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ルート2の3:桜花繚乱(あとがきにアレを追加)

 鬼殺し。その単語を聞いたとき俺はもっと生臭いものを想像していたんだけどさ。

「まさか京太郎君。今の時代にそんな異端審問みたいなことしませんよ」

アッサリ否定された。パパが言うに、”鬼殺し”とは”体に巣くう鬼を殺す”という言葉から由来する”しつけ”の方言だそうだ。

「童子様の家系はヤンチャが多いですからね。美雪にもなかなか手を焼きました」

拍子抜けして安堵の溜息を吐いたとき、”コーン”という鐘の音が一度だけ鳴った。応接室の隅に置かれた豪華な柱時計が深夜1時を告げたのだ。パパは扇子でパタパタと扇ぎながら

「実際に童子様もその怪力を除けば普通の人間だった訳ですから。別に人を喰らったり(ツノ)(キバ)が生えていたり、豆を投げつけられたら逃げるとか、そういうことはもちろんありません」

と応接室で紅茶を楽しんでいるのはもう、俺とパパだけだ。女性陣は現在入浴中。パパは空になってる俺のティーカップに紅茶を注ぎながら

「ちなみに美雪は5歳までに”鬼殺し”が終わりました。まぁもともと性格は悪くなかったのですが、何かの拍子で感情が高ぶると涙目になりつつ人を見境なく蹴り飛ばすクセがあったので」

治ってないよパパそれ俺やられたもの。心の中で抗議してると

「一般の子ならワンパクで済むのですが、ミユキの力だと冗談じゃ済みませんからね。そしてそういう子達の”鬼殺し”を行うのが源神社の神主の役目の一つなんです」

それからパパは”ちょっとしたエピソードですけどね”と前置きして

「”例え童子様の血を引きその怪力を宿したといえども生まればかり。即ち”未だ鬼に有らず”の子にお尻ペンペンなんてどういう思考回路したらそういうクソみたいなことが出来るんですか? 今しばらくは自由奔放に育てるべきです”と弟が言ったせいで若干、美雪の”鬼殺し”が遅れました。さらには」

紅茶に口をつけてから

「彼が未有鬼にかけて美雪と名付けたんですよ」

俺は開いた口が塞がらなかった。

 「トマートジュース〜、トマートジュース〜、原材料は〜お父さん〜」

深読みしたくなる歌に目が覚める。八雲邸の朝は早いが、ミィちゃんの朝はもう少し早い。(マブタ)を開けると(ウルシ)色した艶のある大きな瞳が目の前にあった。

「モーニンモーニンです兄さん。もうみんな準備できてますよ?」

 ブルーのテーブルクロスに包まれた長い長いテーブル。30人は楽に座れるそこで静かに、そしてお上品に朝食を終えた俺達。

「お味はいかがでしたか?」

今朝の朝食を担当したシンシアちゃんがニコニコとしている。それに拍手で持って労らうのが八雲邸の習慣だ。ウチでやると大仰だけど、こういう感謝の気持ちは大事にしたいな。そんな風に思っているとそこへ

「失礼致します」

一人の若いメイドさんが入って来た。そして末席にいるマリサの方に静かに歩み寄って”お嬢様お耳を”と手を添えて耳打ち。二三言くらいの長さ、それを聞いてコクン頷いてから俺達の方を見て

「お客さんが来たみたいです」

”通して差し上げて”とマリサに言われたメイドさんは扉を開け

「お待たせ致しました。どうぞこちらへ」

そして招かれて来たのは細身の中年男性。真っ黒なスーツに赤のカッター、黒のネクタイという毒々しい色あわせ。丸いフチのサングラスを掛けていて髪は黒のオールバックのロングヘアー。怪しいことこの上ない。いったい誰の客だよアンタは。

「ようウンコ星人」

「ウンコ言うな」

お前の知り合いか”きゅうり”って……このグラサンあのシャブ中神主!? サングラスのブリッジを中指で押し上げながら

「やれやれ昨晩はヒドい目に遭いましたよ兄さん。美花ちゃんのアレなんですか?」

俺が思い当たるといえば昨晩に見せてもらったメールの”迎撃システム”くらいだ。パパは笑いを必死で堪えるように肩をヒクヒクさせながら”さてな?”と扇子パタパタ。その演技大失敗だよ。貞光さんは頭に青筋立てながら

