を取り、両掌で大事に包むと、祈るように自分の胸元へと寄せたのであった。


(え~と……これはどういう事、どういう事……なんかこわひ……つか、周りが俺達を変な目で見てる)


 そう……周囲の礼拝者達は首を傾げながら、俺達の謎行動を見ていたのだ。

 多分、変な意味で注目されているに違いない。

 一刻も早く、脱出せねば……。

 というわけで、俺は撤収することにした。


「じゃ、じゃあ、その時はよろしくお願いします。では、他に用事があるので、俺はこれで。ミーシアさんもお勤め頑張ってください。アデュー」

「え? クロウさん?」


 そして、俺は彼女から逃げるように、この場を後にしたのであった。




   [Ⅲ]



 

 エル・ニーサ神殿から撤収した俺は、とりあえず、ヘミアの広場にあるベンチに腰をおろした。


(ミーシアさんて、信じ込むと突っ走りそうなタイプだな……それだけ敬虔(けいけん)な信者ってことなんだろうけど。さて……次、どこ行くかな。ドランさんのところでも行くか。日本刀の制作もしたいから、コスト的なことも知りたいし……まぁでも、義経も刀の制作過程の深いところは知らないから、なんちゃって日本刀になるだろうけどな。まぁいい、とりあえず、行こう……)


 俺は立ち上がると、ドランさんの武器屋へと向かい歩を進めた。

 大通りを進み、途中、やや細い路地へと入って行く。

 だがその際、俺は尾行されている気配を感じた為、交差点を曲がった直後、建物の陰に身を隠したのであった。

 そして、尾行者の正体を窺ったのである。

 ちなみにだが、義経の経験が影響してるのか、こういう気配を察知する能力も俺に継承されてるみたいだ。

 義経の晩年は逃亡生活だったから、この能力は遺憾なく発揮されただろう。とはいえ、人の心を読みきれなくて、最後は裏切られて詰んでしまったが。

 まぁそれはさておき、程なくして尾行者は姿を現した。

 すると、尾行していたのは意外な人物だったのである。

 丸眼鏡をしてニット帽みたいな帽子を被っているが、俺はすぐにそれが誰かわかった。

 尾行者は俺を見失ってキョロキョロしているところだ。


(あらら……あいつは……もしかして、この間の仕返しか。まぁいい、ちょっと脅かしてやろう)


 俺は建物の陰から出ると、尾行者の背後にそっと近づき肩に手を置いた。

 次の瞬間、尾行者は身体をビクッと震わせ、飛び上がる勢いで俺に振り返った。


「やぁ……奇遇だね、こんなところで会うなんて。誰かを探してるのか、リュス」

「ク、クロウ……え、なんで」


 リュスは目を見開き、かなり驚いていた。

 目論見は大成功のようだ。


「どうしたんだ、そんなに驚いて」

「え、ええっと、その……って、驚くに決まってるじゃない! なによ、もう!」


 リュスはプンスカと頬を膨らました。

 今日のリュスは白のワンピースっぽい衣服を着ており、なかなか可愛らしい女子的な格好をしていた。

 この間の男っぽい鎧姿とは正反対である。

 また、長い耳と灰色の長い髪は健在だ。

 まぁそれはさておき、リュスは俺を警戒して、少し後ろへと下がった。


「心配すんな、衛兵に突き出したりはしないよ。それで、どうしたの? キョロキョロしてたけど、誰か探してるのかい。それとも……俺に用があるとか?」

「そ、そうよ……貴方に用があるのよ」

「ふぅん……で、何? 仕返しに来たのか? そんな変装までして」

「ち、違うわよ。そ、その……貴方のこと、少し調べさせてもらったわ」


 リュスはやや取り乱しつつ、俺を指さした。


「ふぅん……で、何かわかった?」

「貴方は、ここ最近、ヴィルカーサに登録された剣士らしいわね。しかも、あのボードウィン認定官が完敗を認める程の剣士だって聞いたわ」

「へぇ……で、それがどうかした?」

「え? ええっと……ち、違うわ。そうじゃなくて……貴方に聞きたいことがあって来たのよ」

「聞きたいこと? なんだいったい?」


 するとリュスは、両手をモジモジしながら、たどたどしく話し始めた。


「貴方……この間言ったじゃない……その……私のこと……き、綺麗だって……それは……ほ、本当?」

「はぁ?」


 正直、質問の意図がよくわからなかった。


(俺、そんな事言ったっけ? ……あ! 言ったわ、去り際に……それの事か?)


 とりあえず、確認してみた。


「あの……それって、一昨日、去り際に言った話のこと?」


 リュスはモジモジしながら無言で頷く。

 どうやら、それで間違いないようだ。


「嘘は言ってないよ。で、それがどうかした?」

「ほ、本当なのね。私って……綺麗なの? そんな事……あまり言われたことなかったから……」

「他の人は知らないけど、俺的には、かなり綺麗な部類に入るよ。で、それがどうかした?」

「へ!? い、いや、なんでもない。ただ、それを確認したかっただけよ」


 どうやらリュスは、俗に言う、ツンデレタイプなのかもしれない。

 綺麗だけど可愛いさもあるから、こんな子が現実世界にいたらモテまくるだろう。

 エルフみたいな外見のくせに、人間ぽいのがより一層、それに拍車をかけてる気がする。


「なんか、リュスって面白いね。喜怒哀楽がハッキリしてて」

「面白いって何よ。私の事、バカにしてるの!」

「馬鹿にはしてないよ。まぁそれはともかく、あんまり悪さをするなよ。リュスに、そう言うのは似合わない気がするから」

「私も……やりたくて、やってるんじゃないわよ……」


 するとリュスは曇った表情で、少し俯いた。

 なんとなく、道に迷った子供のような感じであった。

 自分の境遇に悩んでいるのかもしれない。


「まぁ色々と事情があるようだけど、今度、愚痴くらいなら聞いてやるよ」

「今度って、何時(いつ)よ。それに……私もうお尋ね者だもん……そうそう、貴方には会えないんだから」


 リュスは俯きながら、溜息を吐いた。


「そういや、リュスとイグナムはもう指名手配されてんのか?」

「まだだと思うけど、時間の問題よ。バレたんだから」

「かもな」


 と、そこでリュスは顔を上げ、俺に視線を向けた。


「ねぇクロウ……今、時間ある?」

「あるよ。特に用事もなく、ブラブラしてるだけだから」

「じゃあ、ちょっと静かなところで話がしたい。良い?」

「良いよ。リュスは、どこかいい場所知ってる? 俺はこの街に来たばかりだから、そういう場所は知らないんだよね」

「湖の方に静かな所あるから、そこに行きましょ」


 リュスはそう言ってファーレン湖を指さした。


「場所は任せるよ」

「じゃあ、ついてきて。あ、そうだ。その前にこれだけは言っておくね」

「なに?」

「私の本当の名はリュシータよ。覚えておいてね、クロウ」

「リュシータね……了解」


 天空の城の王女様みたいな名前だなと思ったのは言うまでもない。

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