「まさかガトリング砲が目くらましだったとは夢にも思いませんでしたよ」

すごいこと言ってるね。いったい何があったんだ。パパは”さ、さてな?”と沸点オーバーギリギリ。

「”チュドドドドドド”って発砲が始まったか!? と思って式神発動したら銃口からお子様ランチに立ってるような世界各国の国旗が出ただけで、拍子抜けと同時にあまりの歓迎ムードに”傑作だよ!”って腹筋崩壊してたら後ろから後頭部めがけて毎秒200発で日用雑貨が飛んでくるじゃないですか」

本当に何があったんだい。

「あまりにショックで”お値段以上ニトリ!”とか叫びつつ階段転げ落ちて行ったらそこからトラップコンボが派生して走馬灯がクリアーに」

とかわりと気の毒な恨み言を沸点突破して腹を抱えてるパパに一通り述べていく貞光さん。そして

「しかし朝から優雅なもんだね兄さん達。防御結界まで解いてるようだったらマジで死んでもらってましたから」

と区切り、ブレザーの懐から古びた銅鏡をテーブルにゴトンと立てた。何だろうか? と皆がその曇った鏡面を覗き込む。貞光さんはスっと右手の親指を口元に当て、”ガリ”と思わず首筋がムズっとするような音を立てた。指を伝っていく赤い(シズク)。それを銅鏡の曇った表面に十字の形で擦り付けて、ボソボソと呟いたかと思うとそこにはなんと桜花学園の校門が映し出された。

「これは千里眼と呼ばれる術です。門外不出なんですけど、まぁ皆さんなら構わないでしょう」

ニコニコと解説のパパ。

「すごいです! WOWOW見れますか!?」

いきなり変化球だねミィちゃん。貞光さんはニヤリと獣じみた笑みを浮かべて

「……頑張ったけど」

無理だったのね。ていうかそういうことトライしちゃダメだよ。

 銅鏡の映す視点は桜花学園の坂をあがり、食堂の前を抜け、グランドに出た。そこで皆が固まる。

「何だこれは……」

呟いたのはミユキ先輩。校舎の窓ガラスという窓ガラスが全て割られているのだ。いや。割られているといっても鈍器で叩き割られたような(イビツ)なものではない。それはまるで鋭利な刃物に斬り込まれたように直線的で、亀裂も入っていない。ある窓は袈裟に斬られたように対角線に、ある窓は縦に刃物を振り降ろされたように半分に割られている。いやむしろ切り取られた、と言った方が良いかもしれない。

「誰がこんなひどい悪戯(イタズラ)を……」

マリサが呟くと

「いや、これは悪戯(イタズラ)と呼べる程可愛いものじゃないぞ。良く見ろ八雲」

ミユキ先輩が屋上の辺りを指差すとカメラがスームアップするようにそこが拡大される。皆がそこに目を凝らす、が、良く分らない。

「この線だ。ズレているのが分かるか?」

食器に乗っているバターナイフを手に取り、銅鏡に水平に当てる。そして見えてきたもの。いや、間違い探しを見つけたときの感覚に近いそれは

「屋上の(カド)が一部……欠けてませんか?」

俺の指摘に頷いてからミユキ先輩、銅鏡が写しているその欠けた箇所にナイフを刺すように立て、スーっと何かの線をなぞる様に斜めに降ろしていく。そしてそれを追尾するように銅鏡が写す視点も動いていく。やがてその視点は一階の一つの窓に辿り着き、そしてナイフが辿る軌跡はそのまま窓ガラスの切れ目を真っ直ぐになぞった。それが意味することを理解して皆が絶句する。あり得ない。こんなことは絶対にあり得ない。が、ママが口にした。

「窓だけじゃなくて、校舎ごと斬られているのね。ズタズタに」

冗談じゃない。鉄骨とコンクリートで構成された高さ10mを超える建造物を、そんなものを”斬る”なんていう発想が間違っているだろう。いや思いついたところで何が出来るって言うんだ。つまらないジョークにすらならない。そこで銅鏡の表面が急速に曇って元の鏡に戻った。その時に写し出した皆の顔。驚き、怒り、後悔。その表情は各々(オノオノ)異なるものだった。

 桜花学園の最寄り駅。俺達がその改札を抜けると誰の連絡を受けたのか、校門前にはカメラ 、リポーター 音声というTV中継の定番3人組が何局か来ており、同じく既に到着している警察によって引かれたイエローテープの制限を受けつつもガヤガヤとまくしたてるように報道していた。あ〜面倒だな、ママはここの校長で俺たちは学園生。これうまく立ち回らないと芸能界デビューだよ? とか”ないない話”を考えている一方で、ママは平静を装うという言葉では控えめなくらい平静に、コツコツとハイヒールの音を立てながら学園に歩き始めた。そしてそれに続くのはこれ見よがしに月下美人を左手に握ってらっしゃるお姉様。今日も髪はツヤツヤお手入れ万全。お願いだから隠すなり何なりしようよ。ていうか俺達面白すぎるよね。美人1名、美少女3名、神主1名、不審サングラス1名、イケメン1名だ。いったい何のユニットですかと。はいはい抗議は受け付けないぞ。そんな俺達に気付いた報道陣の方々がダダダっと走ってくる。すごいね音声さんもカメラさんも、良くそんな重たそうなモノ担いで全力疾走出来るね、とか感心してたらママの前に集まってきて”少しお時間宜しいでしょうか私***放送局の”と一方的に自己紹介して”OK”とも何とも返事してないのにカメラ、マイクを競うように差し出して

「桜花学園の学園長ですよね? 今回の事件は武装高校による犯行だと警察は……」

とか

「現在の全面休校措置については保護者から批判の声が相次いで……」

とか

「教員交換プログラムで就任されてから学園長になるまであまりに短期間だったと……」

とかいきなり”どれに答えたら良いんだい?”という状況だ。そこでズイとママの前に出たのは貞光さん。その風貌と笑みが怪し過ぎるせいか、報道陣達はサっと掲げられた右手を思わず注視する。そしてその親指が”パチン”と鳴らした瞬間にカメラのレンズが耳障りな音を立てて次々と粉々になっていった。”キャッ!”という女性リポーターの悲鳴を遮るように

「あ〜あ〜! これはこれはスゴイ怪現象ですね〜ポルターガイストとかですか〜? 大スクープじゃないですか皆さん」

声をあげた。そして

「たかが〜……」

呆然としてる彼らにサングラスのツルを持って少しずらし、その空洞のような瞳でジロっと全員を流すように見て

「たかが(イチ)私立高校で起きた悪戯(イタズラ)なんかを報道してる場合じゃな〜いと思いませんか?」

そして再びサングラスを戻した。すると彼らはゆっくりと背を向けて、そのまままるで夢遊病患者のようにフラフラーっと行ってしまった。

「貞っち何をしたんですか?」

フレンドリーに疑問を呈したのはミィちゃん。

「な〜にここは物騒だからお帰り願ったんだ。ちょっとしたトリックでね。それから〜、それから。もう少しカッコイイ呼び名で呼んで欲しいなお嬢さん?」

ニヤっと犬歯を覗かせて笑みを浮かべる貞光さん。

「それじゃぁウンコ星人で」

「いいね貞っち! すっごく良いよ貞っちもう最高! 兄さん後で覚えてろ」

 警察官たちにも貞光さんは怪しげな術を使い、停めてあったパトカーにフラフラと全員を乗せて

「それでは道中お気をつけて、安全運転でお帰り下さいませ」

と発車させた。皮肉のつもりかキチンとおじぎしてパトカーを見送ってる貞光さんの隣で、パパは溜息を吐きながら

「その軽薄ささえなければ、私はもう少し早く源神社を明け渡してやれたんだけどね」

と言われればニィと口端を吊り上げて”良くもまぁそんなことを”と頭をあげ

「僕に押し付けたんでしょうが? 兄さんが」

サングラスを外して胸ポケットに閉まった。 

 誰もいない朝のグランド。一度見たはずの傷跡だけど、現実に見るとかなりインパクトは大きかった。俺達の先頭をパパが、後尾を貞光さんが守る様にしてベージュ色の校舎へと進む。未明に見てきた貞光さんによれば崩落の危険はないらしい。つまり……こんな表現使ったことはないが、”校舎の斬り傷”は浅いらしい。

 「信じられないくらい滑らかだな」

窓の切り口を指で撫でているのはミユキ先輩。ツツっとなぞった人差し指の感触、それをもう一度確かめるように親指で()(ホグ)

「斬り痕が鏡面のようになっている。いや、それどころか粉ガラスすらない。一体何をどう使えばこんな芸当が出来るんだ?」

と腕組み。隣で俺は校舎の中を覗いている。確かに廊下や奥の壁には目立った傷はなく、貞光さん言うとおり深くはなさそうだ。しかし

「屋上から一階まで斬りおろす。そんなことがあり得るんですかね?」

呟くように尋ねれば

「私なら出来ないことはないぞ」

聞いた相手がまずかったか。

「キョウ! こっち来て!」

少し離れた下足箱に近いところ、そこで手を振っているのはマリサだ。駆け寄って見れば”どう思う?”と地面の一か所を指差している。そこにあるのは美月ちゃんが手入れしている赤レンガの花壇だ。リーガベゴニアが黄色い花をつけている。

「綺麗だと思うよ」

素直な感想。それに”そうじゃなくて”と土の方を指差したマリサ。じっくりと見れば周りの土に比べて少し黒くなっている。花好きな人なら分かるが、これは水やりの後だ。

「昨日から雨は降ってないわよ?」

マリサが流し目。”すると誰かが水やりを”と言いかけて口をつぐむ。ありえない。今回の休校は職員も含めた全面休校だ。マリサがそっと土に指を沈め、引き抜く。そして指にまとわりついた黒い土を見ながら

「かなり湿度があるわ。ここ数日間はそれほど暑くなかったけど、乾燥してたしね……」

指を払って土を落としながら呟く。

「そして、あまり時間は経ってなさそうですねメイビー」

後ろにはミィちゃん、パパにママ、貞光さんもいた。

「これはもしかすると、相当まずいかもしれませんね」

髪の毛よりも細い眼を少し開き、パパは顎に手を当てる。

「刃物ではあり得ない滑らかな切り口、水気を帯びた土、コンクリートを斬るだけの力」

隣の貞光さんの方を向いて

「貞光。お前は美樹に何を授けた? 頼光四天王が許されているのは十二天将のうち四神までのはず。よもやそれを破ったのではあるまいな?」

 昨晩に貞光さんから来たメールに記されていた”美鬼”という名前、”(シマシ)め”という言葉。俺もマリサもミィちゃんも、そこだけは触れなかった。貞光さんは”頼光兄さん”と溜息を吐いて

「頼光四天王の一人”碓井貞光”の名を継ぐ僕が先代様に教えられ、そして次代へ伝えられるのは四神の一柱(ヒトハシラ)のみ。朱雀だけです」

「分っているとも」

即答に驚いたのか貞光さん、さっとパパの方へ振り向いた。パパの目はいつもと違って開いてはいるものの穏やかだ。

「私はお前を一度だりとも疑ったことはないし、これからも疑うつもりはないよ。伝統に基づいて形式的な審問を行っただけだ。立会人はここにいる美雪で十分。面倒な手続きはこれで終わりだよ」

そして薄く微笑んだ。こうして見たらパパって結構イケメン。まぁそうか、美月ちゃんとミユキ先輩のパパだもんね。その時だ。微かに鳴り始めた空気を震わすような耳障りな音。耳を澄まさずとも聞こえてきたのは膨大な数のエンジン音。徐々に大きくなってきたそれに皆が振り返る。少しづつ大きく、そして近づいてくる砂煙とノイジーな音に”ハー”と溜息を吐いたのはマリサ。俺もその気持ち良く分かる。けどさ……。この数はどうなんだ? 坂道を勢いよく駆け上がってグランドに展開されていくモヒカンのバイク集団。まさに続々ゾロゾロ。野球、ソフトボール、サッカーが同時に出来る広大な桜花学園のグランドが見る見るうちに埋まっていく。既にパパと貞光さんは俺達を庇うようにして前に立っている。

「だからこんな子達を連れていくのは反対したんですよ僕は!」

貞光さんがバイクの爆音にかき消されないように声を張り上げる。パパはニコニコとして

「まぁまぁ、こうなっては仕方ないでしょう?」

今ここの航空写真を撮ったらグランドは真っ黒だろうな。手にバット、鉄パイプ、木刀などなど得物を持ったモヒカン軍団がズラズラズラっと

「100……はいるんじゃないのか?」

ある意味壮観な眺めに思わず呟いた。バイクを停止させた今も挑発するように”ヴォンヴォン”という耳障りな音を立ててエンジンをフカしている。どう見ても友好的な使者ではなさそうです。”ふ〜む”とパパは鼻の下を掻いて

「もし話し合いに応じてくれなければ」

懐から扇子を取り出してパタタタっと広げて

「兄弟で仲良くお説教といこうかな? オンマに乗ったお尻の赤い坊や達に」

ニコニコしてるパパに貞光さんは

「どういう思考回路したらそういうクソみたいなセリフが言えるんですか? 僕たち二人だけならともかく、この子たちを庇いながらこんな大勢を相手にするなんて」

いやいや貞光さん、その思考回路こそが大きな間違いです。あなたの好きなうんこです。いったい誰を庇うと仰ってるのでしょうかね? ホラ、前を見るといいよ。地獄の閻魔のごとき裁判官が、現被告人であり後の死刑囚となるモヒカン軍団たちの前におしとやかな足取りで歩み寄ってるじゃないか。サラサラサラと腕で髪を流しながらさ。武神が処刑道具を左手に携えて、哀れな罪人たちの前に立つ。

「お前たち……」

栗色の瞳でサラっと全員を流し見てから腕組みすれば”魔女狩り”にも等しい裁判が始まる。

「入校許可証は持っているのだろうな?」

生死の岐路。返答を誤れば猶予も悔悟(カイゴ)の時間すらも与えられずに執行される不可避にして絶対の刑罰。自分の首に死神の鎌が添えられているとも知らず、見えない死刑台に立たされた罪人たちが裁判官に返した言葉。それは

「んなもんあるわけねぇだろうが!」

「スカしてんじゃねぇぞコラ!」

一縷(イチル)の望みが断たれた瞬間だ。月下美人の(ツバ)が”キン”と起こされたら死刑執行(エグゼキューション)の始まり。刹那に響いた風切り音、打ち鳴らした鞭の如き破裂音は武神の手から放たれたものではない。視線の先には乗り手のいないバイク、そして葉桜となっている校庭の隅に立つ桜の木へ突っ込んでいるモヒカンが一名。

「先手必勝です。ゲットザファーストアタック」

その声にもう一度、主を失った空のバイクへ皆の視線が集まる。ハンドルの上に立っているのはブラウンの髪をかき上げているミィちゃん。唖然としているモヒカン軍団の沈黙を破る様に人差し指を立て、可憐な破壊神はニパっとした笑みを浮かべ

「今度は加減もしませんし、もちろん一人も逃しません。アーユレディートゥーセイグッバイ?」

死刑宣告。一度身を屈めたかと思えば一瞬にして隣のバイクに飛び移り、破裂音とともに音速の鞭と化した変則の蹴りが放たれる。金属で出来たそれを一撃でスクラップに変えるほどの悪魔ならぬ魔神の(ムチ)軽業師(カルワザシ)のようにバイクからバイクへ飛び移り、予測不能の角度と目視不能の速度で放たれていく魔神の一撃は鋭い破裂音と交通事故の様な轟音をほぼ同時に響かせて次々に鉄クズを生成していった。宙に舞い飛ぶバイクの部品やモヒカンやらを眺めつつも、俺の隣で何かの術を発動しようとしていたのか白い札を持ったまま大理石の彫刻と化している貞っち。君は誰を庇おうとしてたんだろうね?

「て、テメェらやっちまえ!」

バイク15台をスクラップに変えられてからようやく我に帰ったモヒカン軍団。その声を機に猛スピードで俺達の方に凶器を振り回しながらバイク集団が突っ込んできた。いや、俺なら絶対逃げるよ? ていうか逃げた方がいいよ? だってさ? 分かっていてもビクっと肩が(スク)んでしまう火薬が爆ぜるような文字通りの爆音。老朽化したビルを爆破解体した時に響く、TVでしか聞いたことのないような怪音。そしてその音に相応(フサワ)しく、まるで爆撃を受けたかのような原型を留めていないかつてバイクだった鉄塊(テッカイ)が、砲弾のような勢いでバイクモヒカン軍団をドミノやボーリングピンのように薙ぎ倒し、なおも勢い余って木に激突して大破した。今のでスクラップに変わったバイクは10台。そしてその爆心地には拳から白煙をあげているマリサ。姿勢からして放たれたのは必殺の中段突きだ。”フ”っと短い息を吐いてから拳を納め、長いテールの片方を腕で後ろに流し

「”空手に先手なし”ってよくパパから聞いてたけど、それって護身術としての心構えだけじゃなくてさ」

まるで対戦車砲の砲弾を再装填(サイソウテン)するかのような重く、ゆっくりとした動作で再び腰を落とし、利き手を引き絞る。次弾装填完了。

迎撃(カウンター)が楽しいからじゃないかしらね?」

一撃必殺の破壊神は100万ドルの笑顔だ。隣の貞っちとかもう大理石どころか純金製のオブジェになっている。やっぱり君は誰を庇おうとしてたんだろうね? 一連の”破壊活動”を見守っていた武神が冷淡な笑みを浮かべ、その栗色の瞳を残ったモヒカン軍団に向ける。そして遅れていた最初の”死の宣告”。その主文が今になって読み上げられる。

「当学園への不法侵入及び凶器準備集合と乗用車の無断乗入れ並びに学園生への暴行を現行犯で確認。桜花学園学園規則第9条に基づき生徒会役員生活指導担当の権限に基づいて……」

疾走していたバイク軍団が対戦車砲による死の迎撃(カウンター)を恐れ、こともあろうに向かった先は武神のもと。それら哀れな犠牲者に向かって最後の言葉を言い放つ。

「制裁を加える」

神速の一閃により宙を舞ったモヒカンは20名。そして輪切りにされた同じく20台のバイクが中空で次々と爆炎をあげた。即ちこれは神速の”一閃”ではなく。

「抜刀から納刀までに不可視の八十八の斬撃です。年に一夜限りという瞬きにも等しい刹那に咲き乱れる大輪の花、月下美人。それが美雪の抜刀術です」

ニコニコ解説してるのはパパ。そして”出番なさそうですね”と次々とバイクの解体作業を続けていく2人の破壊神と1人の武神を見ながらドカっと胡坐(アグラ)をかいた。ちなみにママとかは最初っから校庭の隅にあるプランターの前でしゃがみ込んで

「もう美月ったら庭のヒヤシンスこんなとこに植えてたのね、フフフフお茶目さん」

ってあんたちょっと話の流れに乗った方がいいよ、と突っ込みつつも、俺は破壊神と武神の共演をパパと共に見物しているばかりだった。

 ミィちゃん。身長約160cmのうち比率にして55%の長さを誇る90cm弱の美脚。体を中心とした半径90cmの球形内に獲物が収まるとそこには(ナマリ)よりも重い魔神の(ムチ)が振り下ろされる。触れずとも音速の壁を破る際に発する破裂音はさながら魔神の咆哮(ホウコウ)。疾走しているバイクのエンジンを(ヒシャ)げてもなお余った力をバネに飛び上り、次のバイクに飛び移れば予想を裏切る角度から打ち下ろされる変則の蹴り。破裂音と衝突音の二重奏を奏でながら次々と魔神の爪痕が刻まれていく。

 マリサ。投球時のトップスピードはマッハ3に達する怪腕。力ではなく技術でもって二段を取ったその実力から放たれる正拳は右の後ろ足を起点とする。初動、右足の踏ん張りは整地ローラーにより圧し固められたグランドに放射状の亀裂を生み、その反作用のエネルギーは左の軸足を通して損なうことなく腰へと伝えられる。(アラカジ)(ヒネ)られて張りが作られた腰から脇腹、バットを持ってスウィングすれば硬球を粉砕する程の力を生む張力がそれに加算され、その膨大なエネルギーは引き絞られた右腕に最小のロスで伝えられる。最後、それを暴発させることなく力のベクトルを制御し、爆音を持って放たれるのはダイヤの硬度を超える(コブシ)。その威力、もはや鬼神の一撃。横合いから大型タンカーに突っ込まれたように無残な姿で吹き飛んでいくスクラップと化したバイク達。

 ミユキ先輩。抜刀から納刀までの時間はコンマ3秒。その間に細腕が描く動作は途切れることなく流麗にして神速。最小にして合理。目には見えないされど舞のように華麗な軌跡を描く白刃は、岩山をバターのように切断するその切れ味をもって他の全ての刃物を”鈍器”と言い切る神器、童子切(ドウジキリ)安綱(ヤスツナ)(ツバ)を起こす音の次に常人が聞くのは納刀時の音のみ。その斬撃は中空に咲き乱れた大輪の花のように鮮やかで、しかし容赦のなさを物語る切れ端のみで認識される。武神のもとに飛び込んできたバイク達は抜刀、納刀の2度の金属音の後に中空に束の間の花を咲かせてガソリンの炎をもって消え去る。その美しさはまさに月下美人。

「解説ありがとうキョウタロウ君。魔神、鬼神、武神と来ましたね」

「どうもありがとうパパ。止めてくれなかったら勢いで何の関係もない美月ちゃんのクッキーを語ってたよ”その威力まさに大量破壊兵器”とか」

しかしながら最後に一言言わせてもらおう。バイクに乗り、凶器を携えたモヒカン軍団100人。この3人には余りに”少な過ぎ”た。

なんの格闘小説でしょうね(第一声)

見捨てないで下さい。ちゃんとラブコメしていきます。

あと評価とか評価頂けると嬉しいです。元気玉です。

フリーザ様を倒せるくらいの元気玉になったら

まさかの第3部が投稿されます(爆)

ちなみに3部はキョウタロウ君2年生のお話です。

あ、それからここに後ほど、プチコントが追加されます。

それでは引き続き、本拙作をお楽しみくださいませ^^


-メガネっこ師弟の異次元ショートコントその2-


義妹「ハロー。ゲスト出演の電波シンガーです〜」

大山「ぐふふ俺の名前は大山フトシ」


三頭身のミ○ちゃんと原寸大の大山君登場。パチパチパチー


義妹「いやーもうノッケから間違ってますよねいろいろ。原寸大とか本名暴露とか出オチも良いとこですよねー」


大山「ぐふふ」


義妹「今日はゲスト出演ということで、ちょっとショートコントやってみました。ではどうぞ」


カメラに向かってビシっと指差す義妹。


--ところかわってここはスポーツジム--


三頭身のユ○たんが現れる。月下美人がライトセイバーに変わってる。


抜刀娘「なになに。”1日で好きなだけ痩せられるダイエットメニュー”とな」


腕組みして”いいだろう。試してやろう”三頭身でも髪はやっぱりツヤツヤお手入れ万全。サラサラサラリン。扉オープン&イン。受付にはア○先輩。


鼻血「いらっしゃいませー。1kg、2kg、5kg減量コースがありますが?」


抜刀娘「1kgを頼むぞ三下(サンシタ)


親友のまさかの発言に盛大に口から幽体を噴出してる鼻血をスルーして”1kgルーム”に入る抜刀娘。中にはセーラーのミ○ちゃんがニッコリ。キュンキュンきてる抜刀娘。アナウンスが流れる。


空気「1時間以内にそこの義妹を捕まえて下さい。捕まえたら好きにしていいです」


神速を持って追いかけるも結局捕まらなかった義妹。クタクタの抜刀娘。


抜刀娘「確かに1kgは痩せたかもしれないな」


部屋を出て受付でスネてアヤとりしてる鼻血をビビビっとビンタで立ち直らせて


抜刀娘「次は2kgだ。用意しろ三下」


二度にわたる親友の三下発言でショックのあまりネピアを食べ始めた鼻血をスルーして”2kgルーム”に入る抜刀娘。中には巫女衣装の義妹がニッコリ。キュンキュン来まくってる抜刀娘。アナウンスが流れる。


空気「2時間以内にそこの義妹を捕まえて下さい。捕まえたら好きにしていいです」


超神速を持って追いかけるも結局捕まらなかった義妹。クタクタの抜刀娘。


抜刀娘「た、確かに2kgは痩せたかもしれないな」


ゼーゼーと部屋を出て、受付でスネて一人ビンゴゲームしてる鼻血を八つ当たりも兼ねてビビビっとビンタで立ち直らせて


抜刀娘「次は5kgだ。用意しろ家畜」


ついに親友から動物扱いされてショックのあまり食べたネピアを元に戻すという奇跡を起こしている鼻血をスルーして”5kgルーム”に入る抜刀娘。中には原寸大の大山君が”ぐふふ”。アナウンスが流れる。


空気「5時間そこの丸っこいのから逃げてください。捕まったら彼の好きにされ」


ズビっと両断された大山君。ピッピとセイバーを払ってる抜刀娘。そこに義妹が入ってきて


義妹「お姉様どうされたんです? まだ自己紹介しか済んでないゲストに致命傷与えるとかそれも人気投票1位の特権ですかメイビー?」


木工用ボンドで大山君の接合を試みる義妹→諦めてガムテープ。それにキュンキュンハァハァ来てる抜刀娘


抜刀娘「(トコ)に行こうかミヤミヤ」


意味不明な第一声に飲みもしないポーションを噴出す義妹。


義妹「い、いきなり何を言うんですか!?」


抜刀娘「ストレートに言うとジャンル的にそこそこ問題だから隠語で言うぞミヤミヤ。ユリユリ、乙女同士の終着駅、禁断の花園、二人の秘密ハァハァ可愛いなミ○コ。姉さんがタップリ可愛がってやるぞさぁベッドに行こうか」


義妹「ちょ、ちょっと待って下さいお姉様! 何が間違ってるのか指摘できないくらい間違ってます!」


抜刀娘「なんだ布団がいいのか? それともお風呂かはたまた野外か保健室かフフフ。あ、靴下だけは履いたままで頼むぞ」


抜刀娘「いやそんなフェチ的なことカミングアウトされても困りますっていうか何を血迷ってらっしゃるのですかお姉様」


抜刀娘「気にするな例え本編で執筆できなくてもここならいろいろと許されると思うからいやもういいここでヤってしまおう! いやまてやはりここはギャップ萌を考慮して敢えて私がウケをやる方が良いかもしれないなどうだミ○コ私を食べて見ないか?」


義妹「何考えてるんですかお姉様いくらあとがきだからって本編で予告してるんですよ!?」


抜刀娘「公開プレイと来たかなかなか上級者だぞミヤミヤ良いだろう受けて立とう!」

義妹「!! ってちょっとま」


--しばらくお待ちください--


鼻血「一部映像が乱れているようです失礼致しました」

空気「失礼致しました」


ニュースキャスターっぽく謝罪するメガネっこ姉弟。


鼻血「しかしすごいわね〜アクセス数がとうとう18万PVよ」


空気「最初は更新日でも10アクセスとかだったんですけどね〜、で、姉さんここで衝撃の事実が」


鼻血「なにまさかアヤルート電撃執筆!?」


空気「脳ミソ発酵してるのはいつも通りとしてそれはイエス様が改宗するよりありえないです」


飛来した”宗教の壁”に押しつぶされる鼻血。特に理由もなくその上に立つ空気。


空気「実は以前に紅零様に描いて頂きましたミユキイラストには桜花学園のエンブレムがスーパーさりげなく入っています。どこでしょうか? 答えは次回で」


”宗教の壁”の下から手を出してペタっとリンクを貼る鼻血。

http://crossxhearts.web.fc2.com/


-END-

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